2020年も残すところあと数日。
12月中旬の大雪→年末年始はさらに?大雪と、雪の当たり年の匂いがする今シーズン。
でも雪でテンション上げる前にちゃんと反省して年越しせねば、ってことで今回のブログ更新。
関東でよく予報を外すパターンに連続ではまった11月下旬から12月上旬、あとはまた別の定番で気温が外れた12月下旬をサラッと振り返っときます。
まずは一言。
11月下旬から12月上旬の関東(特に関東南部)は本当に天気が悪かった!
悪いといっても風が強い!雨が強い!といった派手さはなく、(晴れるって言ってたのに)ドン曇りだったり、(そんなに降らないって言ってたのに)しっかり雨、しかも止まない…だったり。
ひとつひとつの事例を見ると関東で予報を外す定番が多かったんだけど、何もここまで連続で発生しなくても…
そして何より毎回のように読み切れず痛い目に合わなくても…
そんな感じで心と頭が痛い時期でした。
たとえば11月24日。
天気図見ると本州は高気圧の勢力内。広く穏やかな陽気になると見せかけて、関東にへばりつく不穏な雲域。
関東予報ハズレ定番物のひとつ、鉛直シアーによる“ハレハレ詐欺”。
この犯人は、関東沖にできた北東×北西風の下層シアーを起点に北側に薄く広がる層状雲。
もうちょっと大きく見るとこんな姿。
その形から“くらげ型の雲”だったり、予想外にいつの間にか広がってくることから“忍者雲”なんて呼ばれることも。
どっちも場所や発生機構を全く表してないんで気象屋としてはもうちょいなんか呼び方ないのか?なんて思うけど、どうも今のところいい呼び名がなさそう。
説明としてちょいちょい目にするのが『北東×北西風の下層シアーで対流雲が発生。上部が上空の南西風に流されて層状に広がる』ってやつ。
図にするとこんな感じ。
ただ、今回のように下層シアーによる雲列(静岡沖の南北にのびる雲、“ならいの土手”とも呼ばれる)と層状雲の間に隙間があることも珍しくないし、下層シアーの雲列自体が不明瞭なことも。
実際には上記の説明に追加して
『さらに、北東風の上に乗り上げて滑昇する南西風が雲を形成することも。』
ってのも必要。
こちらも図にするとこんな感じ。
この11月24日事例で勝浦のウィンドプロファイラや館野(つくば)のエマグラムを見ると、下層と中層の風の違いやどの層が湿ってるのかがよく分かります。
青が地表付近の北東風、緑が下層の東風、赤が中層の南西風。
冬型っぽい気圧配置になると関東沖に下層シアーができるのはいつもの話。
そこに冬型が中途半端に緩んで南分を持った湿った中層風が入ると要注意。
…とは知りつつ、数値モデルはちょっと表現苦手で雲域が狭い&薄いことが多い、薄っぺらい雲域なので数値資料の中でも姿を見落としがち、なんてこともあって「たいして曇らないよ」「曇ってるけど次第に晴れるよ」予報が出たのに「さっぱり晴れんやんけ!」となる“ハレハレ詐欺”を引き起こす怖いやつです。
自分でも4年前にも同じような記事を書いてるし・・・
冬の天気のハズレ方(冬型気圧配置編)
さらに。
この下層シアーを起点に小さな低気圧ができて下層の北東~東風を強化&湿りの流れ込みが顕著になると、「降ってもパラパラくらいかな?」な雨予報が思いっきり雨に。
さらに「朝には止むはず」「昼には止むはず」「えっと…止まない雨はないはず(泣)」といった“ヤムヤム詐欺”に繋がることも。
12月5日がまさにこのパターンで、朝には止む弱い雨のはずが、日中いっぱいしっかり降り続ける辛い1日になりました…。
衛星画像からは関東沖の小さな低気圧。ウィンドプロファイラとエマグラムからは、しっかり厚みを持った地表付近の北東風と中層の南西風、その隙間に吹き込む湿った東風の姿を見ることができます。
こんな痛い目がそれぞれ何度か繰り返され、グズグズな天気が続いた11月下旬~12月上旬。
12月中旬になってしっかりとした冬型に変わり、やっとこの悪循環が終わりだ!と思ったのも束の間。
今度は12月24日に冷えて滞留する内陸の冷気層と温かい南風の力比べを読み間違え、南風が吹いて気温が上がるはずが冷たく弱い北風が吹き続けるという“フクフク詐欺”が発生。
こちらもちょっとしたバランスの差で北風/南風のシアーの位置が変わり、それに応じて気温もガラッと変わる難しい予報のパターン。
南風の勢いに騙されて吹くはず、気温上がるはず、の方向に予報を外すことが多いんですが見事にそうなってしまいました…
寒い思いをした人、ゴメンナサイ。
現象としては地味だけど、印象としては非常に悪い“ハレハレ詐欺”、“ヤムヤム詐欺”、“フクフク詐欺”。
できるだけこれらの詐欺を未然に防げる2021年にすることを誓いつつ、年末年始の大雪の動向を見守ろうと思います。
文句なしに禍(わざわい)に溢れてしまった2020年。
早く新型コロナ騒ぎが落ち着くとともに、大きな気象災害が起きない1年になりますように。
以下、引用・加工元資料の取得先です。
衛星画像(ひまわりリアルタイムWeb)@NICT
天気図@気象庁
雨雲(高解像度降水ナウキャスト)@気象庁
ウィンドプロファイラ(時間-高度断面図)@気象庁
エマグラム@Wyoming大学
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