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南極の不思議な風、ハイドロリックジャンプ

今朝、薄明の空を眺めると何やら遠くに雪煙。

太陽が出てくるころには雪煙がさらに大きくなって・・・

すっかり明るくなったころには雪煙はより高く。そして広く。
昭和基地から眺めれる南極大陸の縁に沿うように雪煙の壁が延びてきた。

この雪煙は“ハイドロリックジャンプ”って現象。

天気のいい穏やかな日には、南極大陸は内陸部でキンキンに冷えて重くなった空気が斜面を流れ下る“カタバ風”って風が常に吹いてる。

カタバ風は斜面を勢いよく流れ下るけど、斜面が終わる大陸沿岸部で失速。
この風の流れの速度が変わる場所で流れが乱れて大きく跳ね上がることがあって、これが“ハイドロリックジャンプ”。
日本語だと“跳水(ちょうすい)”って現象です。

小さなのは何回か見てたけど、ここまでハッキリしたのを見れたのは初めて。

昭和基地から見ると南極大陸は東側にあって、東風がどんどん吹き寄せてくるのに見事に吹き上がって全く届いてこない。
大陸海岸の4~5km先までは強い東風が吹いてるのに昭和基地はずっと南風でした。

しばらく眺めてたかったけど、今日の気温は-25℃で5m/sの風もセット。
とても外でぼんやり立ってる気分にはならない寒さ。

眺める代わりにタイムラプスを撮ったんでどうぞ(5s間隔×10fps、50倍速)。
大陸から流れ下るカタバ風と、巻き上がるハイドロリックジャンプの様子がよく分かります。

見たいと思ってた自然現象、またひとつゲット!

ゆるキャン△@南極

1年で最も寒い時期に向かいつつある昭和基地。
でも、建物の中は発電機の排熱を活かした暖房のおかげでだいたい20℃くらい。

あ~快適だなぁ。

でも…それで本当にいいのか?

これで南極を満喫したと胸を張って言えるのか?

否!

はるばる南極までキャンプのためにやってきた(に違いない)野クルのみんなを見習うべきである!ゆるキャン△×よりもい、エイプリルフールコラボより

というわけで。

ゆるキャン△@南極が開催決定!
勤務と天気のサイクルからずっとタイミングを計ってたけどついに決行の時がっ!!

実施は7月27日の夜。
会場は現在内装・引越し作業中の基本観測棟、屋上デッキ。
写真左の気象棟から右の基本観測棟への引越しがじわじわと進み、60次隊の越冬が終わる頃には屋上デッキは機械でいっぱいに。
まだスカスカな今しかできない、期間限定の特設キャンプ場。

21時過ぎ、満天の星空の元で先発隊が熱く決意表明!
気温は約マイナス20℃。
ゆるくない寒さを楽しむキャンプ、略してゆるキャンの開始w

まずは星空のターン。
澄みきった空気の中で輝く天の川に

大&小マゼラン雲も肉眼でハッキリ
(サボって広角のまま)

星空を楽しんでるうちにオーロラがじわじわと出て

本気を出したタイミングで記念撮影!
我ながら結構うまく撮れたんじゃないだろか♪

眺めたり、撮ったり、寝転がったり。

みんな思い思いに過ごす南極の夜。

夜が深くなると共に人は減り、残るはぼくを含むモノ好き数人。
とびっきりの夜をテントの中で過ごしました。

そして朝。
東の空に逆さまなオリオン座が昇り、細い月と太陽もそろそろ出ようかな…といった頃にキャンプはおしまい。

多少体が冷えて何度か目が覚めたけど、そのたびに空も眺めれたしまぁ問題なし。
一晩中風が弱かったのがほんとに助かった。

すぐ隣の建物には暖かいトイレ、お湯やカップラーメンの補充も簡単。
鍋を作ることもなくお手軽ゆるゆるキャンプ。
ゆるキャンの名に恥じぬお手軽っぷり。
ただし、ビールはさっさと飲み切らないと凍り始める寒さw

キャンプ後は休日日課だけどなんだかんだと仕事があって、寝不足の体にちょっと堪えたけどフル充電した気力でなんとかカバー。

やっぱ外で過ごすっていいな。

日本に帰ったらまた家族とどっか泊りに行こう。
その時は焚火したいな。

そんな想いにまったり浸る素敵な一夜でした。

南極観測隊の基本の「き」~夏隊と越冬隊~

冬至(ミッドウィンター)を過ぎ、極夜も開けて越冬生活もそろそろ後半戦に突入する60次南極地域観測隊の越冬隊。
そういえば観測隊の全体スケジュール、そして夏隊&越冬隊について書いてなかったんで今回はその話を。

日本の南極観測隊は大きく分けて2つの部隊、夏隊と越冬隊がいます。
読んで字のごとく、夏に仕事するのが夏隊。
冬を超えるのが越冬隊。

…ってだけじゃ仕方ないんでもう少し詳しく。

気温や日照時間の細かい話は昭和基地ってこんなとこ(気候編その1)で書いたけど、昭和基地の1年をざっくり図にするとこんな感じ。
比較的暖かく天気も穏やか、そして1日中明るい“夏”が1月を中心とする約2ヶ月間。
夏を挟んで短い春&秋があって、あとは長~い冬。

この短い夏を利用して“しらせ”は昭和基地に大量の物資と人員を運び、短期集中で仕事して、冬が来る前に昭和基地を離れる。
これが夏隊。
“よりもい”のキマリたち女子高生組はこの夏隊って設定でした。

一方、越冬隊は夏隊が昭和基地を離れてる間も残留。
長い冬も観測&基地機能を維持してから翌年のしらせで帰るため、昭和基地には1年ちょっといることになります。
“よりもい”の吟隊長やかなえさんといった観測隊メンバーはこの越冬組が多い描画だったなと。
60次隊だとざっくり夏70人、越冬30人って構成比になってます。

さて、この夏隊&越冬隊の流れをぼく達60次で追っていくとこんな感じ。

夏隊&越冬隊は一緒に日本を出発、12月末に昭和基地入り

冗談抜きに24時間働けますか的なノリで作業を行う夏作業。
大規模工事したり
昭和基地から遠く離れたエリアで調査したり
前次隊の59次隊から引継ぎをもらいつつ各所で作業。

夏にどんなことしてるのか興味のある人は夏隊の公式活動記録である60次隊NOW!@極地研第60次南極地域観測協力@海上自衛隊をどうぞ。
自分が何をしたのかも記録したかったけどもう半年くらい経ってしまった…。

とにかくバタバタしてるうちに短い昭和基地の夏は一瞬で過ぎ去り、2月1日には越冬交代式で基地の管理人が59次越冬隊から60次隊越冬隊に引き継ぎ。

そして60次夏隊と59次越冬隊は昭和基地を離れてく。
特に猛烈に濃い時間を共に過ごした60次夏隊の仲間との別れは涙涙でした…

今、昭和基地にいるのは60次越冬隊の31人のみ。
極夜が明けて次第に明るくなる中で様々な屋外作業が本格的に動き出そうとしてる時期です。

一方、国内では7月1日に61次隊の隊員たちが集う“隊員室”が極地研にオープン。
昭和基地の60次隊と、国内で準備する61次隊との間で様々な情報交換が行われてます。
国立極地研究所@Facebookより

まだちょっと先だけど、年末年始には61次隊が昭和基地に到着。
61次隊の夏作業、そして60次越冬から61次越冬への諸々の引継ぎが終わってから、ぼく達60次越冬隊は61次夏隊と一緒に帰国することになります。
日本に着くのはまだしばらく先の2020年3月後半の予定。

そして61次隊から62次隊へ。
こんな夏~越冬の繰り返しで日本の南極観測隊は成立してます。

この辺の観測隊の全体像を詳しく知りたかったら極地研が出してる公式解説本?なこちらがオススメ。
よりもい好きもファンブックからさらに南極観測隊そのものに興味をもったらぜひどうぞ。

経験者曰く、極夜が明けた後は時間経つのがめっちゃ早い、とのこと。
確かに越冬の間にやることがまだまだ山積みで頭が痛い…。

でも、しばらく昭和基地に引きこもってた時間が終わってこれからは基地を離れて活動することも増えてくる楽しみな時期。
引き続き頑張る&楽しんできます!

太陽、完全復活

極夜が明けたとはいえ、どんより空で実感のなかったここ数日。

しかし。

昨日16日の朝はこんな空。これは期待できる!

次第に北の空が明るくなり、11時にはいよいよ!といった雰囲気。

反対側の南の空には山影からこっそり太陽を見守るお月さま。
少し隠れるけど、今はちょうど“沈まない月”の時期。

そして11時半、ついに来た!

太陽が顔を出すと一気に世界に光があふれる。
明るいんじゃなくて、眩しい。久しぶりの感覚。

太陽が昇ったとはいえ、正中(北中)時でも太陽高度は1度未満。
このくらいで今のMAX。
昇ったというか顔を出したくらいの高さだけど存在感は抜群。

そして13時頃には早くも店じまいの準備。

14時半にゾンデ観測をする時には色濃く漂う夜の気配。

夜も快晴、月明かりがとっても明るくてヘッドライトいらず。
快晴の月夜もいいけど、前日の薄い雲がかかった月夜もなかなかいい雰囲気でした。

これからどんどん昼が長く、夜が長くなる。
振り返ってみると、極夜も意外とすんなり終わったなぁってのが素直な感想。
特に6月が極夜というかブリ強化月間だったせいかな。

夏が近づくにつれて今度は夜がどんどん短くなる。
その前にビックリするようなオーロラが見たいなぁ。

そんな平和な極夜明け。

極夜明け!でも寒さはこれから本番

5月末に太陽とお別れした後、ひたすらどんより暗い時間を過ごした6月。
7月になってからちょっとずつ日中が明るくなってきたことを感じる日々。
そして12日の昼過ぎ、どんより曇り空と水平線(氷平線?)との隙間から久しぶりに見るまばゆい光!

ついに昭和基地では極夜が明けました。
初日の出にも通じる、世界が新しくなったような清々しさ。
そして越冬隊も後半戦に入ったことを実感する瞬間。
ありがたやありがたや。

極夜が明けたしこれからどんどん明るくなって暖かくなるぞ~!
…と言いたいとこだけど、実は寒さはこれからが本番。

気温のグラフでいくと今がこの辺。
7月中旬で極夜が終わって日照時間が出てくるけど、気温が一番低いのはもうちょっと先の8月~9月頭だったりします。

太陽が出てきて熱をくれてるのに、なんで寒くなるか。
これを理解するには「もらう熱」だけでなくて「失う熱」を意識することが重要。

何もない宇宙空間に浮かぶ地球は、寒い部屋に置かれたお湯の入ったヤカンみたいな存在。
ほっとけばどんどん冷めてくし、ごくごく弱い火をかけてもまだ冷めるほうが強い。
ある程度強い火力にして冷めるペースを打ち消すだけの熱を与えてやっとお湯は温まるって話です。

もっと簡単に表現すると、ちょっとくらいおこずかい貰ってもお金使ってるうちは財布の中身は減る、ってとこ。
日本だって一番暑いのは夏至よりあと、寒いのは冬至よりあと、ってのも同じ話です。

この季節と気温の関係をもう少しちゃんと理解するには、地球の熱の収支の仕組みを知る必要あり。
気象学と名の付く本にはまず出てくる、地球全体の熱の収支を示したのがこちらの図。地球のエネルギー収支@wikipediaに加筆
大元はKeihl and Trenberth (1997),Earth’s Annual Global Mean Energy Budgetより

太陽の光は全部地面に届くわけじゃなく、雲で反射されたり、直接大気に吸収されたり。
届いてもそのまま反射されて宇宙に返ってったり。

そして地面からも目には見えない赤外線として熱を空に出し続けてる。
この赤外線は一度雲や大気に吸収されて、また地面に戻ったり、反対の宇宙に出てったり。

あとは対流や水蒸気(潜熱)で熱が運ばれたり。

そんなあちこちのやり取りがあって地球全体としてみれば収支が取れてるって図になります。

昭和基地では「空から降ってくるエネルギー(上図中、赤枠)」と「空に出て行くエネルギー(同青枠)」の観測ってのもやってて、2017年のデータがこちら。
赤線が空から降ってくる下向きのエネルギー量。
青線が空に出ていく上向きのエネルギー量。
そして緑線がその差、結局どれだけエネルギーが増える/減るを示してます。南極気象資料 日射放射観測データ@気象庁より

赤線の下向きエネルギーを見ると、確かに極夜が終わって7月から8月にかけて少し増えてる。
でも、青線の上向きエネルギー方が多い状況は変わらず、収支はまだまだマイナス。
真夏の12~1月以外はずっとエネルギー収支がマイナス、つまり冷め続けてるってことになります。

なるほど、だから極夜が明けてもまだ気温が下がるのか~。
と分かってもらえたら今回伝えたかったことはほぼOK。

でも。

…あれ?
それじゃなんで9月から気温が上がるの?まだ収支がマイナスじゃん。と気になった人は鋭い!

あくまでも上のグラフは昭和基地の直上の空とのエネルギーのやり取りを示した図。
水平方向のエネルギー(熱)の移動は含まれてない。

実際にはこれに大陸から冷たい空気が流れてきたり、海から暖かい空気が流れてきたりと水平方向のエネルギーの移動が混じって気温の変化が起きてます。
冷えすぎな南極にせっせと熱を運ぶのが大気を大規模にかき混ぜる低気圧なわけ。

低気圧といえば、悪天続きの6月に比べて静かすぎる7月。

仕事的にはとってもやりやすくて助かるけど、そろそろ久しぶりにブリザードを味わいたい…なんて思ってないよ。
ホントだよ!

南極の空は甘くない(どんより6月)

極夜を折り返し、越冬生活も中盤といったところ。
気分的に前半の締めだった6月の天気がそりゃもう印象深かったんでまとめとこうかと。

とりあえずコレをどうぞ。6月の日ごとの天気のまとめ。過去の気象データ@気象庁より

毎日を朝晩に分けて天気概況ってのを記録してるんだけど「晴」がホントに少ない。
1日8回観測するの雲量(空を覆う雲の割合)の平均も載ってて、まぁ見事に10点満点のハイスコアが並んでます。
6月のうち、ある程度晴れたのが数日。スカッと晴れたのは最後の1日だけ。

「晴れ=大陸の冷たく乾いた空気」「悪天=海からの暖かく湿った空気」が基本原則な昭和基地。
見事な悪天っぷりが実を結んで6月の平均気温は高い方から歴代4位の記録でした。
昭和基地の観測値ランキングはここ→昭和基地の観測史上1~10位の値@気象庁

そんな天気が続くもんだから極夜の暗さと相まってまぁ毎日暗いこと。

南極→極夜→星空&オーロラ見放題!

…と夢見てると精神的ダメージが計り知れないってことを身をもって知ることに。
これから南極に来る人はご注意を。

ついでに少し気象屋っぽいことも。

これだけ露骨に長期間天気が悪いと地球規模の大きな大気の流れにも特徴が見えてくる。

こちら、南半球の500hPa高度の月平均&平年偏差の図と…
続いて地上気圧の月平均&平年偏差の図。
共に大気の循環@気象庁の資料に加筆
☆印が昭和基地の位置。
日本で見てる北半球の図と何が違うか頭が混乱してくるけど、見るべきポイント自体は一緒。

500hPaで見ると昭和基地の西側に明瞭なトラフ&負偏差域。
そしてこのトラフの前面、昭和基地付近に地上気圧で明瞭な低圧部&負偏差域。
昭和基地の上流側にトラフが居座る期間が長く、そのせいで昭和基地付近に低気圧が長居だったり次々と来たって状況が1ヶ月の平均としても露骨に出てます。

実際に日々の予報やってても、上流側にどっかり寒冷渦が居座って悪天サイクルにハマったなぁ…ダメだこりゃ。な気分に浸ってる時間が長かった1ヶ月。
ブリザードも月頭のA級から始まり、月に8個の大サービス。
ほんと吹雪・雪・くもりで埋め尽くされてた1ヶ月だったなと。

でも、最後の最後でとびっきりの夜空を見せてくれたんで良しとします。
やっぱ南極の空は本気を出すと凄い!
7月はどんな1ヶ月になるかな~。

昭和基地ってこんなとこ(気候編その1)

ついに5月末から始まった極地の夜、極夜。
太陽が約1ヶ月半の長期休暇に入り、次に会えるのは7月中旬になってから。

“極夜”とは言っても一日中真っ暗なわけじゃなく、今だと真昼でこのくらいの明るさ。

真昼には太陽が地平線ギリギリの惜しいとこまで来てるんで、ほぼ夜明け直前。
もっとも天気が悪い日が多すぎて実際にはもっと暗い日が多いんだけど。

せっかく極夜が始まったんで(?)今回は昭和基地の気候についてザっとまとめてみました。
ホントは出発前か到着直後に書こうとしてたネタが今さらの登場です…。

南極と言えば寒い!ってことでまずは気温。
こちら、昭和基地の最高&最低気温と日照時間のグラフ。
南半球にある南極は北半球の日本と季節が逆。
日本がいま夏に向かってどんどん暑くなってるのと反対で、昭和基地は冬に向けてどんどん寒くなってる最中。

夏の昭和基地はあったかい日で日中の気温がちょっとプラスになるくらい。
だいたい札幌の冬と同じような感覚です。

そして冬に向かってグイグイと気温が下がり、真冬の8月には“平均的な最低気温”で-25℃近く。
寒い日は-30~40℃くらいになります。

そんな厳冬期のちょっと前、冬至(日本じゃ夏至)まわりで太陽が全くでないのがちょうど今、極夜の時期。
地球が南半球を太陽と反対側に向けてるせいで南端にはどうやっても太陽が当たらない状態です。
暦wiki@国立天文台より引用

実際に“ひまわり”から6月後半の地球全体を眺めてみると、ごく細い領域だけど北極付近は1日中明るく、南極付近は1日中暗いままなのが見えたりします。
ひまわりリアルタイムWEBから2018年6月23日の地球の様子。

それじゃ昭和基地で1年を通していつどんな明るさかってのを図にしたのがこちら。
横軸が月、縦軸が時。何月の何時でこんな明るさ、と見てください。
いま、極夜の時期は昼前後の数時間が薄明るいだけで1日のほとんどが夜。
屋外に出るにはヘッドライトが手放せない生活です。

逆に夏の白夜では太陽が出っぱなし。
昭和基地に到着した12月末は夜9時でもこんな空でした。
あぁ、青空が懐かしい…。

でも、極夜は夜が長くても星空とオーロラに感動する日々!
…なんて夢見てたけど、週に一度も晴れる日がないくらいの悪天&曇天っぷり。
前回のブログネタ5/26の次に星空を満喫できる日はいつになるのやら。

そんなモヤモヤを吹き飛ばすべく、ただいませっせと極夜の祭典“ミッドウィンターフェスティバル”の準備中。
南極のいろんな基地でやってる、極夜を楽しもうぜヒャッハー!な気分になるためのお祭り騒ぎ。
仕事にたっぷりイベントを重ねるもんだから自分の首を絞めてるような気がしてならないけど、せっかくなんで色々楽しんどきます!

最後に。
今回作ったグラフの元データは気象庁の過去の気象データ検索で見たり、過去の地点気象データ・ダウンロードでごそっと取ってくることが可能。
ちゃんと南極も選べるんで気が向いたら覗いてやってください。※全天日射量の図は複数年の時別データからmax値を取るってな加工をしてます

星降る夜に

昨日、26日はひっさしぶりに文句なしの快晴!
大陸からのキンキンに冷えた&乾いた空気に覆われた朝の最低気温は60次隊として初の大台に乗る-30.9℃。
肌に寒さというよりは痛さを感じる空気の中、なんとか地平線から顔を出す太陽の日差しを浴びながら過ごす穏やかな1日。

この日は夜まで好天が続く予想。
これは行かねばとドキドキしながら夜の屋外へ。

目が慣れるまでもなく、星が多いのがすぐ分かる。

だんだん目が慣れてくると…やっぱり凄かった。

2019/5/26 22:00頃、東の空

ちょうど月明かりもオーロラも邪魔をせず、夜空は星々が埋め尽くす。
言葉ではうまく表現できないけど圧倒的な広さと深さを感じる素晴らしい世界。
天の川がホントに天の川や・・・

指先の冷たさにはちょっとだけ苦しみつつ、のんびり夜空を満喫する。

せっかくなんで、ぐるっと写真。

南の空

西の空

最後に北の空

そんなことをしてるうちに、ちょっとだけオーロラも登場して華を添えてくれた。

ただし、肉眼じゃ「なんかぼんやり明るいかなぁ」程度のオーロラ。
星に寄せてオーロラを撮ると盛りすぎな写真になるんで、なんかズルいことしてるような気分になりますw

久しぶりに感動する夜空に出会えて、なんか心が軽くなった気がする。
脳内BGMはやっぱスカパラかな。

まもなく長い長い南極の夜、極夜。
南極の神様、次は迫力満点のオーロラお願いします!

ブリザードが去ったあと

絶賛ブリザード月間突入中の昭和基地。
せめてブリとブリの間にはちょっとくらい好天を挟んでくれい!と文句を言いたくなる天気が続いてます。

こちら、先週(5/12-19)の気温・風速・気圧のグラフ。
ご丁寧にブリが3つもいらっしゃった。
ブリザード(猛吹雪)が「低気圧の接近(気圧の低下)」「海洋性の空気を持ち込んで気温上昇」のセットだってことが良くわかるかと。

ブリみたいな視界の悪い吹雪の間は“外出注意令”が発令され、外出はできるだけしないのが基本方針。
ただ、気象屋は天気が悪い時こそ働き時ってのは国内でも南極でも一緒。
食事や人員交代、ゾンデ放球などの必要最低限の移動をしつつ、いつもより人を増やして働いてます。

そんなわけでブリ中もちょいちょい移動するけど、ブリの間にどんどん景色が変わってくのを見るのもなかなか面白い。

13日、ブリ1が終わった夜遅く。
さっそく除雪に動いてくれた機械隊員の手により綺麗に除雪された気象棟の脇。
これで歩きやすくなった、ありがとー!

でもホッとする間もなく、14日夜から次のブリ2がスタート。
15日の昼にはもうこんもりとドリフト(吹き溜まり)が…

ブリ2とブリ3の間も15m/s前後の強風と吹雪でとても外で作業をする気にならない状況。
そうしてるうちに息の長いブリ3が襲来。
終わるころにはこんな立派な迫力あるドリフトに育ってました…

せっかく張り直した移動時の命綱、ライフロープもあちこちドリフトに埋没。
順番に15日、17日、18日の様子です。

こんなブリの後には再び重機を操る機械隊員が大活躍。
何といっても除雪で強いのはコイツ、PistenBully
ドイツの科学力は世界一ィイイイイ!!と叫ばずにはいられないカッコよさ。
通称ピステン、スキー場でお馴染みの頼れるヤツです。

他にも色々重機が動き回り、除雪中はさながら白い土木工事。

重機が入れない場所や細かいところ、そして各種観測機器のメンテはもちろん人の手で。

清浄大気観測小屋、通称ゾル小屋の風下にも立派なドリフト。
人と比べるとその大きさが分かるかと。

逆に、建物の風上には風が避けることで深い溝・ウィンドスクープが形成。
うっかり落ちると結構痛い目にあうレベルの段差ができるから歩くときには要注意です。

他には面白いものとして、こんな雪面も。

ポコポコと飛び出した雪の列。
実はこれ、人の足跡。

降り積もった雪の上を人が歩くと、ギュッと踏み固められて雪が硬くなる。
その後に強風が吹くと表面の雪が吹き飛ばされけど、硬くなった踏み後の雪だけはそのまま残ってこんなことになるって仕組みです。

悪天が続くとちょっと気分もどんよりしてくるけど、せっせと周りを見渡して面白りものを探す日々。

そして20日にはひっさびさの太陽を浴びてリフレッシュ。

ハッキリ分かるくらい日ごとに昼が短くなり、太陽のありがたさが心底身に沁みる。
あと1週間くらいでついに太陽が地平線から出てこなくなる極夜の始まり。

当たり前のことが、当たり前じゃなくなる。

そんな南極の真骨頂ともいえる極夜を過ごすとどんな気分になるのか。
なんとなくソワソワした期待と不安の中で越冬隊に冬が来ます。

雪にできる虹:雪面ハロ(仮名)

とある朝。
景色を眺めてて気が付いた。
あれ?海氷上の雪面が虹色に光ってないか?
しかも22°ハロ(暈)に繋がってるように見える・・・。

どう見ても気のせいじゃない。
空のハロが消えても、雪面の虹色はくっきりはっきり。

昼間になって、青空の下でも雪面の虹色は鮮やかなまま。
写真じゃちょっと分かりにくいけど。ちなみにこの写真は13時。
最近はほんっとに太陽高度が低いです。

よく周りを観察しながら歩いてみると、近くの雪面でも発見。
これまた綺麗に分光して虹色に見えてる。

どうやらこれ、積雪表面の雪結晶によってできたハロってことみたい。

普段空に見えるハロは、大気中に漂う細かな氷晶の六角柱構造によるプリズム効果で見える大気光学現象。
氷晶よりずっと粒が大きい降雪結晶も、六角柱構造を持っていれば光学的な特性は同じだとか。
参考文献:谷川朋範,2007:積雪の方向性反射率特性,69,p185-200を流し読み

ってことは、うまいこと積雪表面に六角柱構造の降雪結晶が積もってれば、空のハロと同じことが積雪表面にも起きる。…ってことでいいのかなぁ。

あいにく初めて見る&今まで知らなかった現象なんで、これを何て呼んでいいのかも分からない。
ハロはあくまで“大気”光学現象なんで、ハロではない。
とりあえず、ハロと同じメカニズムで雪面にできてるってことで“雪面ハロ(仮)”と呼ぶことにします(^^;

名前も分からないから適当なキーワードでググってたら同じよう46°の雪面ハロ(仮)を撮った人を発見。
雪面の 46°ハロ@WHITE ICE

でも、やっぱりちゃんとした現象名が分からないw

今回不思議に思ったんで軽く積雪表面も観察してたけど、仕事の時間が迫ってたこともあってごく簡単にしかできず。
分かったのは、晴れた穏やかな朝で軽く表面霜ができてたこと。
表面の積雪は角柱・砲弾っぽい結晶が混じったしまり雪だった、ってことくらい。
降雪結晶そのものなのか、表面霜ができたことで起きたのかが分からない・・・
あー、もやもやするっ!!方眼は1mm。

これからちゃんと注意して、また見つけたらしっかり観察してみようと思います。
積雪表面の写真の撮り方も調べとかなきゃな。

南極で目にする景色・現象を色々知りたい・理解したいけど、自分の知識がついていかない現状がなんとも歯痒い。
雪氷・地学系の基礎をもっとちゃんと学んどけばよかったなぁ。