ゆるキャン△@南極

1年で最も寒い時期に向かいつつある昭和基地。
でも、建物の中は発電機の排熱を活かした暖房のおかげでだいたい20℃くらい。

あ~快適だなぁ。

でも…それで本当にいいのか?

これで南極を満喫したと胸を張って言えるのか?

否!

はるばる南極までキャンプのためにやってきた(に違いない)野クルのみんなを見習うべきである!ゆるキャン△×よりもい、エイプリルフールコラボより

というわけで。

ゆるキャン△@南極が開催決定!
勤務と天気のサイクルからずっとタイミングを計ってたけどついに決行の時がっ!!

実施は7月27日の夜。
会場は現在内装・引越し作業中の基本観測棟、屋上デッキ。
写真左の気象棟から右の基本観測棟への引越しがじわじわと進み、60次隊の越冬が終わる頃には屋上デッキは機械でいっぱいに。
まだスカスカな今しかできない、期間限定の特設キャンプ場。

21時過ぎ、満天の星空の元で先発隊が熱く決意表明!
気温は約マイナス20℃。
ゆるくない寒さを楽しむキャンプ、略してゆるキャンの開始w

まずは星空のターン。
澄みきった空気の中で輝く天の川に

大&小マゼラン雲も肉眼でハッキリ
(サボって広角のまま)

星空を楽しんでるうちにオーロラがじわじわと出て

本気を出したタイミングで記念撮影!
我ながら結構うまく撮れたんじゃないだろか♪

眺めたり、撮ったり、寝転がったり。

みんな思い思いに過ごす南極の夜。

夜が深くなると共に人は減り、残るはぼくを含むモノ好き数人。
とびっきりの夜をテントの中で過ごしました。

そして朝。
東の空に逆さまなオリオン座が昇り、細い月と太陽もそろそろ出ようかな…といった頃にキャンプはおしまい。

多少体が冷えて何度か目が覚めたけど、そのたびに空も眺めれたしまぁ問題なし。
一晩中風が弱かったのがほんとに助かった。

すぐ隣の建物には暖かいトイレ、お湯やカップラーメンの補充も簡単。
鍋を作ることもなくお手軽ゆるゆるキャンプ。
ゆるキャンの名に恥じぬお手軽っぷり。
ただし、ビールはさっさと飲み切らないと凍り始める寒さw

キャンプ後は休日日課だけどなんだかんだと仕事があって、寝不足の体にちょっと堪えたけどフル充電した気力でなんとかカバー。

やっぱ外で過ごすっていいな。

日本に帰ったらまた家族とどっか泊りに行こう。
その時は焚火したいな。

そんな想いにまったり浸る素敵な一夜でした。

南極観測隊の基本の「き」~夏隊と越冬隊~

冬至(ミッドウィンター)を過ぎ、極夜も開けて越冬生活もそろそろ後半戦に突入する60次南極地域観測隊の越冬隊。
そういえば観測隊の全体スケジュール、そして夏隊&越冬隊について書いてなかったんで今回はその話を。

日本の南極観測隊は大きく分けて2つの部隊、夏隊と越冬隊がいます。
読んで字のごとく、夏に仕事するのが夏隊。
冬を超えるのが越冬隊。

…ってだけじゃ仕方ないんでもう少し詳しく。

気温や日照時間の細かい話は昭和基地ってこんなとこ(気候編その1)で書いたけど、昭和基地の1年をざっくり図にするとこんな感じ。
比較的暖かく天気も穏やか、そして1日中明るい“夏”が1月を中心とする約2ヶ月間。
夏を挟んで短い春&秋があって、あとは長~い冬。

この短い夏を利用して“しらせ”は昭和基地に大量の物資と人員を運び、短期集中で仕事して、冬が来る前に昭和基地を離れる。
これが夏隊。
“よりもい”のキマリたち女子高生組はこの夏隊って設定でした。

一方、越冬隊は夏隊が昭和基地を離れてる間も残留。
長い冬も観測&基地機能を維持してから翌年のしらせで帰るため、昭和基地には1年ちょっといることになります。
“よりもい”の吟隊長やかなえさんといった観測隊メンバーはこの越冬組が多い描画だったなと。
60次隊だとざっくり夏70人、越冬30人って構成比になってます。

さて、この夏隊&越冬隊の流れをぼく達60次で追っていくとこんな感じ。

夏隊&越冬隊は一緒に日本を出発、12月末に昭和基地入り

冗談抜きに24時間働けますか的なノリで作業を行う夏作業。
大規模工事したり
昭和基地から遠く離れたエリアで調査したり
前次隊の59次隊から引継ぎをもらいつつ各所で作業。

夏にどんなことしてるのか興味のある人は夏隊の公式活動記録である60次隊NOW!@極地研第60次南極地域観測協力@海上自衛隊をどうぞ。
自分が何をしたのかも記録したかったけどもう半年くらい経ってしまった…。

とにかくバタバタしてるうちに短い昭和基地の夏は一瞬で過ぎ去り、2月1日には越冬交代式で基地の管理人が59次越冬隊から60次隊越冬隊に引き継ぎ。

そして60次夏隊と59次越冬隊は昭和基地を離れてく。
特に猛烈に濃い時間を共に過ごした60次夏隊の仲間との別れは涙涙でした…

今、昭和基地にいるのは60次越冬隊の31人のみ。
極夜が明けて次第に明るくなる中で様々な屋外作業が本格的に動き出そうとしてる時期です。

一方、国内では7月1日に61次隊の隊員たちが集う“隊員室”が極地研にオープン。
昭和基地の60次隊と、国内で準備する61次隊との間で様々な情報交換が行われてます。
国立極地研究所@Facebookより

まだちょっと先だけど、年末年始には61次隊が昭和基地に到着。
61次隊の夏作業、そして60次越冬から61次越冬への諸々の引継ぎが終わってから、ぼく達60次越冬隊は61次夏隊と一緒に帰国することになります。
日本に着くのはまだしばらく先の2020年3月後半の予定。

そして61次隊から62次隊へ。
こんな夏~越冬の繰り返しで日本の南極観測隊は成立してます。

この辺の観測隊の全体像を詳しく知りたかったら極地研が出してる公式解説本?なこちらがオススメ。
よりもい好きもファンブックからさらに南極観測隊そのものに興味をもったらぜひどうぞ。

経験者曰く、極夜が明けた後は時間経つのがめっちゃ早い、とのこと。
確かに越冬の間にやることがまだまだ山積みで頭が痛い…。

でも、しばらく昭和基地に引きこもってた時間が終わってこれからは基地を離れて活動することも増えてくる楽しみな時期。
引き続き頑張る&楽しんできます!

太陽、完全復活

極夜が明けたとはいえ、どんより空で実感のなかったここ数日。

しかし。

昨日16日の朝はこんな空。これは期待できる!

次第に北の空が明るくなり、11時にはいよいよ!といった雰囲気。

反対側の南の空には山影からこっそり太陽を見守るお月さま。
少し隠れるけど、今はちょうど“沈まない月”の時期。

そして11時半、ついに来た!

太陽が顔を出すと一気に世界に光があふれる。
明るいんじゃなくて、眩しい。久しぶりの感覚。

太陽が昇ったとはいえ、正中(北中)時でも太陽高度は1度未満。
このくらいで今のMAX。
昇ったというか顔を出したくらいの高さだけど存在感は抜群。

そして13時頃には早くも店じまいの準備。

14時半にゾンデ観測をする時には色濃く漂う夜の気配。

夜も快晴、月明かりがとっても明るくてヘッドライトいらず。
快晴の月夜もいいけど、前日の薄い雲がかかった月夜もなかなかいい雰囲気でした。

これからどんどん昼が長く、夜が長くなる。
振り返ってみると、極夜も意外とすんなり終わったなぁってのが素直な感想。
特に6月が極夜というかブリ強化月間だったせいかな。

夏が近づくにつれて今度は夜がどんどん短くなる。
その前にビックリするようなオーロラが見たいなぁ。

そんな平和な極夜明け。

極夜明け!でも寒さはこれから本番

5月末に太陽とお別れした後、ひたすらどんより暗い時間を過ごした6月。
7月になってからちょっとずつ日中が明るくなってきたことを感じる日々。
そして12日の昼過ぎ、どんより曇り空と水平線(氷平線?)との隙間から久しぶりに見るまばゆい光!

ついに昭和基地では極夜が明けました。
初日の出にも通じる、世界が新しくなったような清々しさ。
そして越冬隊も後半戦に入ったことを実感する瞬間。
ありがたやありがたや。

極夜が明けたしこれからどんどん明るくなって暖かくなるぞ~!
…と言いたいとこだけど、実は寒さはこれからが本番。

気温のグラフでいくと今がこの辺。
7月中旬で極夜が終わって日照時間が出てくるけど、気温が一番低いのはもうちょっと先の8月~9月頭だったりします。

太陽が出てきて熱をくれてるのに、なんで寒くなるか。
これを理解するには「もらう熱」だけでなくて「失う熱」を意識することが重要。

何もない宇宙空間に浮かぶ地球は、寒い部屋に置かれたお湯の入ったヤカンみたいな存在。
ほっとけばどんどん冷めてくし、ごくごく弱い火をかけてもまだ冷めるほうが強い。
ある程度強い火力にして冷めるペースを打ち消すだけの熱を与えてやっとお湯は温まるって話です。

もっと簡単に表現すると、ちょっとくらいおこずかい貰ってもお金使ってるうちは財布の中身は減る、ってとこ。
日本だって一番暑いのは夏至よりあと、寒いのは冬至よりあと、ってのも同じ話です。

この季節と気温の関係をもう少しちゃんと理解するには、地球の熱の収支の仕組みを知る必要あり。
気象学と名の付く本にはまず出てくる、地球全体の熱の収支を示したのがこちらの図。地球のエネルギー収支@wikipediaに加筆
大元はKeihl and Trenberth (1997),Earth’s Annual Global Mean Energy Budgetより

太陽の光は全部地面に届くわけじゃなく、雲で反射されたり、直接大気に吸収されたり。
届いてもそのまま反射されて宇宙に返ってったり。

そして地面からも目には見えない赤外線として熱を空に出し続けてる。
この赤外線は一度雲や大気に吸収されて、また地面に戻ったり、反対の宇宙に出てったり。

あとは対流や水蒸気(潜熱)で熱が運ばれたり。

そんなあちこちのやり取りがあって地球全体としてみれば収支が取れてるって図になります。

昭和基地では「空から降ってくるエネルギー(上図中、赤枠)」と「空に出て行くエネルギー(同青枠)」の観測ってのもやってて、2017年のデータがこちら。
赤線が空から降ってくる下向きのエネルギー量。
青線が空に出ていく上向きのエネルギー量。
そして緑線がその差、結局どれだけエネルギーが増える/減るを示してます。南極気象資料 日射放射観測データ@気象庁より

赤線の下向きエネルギーを見ると、確かに極夜が終わって7月から8月にかけて少し増えてる。
でも、青線の上向きエネルギー方が多い状況は変わらず、収支はまだまだマイナス。
真夏の12~1月以外はずっとエネルギー収支がマイナス、つまり冷め続けてるってことになります。

なるほど、だから極夜が明けてもまだ気温が下がるのか~。
と分かってもらえたら今回伝えたかったことはほぼOK。

でも。

…あれ?
それじゃなんで9月から気温が上がるの?まだ収支がマイナスじゃん。と気になった人は鋭い!

あくまでも上のグラフは昭和基地の直上の空とのエネルギーのやり取りを示した図。
水平方向のエネルギー(熱)の移動は含まれてない。

実際にはこれに大陸から冷たい空気が流れてきたり、海から暖かい空気が流れてきたりと水平方向のエネルギーの移動が混じって気温の変化が起きてます。
冷えすぎな南極にせっせと熱を運ぶのが大気を大規模にかき混ぜる低気圧なわけ。

低気圧といえば、悪天続きの6月に比べて静かすぎる7月。

仕事的にはとってもやりやすくて助かるけど、そろそろ久しぶりにブリザードを味わいたい…なんて思ってないよ。
ホントだよ!

南極の空は甘くない(どんより6月)

極夜を折り返し、越冬生活も中盤といったところ。
気分的に前半の締めだった6月の天気がそりゃもう印象深かったんでまとめとこうかと。

とりあえずコレをどうぞ。6月の日ごとの天気のまとめ。過去の気象データ@気象庁より

毎日を朝晩に分けて天気概況ってのを記録してるんだけど「晴」がホントに少ない。
1日8回観測するの雲量(空を覆う雲の割合)の平均も載ってて、まぁ見事に10点満点のハイスコアが並んでます。
6月のうち、ある程度晴れたのが数日。スカッと晴れたのは最後の1日だけ。

「晴れ=大陸の冷たく乾いた空気」「悪天=海からの暖かく湿った空気」が基本原則な昭和基地。
見事な悪天っぷりが実を結んで6月の平均気温は高い方から歴代4位の記録でした。
昭和基地の観測値ランキングはここ→昭和基地の観測史上1~10位の値@気象庁

そんな天気が続くもんだから極夜の暗さと相まってまぁ毎日暗いこと。

南極→極夜→星空&オーロラ見放題!

…と夢見てると精神的ダメージが計り知れないってことを身をもって知ることに。
これから南極に来る人はご注意を。

ついでに少し気象屋っぽいことも。

これだけ露骨に長期間天気が悪いと地球規模の大きな大気の流れにも特徴が見えてくる。

こちら、南半球の500hPa高度の月平均&平年偏差の図と…
続いて地上気圧の月平均&平年偏差の図。
共に大気の循環@気象庁の資料に加筆
☆印が昭和基地の位置。
日本で見てる北半球の図と何が違うか頭が混乱してくるけど、見るべきポイント自体は一緒。

500hPaで見ると昭和基地の西側に明瞭なトラフ&負偏差域。
そしてこのトラフの前面、昭和基地付近に地上気圧で明瞭な低圧部&負偏差域。
昭和基地の上流側にトラフが居座る期間が長く、そのせいで昭和基地付近に低気圧が長居だったり次々と来たって状況が1ヶ月の平均としても露骨に出てます。

実際に日々の予報やってても、上流側にどっかり寒冷渦が居座って悪天サイクルにハマったなぁ…ダメだこりゃ。な気分に浸ってる時間が長かった1ヶ月。
ブリザードも月頭のA級から始まり、月に8個の大サービス。
ほんと吹雪・雪・くもりで埋め尽くされてた1ヶ月だったなと。

でも、最後の最後でとびっきりの夜空を見せてくれたんで良しとします。
やっぱ南極の空は本気を出すと凄い!
7月はどんな1ヶ月になるかな~。