極夜明け!でも寒さはこれから本番

お天気講座

5月末に太陽とお別れした後、ひたすらどんより暗い時間を過ごした6月。
7月になってからちょっとずつ日中が明るくなってきたことを感じる日々。
そして12日の昼過ぎ、どんより曇り空と水平線(氷平線?)との隙間から久しぶりに見るまばゆい光!

ついに昭和基地では極夜が明けました。
初日の出にも通じる、世界が新しくなったような清々しさ。
そして越冬隊も後半戦に入ったことを実感する瞬間。
ありがたやありがたや。

極夜が明けたしこれからどんどん明るくなって暖かくなるぞ~!
…と言いたいとこだけど、実は寒さはこれからが本番。

気温のグラフでいくと今がこの辺。
7月中旬で極夜が終わって日照時間が出てくるけど、気温が一番低いのはもうちょっと先の8月~9月頭だったりします。

太陽が出てきて熱をくれてるのに、なんで寒くなるか。
これを理解するには「もらう熱」だけでなくて「失う熱」を意識することが重要。

何もない宇宙空間に浮かぶ地球は、寒い部屋に置かれたお湯の入ったヤカンみたいな存在。
ほっとけばどんどん冷めてくし、ごくごく弱い火をかけてもまだ冷めるほうが強い。
ある程度強い火力にして冷めるペースを打ち消すだけの熱を与えてやっとお湯は温まるって話です。

もっと簡単に表現すると、ちょっとくらいおこずかい貰ってもお金使ってるうちは財布の中身は減る、ってとこ。
日本だって一番暑いのは夏至よりあと、寒いのは冬至よりあと、ってのも同じ話です。

この季節と気温の関係をもう少しちゃんと理解するには、地球の熱の収支の仕組みを知る必要あり。
気象学と名の付く本にはまず出てくる、地球全体の熱の収支を示したのがこちらの図。地球のエネルギー収支@wikipediaに加筆
大元はKeihl and Trenberth (1997),Earth’s Annual Global Mean Energy Budgetより

太陽の光は全部地面に届くわけじゃなく、雲で反射されたり、直接大気に吸収されたり。
届いてもそのまま反射されて宇宙に返ってったり。

そして地面からも目には見えない赤外線として熱を空に出し続けてる。
この赤外線は一度雲や大気に吸収されて、また地面に戻ったり、反対の宇宙に出てったり。

あとは対流や水蒸気(潜熱)で熱が運ばれたり。

そんなあちこちのやり取りがあって地球全体としてみれば収支が取れてるって図になります。

昭和基地では「空から降ってくるエネルギー(上図中、赤枠)」と「空に出て行くエネルギー(同青枠)」の観測ってのもやってて、2017年のデータがこちら。
赤線が空から降ってくる下向きのエネルギー量。
青線が空に出ていく上向きのエネルギー量。
そして緑線がその差、結局どれだけエネルギーが増える/減るを示してます。南極気象資料 日射放射観測データ@気象庁より

赤線の下向きエネルギーを見ると、確かに極夜が終わって7月から8月にかけて少し増えてる。
でも、青線の上向きエネルギー方が多い状況は変わらず、収支はまだまだマイナス。
真夏の12~1月以外はずっとエネルギー収支がマイナス、つまり冷め続けてるってことになります。

なるほど、だから極夜が明けてもまだ気温が下がるのか~。
と分かってもらえたら今回伝えたかったことはほぼOK。

でも。

…あれ?
それじゃなんで9月から気温が上がるの?まだ収支がマイナスじゃん。と気になった人は鋭い!

あくまでも上のグラフは昭和基地の直上の空とのエネルギーのやり取りを示した図。
水平方向のエネルギー(熱)の移動は含まれてない。

実際にはこれに大陸から冷たい空気が流れてきたり、海から暖かい空気が流れてきたりと水平方向のエネルギーの移動が混じって気温の変化が起きてます。
冷えすぎな南極にせっせと熱を運ぶのが大気を大規模にかき混ぜる低気圧なわけ。

低気圧といえば、悪天続きの6月に比べて静かすぎる7月。

仕事的にはとってもやりやすくて助かるけど、そろそろ久しぶりにブリザードを味わいたい…なんて思ってないよ。
ホントだよ!

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