8月頭に空と南極のイベントありまっせ

前回とはガラッと変わって、今回は自然科学を楽しもうぜ!な話。
8月頭に気象庁と国立極地研究所でそれぞれ一般公開イベントがあるんでご紹介です。

まず、8月1日(水)と2日(木)は気象庁夏休み子ども見学デー

〝子供見学デー〟って名前だけど、もちろん大人も大歓迎。全体的にゆるめな雰囲気ではあるんで、大人はその辺の職員捕まえて聞きたいことを遠慮なく聞いちゃってください。

気象庁内の南極観測チームもブースを出して、南極の氷や防寒服を展示予定。
せっせと南極に向けて旅立つ準備をしてる隊員(ぼく含む)や南極経験者がおもてなしするんで来場の際はぜひお立ち寄りください。
2日の15:00~15:40には南極昭和基地との中継ライブトークも予定してます。

あと毎年人気なのは予報や地震の作業現場を見学するツアー。事前申込みをしてるんで気になる人はお早めに。
いっぱいだったり予定合わなかった人は、少し仲間を集めれば平日に見学することはできるんで改めてどうぞ。
見学について@気象庁

続いて、8月4日(土)は国立極地研究所の一般公開、極地研探検2018

北極と南極で活躍する幅広いジャンルの人が集まる極地研。トークセッションや体験コーナーも豊富でちょっと羨ましくなるほどの充実っぷり。
自然科学にちょっとでも興味があるひとはきっと楽しめるはず。

もちろんこちらも中継しながらのライブトークあり。
しかも一度に北極と南極、地球の両極を楽しめる豪華仕様!

よりもい関連の展示や上映会もあるみたいだし、聖地巡礼の機会にちょうどいいかも。
作中ではあまり触れられなかった、そもそも南極行って何するの?を存分に味わえるかと。

真夏のド真ん中にちょっと南極気分を味わってみてはいかがでしょ(^^)

ハザードマップのススメ(洪水編)

本当に、本当に大きな被害となった今回の西日本豪雨(気象庁は平成30年7月豪雨と命名)。
こういった記録的な大雨になるとダムや堤防、排水施設内といった物(ハード)の能力の限界を超えてしまう場所が出てくるのは仕方ない。これをハードで抑え込もうとすると、とんでもない費用と環境負荷がかかってしまう。
こんなときにどう行動して被害を抑えるかは人(ソフト)の役割が大きくなる。
じゃあどうすればうまく行動できるか。

今回はそんな話を洪水をテーマに書いてみました。ちょっと長い&堅い話です。

まず最初に抑えておきたいポイント。
災害はどんな時にどこで起きるか。

当たり前だけど、どんなに大雨が降っても山の上に洪水は起きないし、平らなとこで土砂崩れは起きない。
洪水は低くて水が集まりやすいとこ・流れが淀むとこで起き、土砂崩れは急な斜面で起きる。

こうした地形や地質によるその土地が元々持つ災害に対する危険性、これが〝素因〟。
そして、大雨や地震みたいに災害を引き起こす直接的な現象を〝誘因〟といいます。
素因に誘因が重なり、さらにそこに人がいたとき起きるのが〝災害〟です。

自然現象である誘因は様々なパターンがあり、まったく同じことが起きるってことはまずない。
一方、土地の特性である素因は基本的に変わらない。
災害対策の土木工事なんかも、素因を無くすってよりは軽減する、改善するといった雰囲気です。

そこで、どこにどんな災害リスクがあるか、ある想定の現象が起きたらどれだけの被害が起きるか、を考えて作ってるのがハザードマップ。
各市町村で細かく作ってることが多いけど、手軽にざっくり把握するなら重ねるハザードマップ@国土交通省がオススメ。簡単に場所&災害種別を切り替えることが可能。
さらにわがまちハザードマップ@国土交通省では各自治体がまとめたハザードマップをまとめて探すこともできます。

ただし、ハザードマップを見てココは安心、ココは危ない、とだけ丸暗記するのはちょっと危険。
ハザードマップはあくまでもある想定に基づいた予測なので、現象の程度によって被害は大きくも小さくもなる。
また、小さな河川や崖など、ハザードマップではカバーしきらない危険性もあるってことを忘れちゃいけない。

そこでハザードマップに踏み込んで活用するために意識して欲しいのが地形。
地形もネットでお手軽に見れる時代。ブラタモリ好きなら地形を楽しむ素養はすでにあるはず。
ぜひ地理院地図@国土地理院で身の回りの地形を眺めてください。
※ぼくが見やすいなと思ったのはベースの地図+色別標高図+陰影起伏図(少し透過)。他にも色んなデータ&見た目をカスタマイズ可能。めっちゃ高機能です。今は他にも色んなツールがあるので、お気に入りを各自探すのもいいかと。

こんな災害の後に取り上げるのも躊躇しちゃうけど、より現実性を感じてもらうべく岡山県の倉敷市真備を例にします。

真備周辺の洪水ハザードマップがこちら。

そして、このエリアの地形。

この地形から真備がなぜ浸水想定が深い(≒洪水リスクが高い)か見てきます。

まず最初に着目するのは大きな川。
真備町周辺だと北から南に流れる高梁川が目立ちます。

そして、川の流れになった気持ちで川を下ってみる。
すると気になるのが次の赤丸エリア。山が連なる中をすり抜けるように流れてて、どうにも通りにくい。

ここに大雨が降るとどうなるか。
狭いとこで流れが詰まり、上流側の低地に溜まることに。

今回決壊して直接的な影響を与えたのは高梁川の支流で少し小さい小田川だけど、小田川決壊の背景には
高梁川の詰まりやすい地形→高梁川の水位上がる→小田川の水が先に流れない→小田川の水位上がる→限界になって決壊
そんな流れが指摘されてます。
「バックウォーター現象」で支流の水位急上昇か@読売オンライン

繰り返しになるけど、ハザードマップはあくまでもある想定に基づいた予測なので、現象の程度や決壊の場所によって被害は大きくも小さくもなる。
それでも、その土地が持ってる災害リスクを分かりやすく示してくれてることは間違いないです。PASCOによる災害前後の衛星画像から引用 ※撮影時点でまだ冠水してる場所=洪水被害エリアの全体、というわけではないことに注意

危ない!避難して!と言われても、なぜ・どこが危なくて、どうすればいいか。ここをあらかじめ考えとかないと有効な行動をとるのは本当に難しい。
ぜひ、身の回りのハザードマップ&地形を眺めて、なぜそこにその災害リスクがあるか、避難するにはどう行動すればいいかを考えてみてください。

これだけで防災の備えとしては各段にレベルアップ。そして、ここからはさらに上のレベルを目指す人ための話。

洪水において土地の特性を抑えた次にチェックして欲しいのが、個々の川の危険度を示してる指定河川洪水予報の存在。
ある程度の広さを持つ市町村全体の危険度を包括的に示す注意報や警報と違って、個々の川の水位実況や予測を元にして出す個々の川に対する特別な情報、それが指定河川洪水予報。
自分の近くの〇〇川が危ないよ!ってな直接的に自分に関わる情報です。指定河川洪水予報@気象庁より引用

対象となる河川は地図一覧表になってるけど、ちょっと見にくい。洪水危険度分布から近くに黒線で囲った太い川を見つけたらそれが指定河川洪水予報の対象河川。
名前を頭に叩き込んでおいて、その川が対象になった指定河川洪水予報が出たらすぐに避難行動できる準備!
そんな感じかと。

ただ、ある程度大きな河川で指定河川洪水予報が発表されるような時は相当な大雨の真っ最中。
色んな情報が飛び交い、自分が本当に必要な情報にたどり着きにくい傾向あり。
ここをどう改善するかは伝え手側の大きな課題だけど、ひとまず現状は現状として受け入れてもらうしかないかと…。

この辺の〝情報を整理して必要なとこを住民に伝える〟って作業の最終段階が地元自治体の避難勧告や避難指示。でも、逃げろと言われたってどうすればいいかはあらかじめ考えとかないとまず動けない。

自分の周辺にどんな災害リスクがあるか、そしていざという時にどう行動するか。それは住民各々があらかじめ知る&考えておいて欲しいこと。そんな考えで各家庭にハザードマップを配布したるんだろうなと。

これだけ記録的な大雨なのになんで避難しなかったんだ、なんて感じた人へ。

自分の身の周りにどんな災害リスクがあるか、そしていざというときどう行動するか。ちゃんと把握してますか??

この機会に災害を遠い世界の出来事ではなく、ぜひ自分の立場に置き換えて考えてみてください。

一生遭遇しないかもしれないけど、もし遭遇したときに自分自身と大事な人を守るために。

最後になりましたが、今回の災害で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

2018/6/23ー24 巻機山

今回はひっさびさに山でお泊まり♪
舞台はマッキーこと巻機山(まきはたやま、標高1967m)。
山頂近くにやたらキレイな避難小屋があると聞いてのチョイスです。初日の天気は微妙だけど、2日目はたぶん良くなると信じての1泊2日プラン。

ルートはメインルートである桜坂コースの往復で、概ね尾根沿いにえっちらおっちら登り続ける。地理院地図より

前半は樹林帯の中で展望もあんまりないけど、きれいなブナ林の中を歩く雰囲気は結構好き。(と言いつつ全然写真撮ってない)

谷沿いのルートはまだまだ通れたもんじゃありませんな…

7号目に着く頃には景色も開けて登ってきたぜ感が加速してく。(ただし、後から振り返ってみると足元は痛々しい。後述。)

もうすぐ9号目の避難小屋ってあたりで傾斜がゆるくなったけど、そこでちょっと不思議な光景。
登山道から谷を挟んで隣の斜面に突如として現れるオオシラビソの樹林帯。しかもなんかまばらな分布。多雪地だと雪の影響であるべき植生が抜けることがあるってのは知ってたけど、抜けたように見せかけて実はあるってのはなかかなか面白い。

そんな景色を楽しみつつ避難小屋に到着。
休憩してると予想通り天気は下り坂。雨は降り出しガスるしのんびり昼寝タイム。

もう今日はいいかとも思ったけど、夕方になって少し落ち着いたんで夕焼け見えたらラッキーと思いながら山頂へ。
巻機山の山頂標識は植生保護のためか、ほんとの頂点からはだいぶ離れた場所。

巻機山の西側、割引山なら夕日側の展望がいいかと思ったけど気持ち悪い雪渓が残ってたからサクッと断念。
なかなかの傾斜、そしてず~っと下の谷まで続く雪渓。雪が締まってる時に一度滑るとまず間違いなく止まらずに強制下山する羽目になるんでご注意を。こんなとこで無茶しちゃいかんです。

お目当ての夕焼けはこの程度だったけど、雨上がりの散歩も悪くない。しっとりした景色が山頂周りの池塘にぴったり。こうして1日目が終了。

予報的には日の出が拝めるかは微妙だったけど、淡い期待を胸に3時過ぎ起床。
すると…晴れてる!!

ってなわけで、時間を気にしながら山頂へ。
夏至のこの時期、日の出は4時過ぎとかなりの早さ。

彗星のようにも見える飛行機雲を見上げつつ

巻機山を過ぎて越後三山が正面に控える牛ヶ岳を目指す

朝もやの中、朝を待つ山々

そして…朝ですよー!

世界は藍から赤へ

そして赤から黄へ

さらに相棒とハロのポーズw

どんどん景色の色が変わるこの時間。
ひさしぶりに味わったけどホントに素敵だった。
なんというか、世界が生まれ変わるみたいな雰囲気。
やっぱり山で泊まるのはいいなぁ。

マッキーは人気者と聞いてたけど、なるほど納得。
景色と植生の変化が大きいから歩いてて飽きないし高山植物も豊富。首都圏からのアクセスも比較的いいし、山の行程も日帰りで十分。時間があればキレイな避難小屋で泊まりプラン。

しかもこの避難小屋。なにが凄いってトイレがバイオ式でめっちゃキレイ!!
紙に加えて使った紙を持って帰るためのビニール袋まで置いてくれてる。このトイレを汚したとあっては登山者の名折れ。正しく使って、気持ちよく協力金を入れてきましょ。
管理してる巻機友の会の人達、ほんとにありがとー!

そして最後にもうひとつ。

アクセスが良く、景観もいい巻機山。

当然登山者がいっぱい来るわけで、特に湿原性の山頂周りはかつて甚大なダメージを受けて荒廃してたらしい。

このままじゃいかん!と立ち上がり、植生の回復と保全に取り組んできたのが巻機山景観保全ボランティアーズの皆さん。

かつて巻機山どんな状態だったか、そしてどう取り組んできたか。
山を楽しむ登山者として、いい山だったな~だけで終わらずに山を支えてる人達のことを知っててもいいと思う。

巻機山に登ったことある人、これから登ろうかと思ってる人。ぜひ、時間のあるときに読んでみてください。

この辺にきれいにまとまってます。
植生破壊のメカニズム@巻機山景観保全ボランティアーズ
これまでの活動@巻機山景観保全ボランティアーズ

素敵な景色に溢れ、色んな人の山への愛が詰まった山、巻機山。ホントにいい山でした!

めざせ!南極気象予報士(決定版)

先週6月22日に文部科学省から出たこちらの報道発表。
第60次南極地域観測隊員等の決定について@文部科学省

第152回南極地域観測統合推進本部総会で第60次南極地域観測隊員の大部分が決定。
その中にはぼくの名前も。

ってなわけで。

今年の11月から、約1年半。
第60次南極地域観測隊(越冬)の一人として南極に行ってきます!

4月に所属部署が変わったことで事実上の準備は始まってたけど、ついにこうして〝決定〟まで来たのは大きなひと区切り。
南極地域観測隊の候補者から正式隊員となる上での最大の障壁〝健康判定〟を無事にクリアしたってことになります。

今の立場はこんな段階↓第60次南極地域観測隊の行動予定@国立極地研究所(以下、極地研)より

わざわざ赤字で「身体検査の進捗により~」と書いてるあたり、いかに重要ポイントかが伝わるかと。
どんな検査をするかは健康判定の検査項目@極地研をどうぞ。

色々と人生初の検査があって面白くもあったけど、もちろん結果が出るまではドキドキ。
どうやら検査の時点で指摘された虫歯の対処でせっせと歯医者に通ったくらいで無事に終わったみたい。

夏期総合訓練(通称:なつくん)もすでに終わり、各隊員は自分の任務に必要な訓練、物資の調達&梱包と慌ただしい準備が本格化。
しらせが日本を出発する11月にかけて怒涛の数ヶ月になる、らしいです。

夏訓では南極地域観測隊が成り立つための仕事や任務について色々と教わったけど、文明圏から離れた場所で昭和基地というひとつの街を維持するだけでもホントに大変なんだなぁと。

南極がどんなとこで、どんなことをしてるのか。

何よりぼくの志望動機の柱である、どんな景色が広がり、どんな自然現象が起きるのか。

その辺をキャッチーでウィットでセンセーショナルに伝えてきます!

…とはいっても、南極に向けて出発するまでまだ5ヶ月くらいあるんで、それまでは日常の気象ネタと南極ネタが入り混じるごちゃごちゃした内容になりそうな予感。
ブレブレな軸のことは気にしないでください(^^;)

【読書感想文×2】南極で生き物を愛した人と、空を愛した人

最近は何かと南極絡みの本を読むことが多いけど、今回はその中から印象深かった2冊をご紹介。

まずは田邊優貴子さんによる〝すてきな地球の果て〟

よりもい(宇宙よりも遠い場所)見てて、「あ、これは…」と思った。
こうすればもっと分かりやすいかと。

たぶん、よりもい作中で報瀬の母、貴子が書いた本である〝宇宙よりも遠い場所〟デザインのモチーフだろうな~と。
狙ってか、名前も田邊優貴子と小淵沢貴子で似た雰囲気。

田邊優貴子さんは極地を中心に活躍する生物学者さん。

…ってことだけは知ってたけど、よりもい見た時点でまだ読んではなかった(^^;
で、今回の更新になったわけ。

極地に向かうきっかけから、実際に南極と北極に行って出会った感動を生き物との関わりを中心に綴った手記的な雰囲気の強い1冊。
本当に極地が好きで、生き物が好きで、この世界が好きで。
そんな溢れ出る気持ちがよく伝わってくる素敵な本。
南極に興味があるなら一度読んで損はしないはず。
もっと早く読んどけばよかったな~。
よりもい視点でも色々思ったけどそれは後で。

この本の難点をあげるとすれば手記的な要素が強いんで、あらかじめ南極や北極の写真や映像をそこそこ見てればすんなりリンクするけど、前知識がない状態だともしかすると入り込みにくいかも??

パートごとにまとまって素敵な写真も数多くのってるけど、あくまでもメインは文章を通して田邊さんの感動を追体験するって本な気がしました。

そこでもう1冊のオススメをご紹介。

こちら、武田康男さんによる〝世界一空が美しい大陸 南極の図鑑〟

武田康男さんは〝南極の空を見る&撮る〟ことを目的に南極を目指した空の写真家。
個人的にかなり親近感を感じる動機ですw

こっちは素直に主題は〝南極の自然の写真集〟で、写真に筆者の想いや解説が付く形。
目の前に広がる圧倒的な自然を切り取った作品がズラリと並んでます。
南極ってどんなとこだろ、と思ってる人は先にこっちをみた方が分かりやすくていいんじゃないかなと。

田邊優貴子さんと武田康男さん。

同じ南極を舞台にしていながら、生物学者と空好きが見る景色の違い。
もちろん重なる視点もあるけど、やっぱり生き物を見ちゃう人と、空を見ちゃう人。
手記と写真集という表現の違い。
あと、田邉さんは夏の南極だけ。武田さんは越冬隊として丸ごと1年の南極って違いも。
読み比べるととても面白い2冊なんでぜひセットでどうぞ。

さて、ここからはちょいとアニメ好き属性強めな話を。

よりもい見てない人はなんのこっちゃ、だと思うんでスルーしちゃってください。
できればよりもい見てからまたどうぞ。
アニオタ以外が見ても面白いっすよ!(たぶん)

報瀬母・貴子のモデルの1つになったであろう田邊優貴子さん(少なくとも本においては)。
田邊さんは生物学者、貴子は作中から察するに天文系の人。
学問のジャンルは違えど、〝すてきな地球の果て〟を読むときっと貴子の〝宇宙よりも遠い場所〟もこんな南極への好奇心と感動と愛情に満ち溢れた本だったんだろうな~と思う。

でも、そんな本を残して母:貴子は南極から帰ってこなかった。
そして取り残された娘:報瀬。

当然本を読んでも母の想いや感動を素直に感じられるはずもなく、ただ戸惑うばかり。
意を決して南極に向かうも、実際に南極に立ってもその気持ちは変わらない。

戸惑いもがき続ける中、仲間の助けでついに長年の想いが溶け出し決壊した報瀬。

作中では描かれなかったけど、きっと帰ってから(あるいは帰りの船旅で)お母さんの〝宇宙よりも遠い場所〟を読み直したんだろうなぁと。
どんな気持ちだったんだろう。
ちゃんとお母さんの想いは伝わったかなぁ。

あぁ、そんな想像をするとまた涙が…。

ってな感じで、よりもい という作品を味わう上でも〝すてきな地球の果て〟は結構意味のある1冊だと思う。
よりもいを楽しんだ人はぜひ手にとってみてください。
ホントに南極に行きたくなるかも!?

気圧の尾根?谷?いいえ、鞍部です

今回のお題は天気図、そして等圧線。

書くきっかけになったのがこちらの天気図。

6月8日12時

そして、3時間後の15時

たった3時間なのに、ずいぶん雰囲気変わった気がしないでしょか?

なんで雰囲気が違うのかちょっと考えてみると、どうやら気圧の〝鞍部〟をどう表現したかによるっぽい。
そとあたりを今回説明しようかと。

たとえばこんな気圧配置を考えてみます。
南北に996hPaの低気圧、東西に1004hPaの高気圧。
天気図の等圧線は4hPaごとに書くルールなんで、これには1000hPaの等圧線を足さなきゃいけない。
さて、どう書くか。

996hPaと1004hPaの真ん中に書けばいいわけで、ここまでは迷わない。

問題はこの先。
真ん中をどう書くか。

これかな?

それともこれかな?

どっちも等圧線としては成り立つ絵で、どっちも間違っちゃない。
正解をひとつに絞るには真ん中付近に気圧の観測データが必要で、観測データが無い限りは解析者の判断しだい。
こういった気圧の谷と尾根が交差する〝鞍部〟をどう表現するかはなかなか悩ましいテーマです。

※そもそも〝鞍部〟が何か伝わらない人も多いってなコメントを見て確かにそうだよな~と。山(高気圧)と山(高気圧)を繋ぐ稜線で、その中でも低くなってるとこ。日常生活の道でいうと峠、山の中じゃコル・キレット・乗越なんて名前がついてることが多いです。

それじゃこの鞍部の悩ましさを踏まえた上で、最初にみた15時の天気図を12時に巻き戻してみます。

まず原点の15時を再確認。

まずはカムチャツカ沖の低気圧から北海道付近の低気圧にかけてのびる低圧部をカット。
東西に分けちゃう。

続いて、北海道&日本海の低気圧の西側も等圧線をカット。
日本海中央の低気圧&低圧部としてひとかたまりに。

ただ、ここで困るのが大陸の脇にいる1008hPaの高気圧。
↑でカットした等圧線も1008hPa。
どうにも収まりが悪いけど、とりあえず1008hPa同士は繋げときます。

高気圧は周囲より気圧の高いとこ。
このままじゃ大陸脇の高気圧は高気圧失格だけど、よ~く見たら1008じゃなくて1010hPaだった!
4hPaの等圧線の狭間、2hPaを書くときは点線で書く決まりだけど、今回はペイントソフトの都合上で灰色線でご勘弁。

続いて大陸内陸部、だらっとのびる低圧部に低気圧を解析。
東西にのびる低圧部をメリハリある姿に。

ここまできたらあとは微調整。
大陸の高気圧と、太平洋の高気圧の位置や張り出しを少しいじります。

さて、それじゃ12時の天気図と比べてみます。
どうでしょ??だいたい似た雰囲気になったはず。

こんな感じでちょっとした表現や解析の差が重なると全体像としてずいぶん違う印象になるのが、天気図の難しいとこであり、面白いとこ。
さらにこれを異なる担当者間で〝ならす〟のもなかなか大変。
特に普段目にする天気図は時間制限ありの〝速報解析〟なので、どうしてもその辺が目立つことも。

天気図がガラッと変わった瞬間を見つけたらどこがどう変わったのか探すのも、天気図のひとつの楽しみ方になるかもしれません。
あまり役に立たないスキルな気もするけど(^^;)

風変わりな低気圧とひねくれた雨

今回は珍しいというか、ちょっと風変わりな低気圧が目についたのでメモ的な更新。

まずは昨日21日3時の天気図をどうぞ。
そして、1日以上たった今日22日12時の天気図がこちら。

注目して欲しいのが沖縄の近くにある低気圧。

発達するでもなく、動くでもなく。
お前、どうしたいんだ?と聞きたくなる変わらなさ。
ただボーっとそこにいる、そんな雰囲気です。

衛星画像でもあんまり低気圧としてのやる気は見られるず、だらだらと停滞するのみ。
こんな微妙な状態で維持されてる低気圧もちょっと珍しいかも。

まあ発達もしないし、大して悪さもしてないからほっとくか。

…で済ませられない気分なのが、宮崎県の人。

高気圧の縁に沿って前線から続く湿った空気が東から流れ込み、低気圧が九州の東海岸に押し付けるアシストをする形。
これが昨日からず〜っと続き、宮崎ではだらだらと雨が降り続いてます。

しかもこの湿った東風による雨。
かなり背の低い湿った空気による雨で、レーダーには映ってなかったりします。
関東で北東~東から湿った風が入ったときに降る雨と似たような感じ。22日12時の高解像度降水ナウキャスト

そして背が低いためこの雲&雨は九州の真ん中でブロック。
熊本や鹿児島西部の人はまずまずな天気なのも宮崎的には悔しいところ。

熊:ちょっと雲多いけどまずまずの天気だよね〜
宮:アホォ!こっちはずっと雨降っとるわい!
熊:またまたぁ。レーダー映ってないじゃん。
宮:ホンマや…。でもアメダス見てみぃや!

…的なやりとりを西と東でしてたりして。

だらだら続くこのひねくれた雨。
次の低気圧&前線が通過してガラッと空気が入れ替わるまでもう少し続きそう。

止まない雨はないけど、止みにくい雨はある。

宮崎の人は太陽を拝むまでもう少しお待ちください…。

無謀な登山者はなぜ増える? ※答えは持ってません

今回のブログを書くきっかけになったのは、岳沢小屋のスタッフブログ。

まだまだ厳しい状況にある残雪期の穂高エリアにやってくる場違いな登山者への、やりようのない怒りを感じる現場の臨場感あふれるブログです。
まずは一読をどうぞ。
5月13日、最近ひどくレベルの低い登山者が多い件について@岳沢小屋スタッフブログ

山小屋関係のブログを眺めてるとトンデモ登山者の実例には事欠かず、時々ニュースを騒がせてるのもご存知の通り。
遭難関連の報道は憶測混じりのかなり適当なモノも混じってるようなんでそのまま信じるのはやめておきたいところ。

それでも、自分のレベルと山のレベルをまったく把握しないままにトラブルを起こしてる登山者がいっぱいいる、増えてる、ってのは間違いないんだろうと思います。

土いじり的に例えると…

  • トラブル起こした人をこってり搾るのは、伸びてきた雑草を抜くような対処療法的な対応。
  • 「こうなっちゃいかんよ、気をつけてよ」と呼びかけるのは除草剤。されど効果は実感できず、どんどん雑草が増える有り様。
  • 誰だ雑草増やしてるヤツは!なんとかしてくれ!!(怒)

そんな感じなのかなぁと。

本当に解決したいならトンデモ登山者が増える原因を正確に把握した上で、原因に合った効果的な対処が必要なはず。

じゃあ、トンデモ登山者が増えてる正確な原因って何?

  • 山ブームを盛り上げようといい面ばかり前面に出すテレビや雑誌、アウトドアメーカー、登山者自身。
  • 登山の多様化、細分化。
  • ツアー登山によるリスク管理無しでのハイレベル登山が可能に。自分はできる、との誤認。
  • 危ないものは見るな触るな近づくな、と自然の面白さと怖さを知らずに過ごす現代社会(教育含む)。
  • 山岳会などの人から教わる場の少なさ。
  • タクシー感覚のお気楽救助要請でも無料と認知が広がった。
  • 登山者の母数が増えて同じ比率でトンデモ登山者も増えただけ。
  • むしろネットでレベルの低い層の増加が加速?

色々思い浮かびはするけど、何がどれだけ影響してるのか少なくともぼくは知らない。
そして、あーじゃないか、こーじゃないかという記事は見ることがあるけど、しっかりした根拠とセットになってるのも見たことない。
たぶん、トラブルを起こしたトンデモ登山者に対してこってり絞る&叩くだけでなく、どうしてそうなったのかを逐一丁寧にデータ取って蓄積していかないとホントのところは分かんないんだろうなぁと。

そんなスッキリしない気持ちを持ってる中で読んだ冒頭のブログ。

トンデモ登山者の相手をさせられる現場の大変さは本当に大変だと思う。

でも…

数年前、「岳」(漫画のほう)が流行ったときに、安易に救助要請する登山者の話しが何度も書かれていましたが、きっとそれでも読んで、山で困れば110番とでも思っていたんでしょうね。あのマンガには本当に困ります、漫画としてフィクションの話しなら問題はないのですが、設定が槍穂を中心に妙にリアル過ぎて、ああいう話しがリアルな世界だと思う人間が多くなってしまいました。

ちょ、おまっ・・・「岳」のせいにするなよーー!!

どうしたら『きっとそれ(岳)でも読んで、山で困れば110番とでも思っていたんでしょうね。』で片づける気になった??
いや、実際現場じゃ遭難騒ぎ起こした人の多くが『「岳」読んでここに来ました。救助呼びました。』って言ってる可能性も全くないわけじゃないけど…。

山が好きで、マンガも好きで、『岳 みんなの山』って作品も大好きなぼく。
※実写映画のことは聞かないよーに

いくら山の最前線にいる現場をもの凄く知ってる人の言葉とはいえ、どーしても素直に頷く気にはならない。
安易な登山や救助を誘うより、そんなことすんなよ!ってメッセージを伝えてる作品だと思うんだけどなぁ。

この人はマンガ嫌いなのかな?
よっぽど「岳」で嫌な思いをしてきたのかな?
他の山岳関係の人はどう思ってるんだろ?
(根拠なく)結構好意的にとらえてる人が多いと思ってたけど実は違うのかなぁ。

前半は山の遭難のことを考えてたのに、こっちばっかり気になりながらブログを読み終えてしまいましたw

いちよ書いとくけど、別にこの人を批判する気も否定する気もないです。
どんな経験と過程を経てそんな考えを持つに至ったのか。
そこが気になっただけ。

あと、そもそもの「無謀な登山者はなぜ増える?」も答えが知りたい。
誰かデータから本格的に取り組んでる研究者さんいないかな。

20180501針ノ木岳

2018/5/1に登った北アルプス・針ノ木岳のメモ。
GWの針ノ木雪渓がこんなもんでしたって記録です。
ただ、春は融雪と降雪を繰り返す季節で日々の変化がとっても激しい。
シーズンごとの差も大きいから毎年こんな感じ、とはならないことにはご注意を。

それじゃまずはルートの確認。地理院地図より

スタート地点は立山黒部アルペンルートの長野側の起点、扇沢。
そこからメインの谷をずっと遡り、日本三大雪渓のひとつ・針ノ木雪渓から山頂へ。
夏道は針ノ木雪渓から針ノ木峠へ向かうけど、春はマヤクボ沢の雪も繋がってるからこっちからでも登れるようになってるとか。
分岐する大きな谷はあるけど、視界が良くて地図とコンパスさえ持ってればまず迷うことはないだろなと。

それよりも雪渓ルートで怖いのは雪崩。
そこに大きな雪渓ができるのはまわりから雪崩として雪が集まってくるから。
急に気温が上がったり、まとまった雪が降った直後にはとても登る気にはならないルート。
今回は暖かい日が続いてはいたけど、1週間近く降りものはなかったんで周りの谷や沢からの湿雪雪崩を中心に気をつければOK。
そんな判断でした。

それじゃここから写真で振り返り。

扇沢のバスターミナルに向かって左手が針ノ木岳への登山口。
登山ポストもあるんでもちろん登山届は出しましょ。

登山届けの出し方の①コンパス ②長野県電子申請
とオンライン物が並んだ後に③登山ポストへの投函 と並んでて、さすが長野県とちょっと感心。

登山道は入った直後は地面も出てたけど、すぐ積雪エリアに。
作業用道路と分かれて右岸(山を背にした時の右手、登り手から見ると左手)を進みます。
谷の底も歩けそうではあったけど、中央部はもう開いてるし大きな堰堤を何個か越えるので端っこ歩くのが無難。
この時点でも脇から雪の固まりがゴロゴロっと流れてきてたので油断は禁物。

この辺はほぼ真西へ、赤沢って谷を正面に見ながら進む。
赤沢に近づくと次第に南西に曲がり、大沢を横切っていよいよ針ノ木雪渓の本谷へ。
大沢から蓮華岳を狙う人もいるみたいだけど、素直に針ノ木岳に登る人は迷い込まないように気をつけたいポイント。

大沢を過ぎると正面にズバリ岳~針ノ木岳を眺めながら延々と雪渓を登り詰めてくことに。
斜度もジワジワきつくなり、振り返ると爺ヶ岳がステキな眺め。

標高2100mあたりは谷が狭く傾斜もちょっと急で〝のど〟と呼ばれるポイント。
谷底であるルート上は見事に湿雪雪崩のデブリまみれ、支谷の上部にはまだ雪庇もあるっぽい。
自分がどの谷の下部にいるのか、雪崩たらどのくらい広がりそうかを特に強く意識して歩く必要があるエリアでした。

〝のど〟を抜けると傾斜は緩くなり谷も広がり、だいぶ針ノ木岳の姿がハッキリ見えるけどまだまだ標高差を感じる景色。
さすが日本三大雪渓、そうそう簡単には終わりませんw

そろそろしんどくなってきた頃、針ノ木峠へ向かう夏道とマヤクボ沢へと別れるところに到着。
まったりしたくなるけど針ノ木峠の手前にはまだ雪庇の姿も。
なるべく安全な場所を選びつつ、山側を眺めながらの休憩を忘れずに。

終盤の登りはマヤクボ沢を選んだけど、向かって右手の雪渓は広そうだけどかなりの傾斜。
まだ左手からの方が攻めやすそうだったのでハイマツの脇を抜けて岩場混じりのルートを開拓することに。

となりを見ると、マヤクボ沢の奥側にはスキーを担いで急斜面に挑むツワモノの姿が。
立派な雪渓だからまだしばらくの間は繋がってそうだけど、かなりの傾斜がしばらく続くんでのんびり登りたい人にはオススメしにくい雰囲気でした。

ハイマツの脇を通り、岩場の多いエリアを抜けた後はトラバース気味に稜線へ。
ここまで来たらあと少し!
山頂直下の急斜面をグイッとあがって…や~っとこさ針ノ木岳のてっぺん♪山頂周りは吹き飛ばされて雪がほとんど付いてないんで、なるべくアイゼンは外しておいて欲しいとこ。
必要ないとこでザクザク地面を荒らすのは見ててあんまり気持ちのいいもんじゃないです…。

登ってきた針ノ木雪渓方面を振り返れば、ズバリ岳~爺ヶ岳~鹿島槍まで続くなかなか魅力的な稜線。

西には黒部ダムを含む渓谷を挟んで立山・劔岳。

南には三俣蓮華の奥にちょっとかすれた槍ヶ岳も。

スタート地点の扇沢からの標高差は約1400m。
しっかり登ったかいあってほんとにステキな景色♪
アルペンルートを使わずに登ることの大変さもよくわかったw

1時間以上山頂でまったりした後は尻セードも交えつつ楽しく下山。
もちろん後ろ&左右への注意は忘れずに。

まだまだたっぷりの雪を抱く針ノ木岳。
溶けゆく姿に春を感じる素晴らしい山でした(*´∀`)

7:3でスキーヤーが多かったけど、登山としてはちゃんとしたアイゼン&ピッケルが必要で標高差もたっぷり。
天候次第じゃ雪崩のリスクも大きい中級以上のルートなんでくれぐれも無理しないようにお楽しみください。

春(融雪期)の雪崩についての一般的な注意事項はこちらも参考にどうぞ。
【お知らせ】春季における一般的な注意事項_180402@日本雪崩ネットワーク

雪渓ルートは雪崩のリスクが高いルートで、春の高山はまだまだ雪も降る領域。
〝注意して登る〟以外にも山やコースを変えるって選択肢もお忘れなく!

アラケン先生の那須雪崩事故論文を山好きお天気屋さんが読んでみた

ちょっと前に気象研究所のアラケンこと荒木健太郎さんが発表した2017年3月の那須雪崩事故に関わる論文。
(報道発表)平成29年3月27日栃木県那須町における表層雪崩をもたらした短時間大雪について@気象研究所

主に気象イベントとして那須で何が起きてたかについてまとめたもので、内容が気になってる山好きさんも多いはず。
ただしもちろん〝論文〟なわけで、気軽に読むにはちょっとツラい…。
そんなアラケン先生の論文を山好きお天気屋さんのぼくが山好き視点で勝手につまみ食い!ってのが今回のお題です。

あくまでも読みたいところを読み取った&勝手に解釈してるだけなので、このブログを読んで「アラケン先生がこんなこと言ってたんだって~」とはならないのでご注意を。
元の論文をそのまま読む気になる人はもちろんそちらをどうぞ。

さて、ここから本題です。

論文の項目は
・観測&解析データを使って事例解析
・数値モデルを使って再現実験
・アメダスデータを使って統計解析
・雪崩について
な流れ。

でも、ぼく的に山好きにとって重要と思う順番に勝手に並び替えて解説してきます。

①那須ってどのくらいの頻度で大雪になるの?
元論文では後半の扱いだけど、まずは那須エリアの降雪特性についての話。
この項目(4項)を読むにあたり、押さえておいてほしい前提条件が。

この統計調査はあくまでも標高750mくらいにあるアメダス那須高原のデータを使ったもの。
山岳域には滅多に観測データがないので仕方ないけど、今回雪崩事故が起きたような標高1500m級の山岳域のデータを使ってる訳じゃないってことはしっかり覚えておいてください。
実際、地図で見るとこのくらいの差があります。地理院地図に加筆

さて、それじゃ改めて那須エリアの降雪特性の話へ。
アメダス那須でまとまった雪になったイベントを気象現象別に仕分けたのが表1。荒木健太郎,2018より引用

どちら側かというと太平洋側エリアに面してる那須エリアだけど、冬型気圧配置による大雪が6割強。
強い冬型になるとしっかり那須エリアまで雪雲が流れ込んでくるってこと。

最近だと2017/12/27が冬型による大雪事例。
衛星画像と天気図を見るといかにも冬型!って雰囲気です。

そして冬型以外にも太平洋側の降水イベント、南岸低気圧よる大雪もそれなりに。
前線を伴う/伴わないで分けてるけど、合わせると約3割。
もちろん今回の那須雪崩事故(2017/3/27)もこちら。

じゃあ今回みたいな南岸低気圧による大雪はどのくらいの頻度で起きるか、を調べてるのが図12。
現象の度合いの分布からどのくらいの頻度で起きるのかを求める手法です。荒木健太郎,2018より引用

この図から読み取って「数年に1度、3月としては20年に1度」というのが論文内の結論です。

ただし!

山好きとして忘れちゃいけないのが、これはあくまでも標高約750mにあるアメダス那須での話ってこと。
標高が大きく違うってことは、気温もかなり違う。
これだけ標高差があるとアメダス那須では雨だけど、山岳域では雪って事例がそれなりにあると考えた方が自然です。
さらに、比較的気温が高い降雪イベントである南岸低気圧の方がこの標高差による条件の違いが大きく効く可能性も十分。
(冬型による大雪は寒気がたっぷり流れ込んでる最中のイベントなので、南岸低気圧に比べて気温が低い傾向。この辺は5.2項、図16あたりで触れられてます。)

山好きとしては「山麓でも数年に1度、3月としては20年に1度起きる雪。そして山岳域はもっと多いかも。那須は思いっきり雪山だ!登るからには雪山装備&心構えを!」といった理解でいたいところ。

続いて、ちょっと気象学な話。

②どうしてこんなに降った?
山岳域にはほとんど観測点はないってのは前に書いた通り。
こんな時によく使われる手法が数値予報モデル(コンピューター)による再現実験です。

・気象庁が普段天気予報のために使ってる設定よりずっと細かい領域で数値モデルを走らせてみた。
・アメダス那須のデータで検証したら結構いい結果。
・だから数値予報モデルの表現から色々考察してみるよ。
ってのが2.1項と3項の話。

降雪の仕組みについて書いてる3.4&3.5項をざっくりまとめると
①低気圧の北側で湿った北~東風が吹いてた
②この風が那須岳の北東斜面に当たって上昇気流になってた
③この上昇流域ではうまく雪を降らせる〝種まき効果〟ってのが効いてたみたい
④その結果、那須岳の北東~東斜面で短時間にまとまった雪になった
こんな感じ。

①②④だけだと冬に日本海側山岳域でもっさり雪が降る理由と同じ。
でも、今回は高いとこからの降雪粒子×中下層の湿った上昇流域とのコラボ(種まき効果、Seeder-Feederメカニズム)も効いてたみたいってのが気象学的なポイントになってます。

シーダー・フィーダー効果の概念図、雲の微物理過程の研究,荒木健太郎(気象研究所)より引用

まあ山好きとしてはその辺の細かい話はあまり重要ってわけじゃなく、シンプルに「山に湿った風が当たると風上側はいっぱい降るよね」だけでもいいかなと。
Seeder-Feederメカニズムってのが効いたらしいぜ…と盛り上がれる人を山仲間から探すのはちょっと大変な気がしますw

続いて次のテーマ。
③どんな低気圧だと大雪になるか
ってのが5.2~5.3項の話。

これまたざっくりまとめると
・風速や気温、水蒸気の流れこむ量あたりじゃハッキリした傾向は見られず
・降る時間が長いと雪も多いって傾向がある
・閉塞しつつある南岸低気圧の時は短時間で大雪になることもある
ってところ。

ここからはぼく個人的な感覚だけど、南岸低気圧で那須エリアにしっかり雪を降らせるには湿った北東~東風をどれだけしっかり吹かせるかがポイントになりそう。
そのためにはスルッと通過&遠ざかる普通の低気圧ではなく、上空の流れから取り残されて動きが鈍くなる〝閉塞〟ってキーワードが効いてきそう。
那須雪崩事故の時の気圧配置みたく、東西に低気圧が並ぶとさらに効率よく湿った東風を運び混むのかなぁと。

ただ、こういった低気圧の傾向から降雪●cmなんて予想に繋げるのは他にも要素が多すぎてまず無理な話なんで、「関東付近で発達したり動きが遅い低気圧にはより一層注意」くらいの意識で十分な気がします。

そして最後に雪崩の話。

④南岸低気圧の雪は雪崩やすい?
これは5項で触れてる内容。
南岸低気圧の層状雲による降雪はさらさらした雪や、細かなツブツブが着いてないキレイな樹枝型結晶が降ることが多く、崩れやすく〝弱層〟として振る舞うことがある。
ってのが、日本の雪氷学界隈で一般的な認識。
今回もそんなタイプだったと思われる、ってのが結論。

ただし!

山好きはこれだけで終わっちゃダメ。
「南岸低気圧の雪には気をつけるぞ。今日は違うから気持ちいい斜面にみんな同時にヒャッハー!」とかしようもんなら間違いなく寿命は短くなります。

南岸低気圧が関わらない雪崩もたんまりあるわけで、南岸低気圧に要注意=南岸低気圧以外は大丈夫 とは絶対なりません。

南岸低気圧だろうが、冬型だろうが、まとまった雪が降ったときは最大限に雪崩への警戒が必要。
もっといえばそこに雪の斜面がある限り、雪崩の可能性があると考えて行動すべき。

気象学や雪氷学の知識も大事。
でも、登山者自信の身を守るのに一番大事なことは、どういった場所が雪崩の危険性が高く、どうすればリスクを最小限に留める行動になるのか。
そのあたりの知識&判断力じゃないでしょうか。
今回の雪崩事故も南岸低気圧の雪だから起きたのではなく、雪山における行動が間違ってたから起きた、の方が本質的だと思うので。

世の中の雪崩に関する書籍も、雪氷学的なウェイトが大きめな本、行動判断にウェイトを置いた本、といろんなタイプが。

最近出た本だとこの辺が雪崩入門書。
前者は雪氷学的要素、後者は行動判断にウェイトが置かれた構成になってます。
どっちもいい本だけど、ずいぶんと雰囲気が違うんで読み比べてみると面白いです。

最後に、引用&関連資料をまとめて載せときます。

荒木健太郎,2018: 低気圧に伴う那須大雪時の表層雪崩発生に関わる降雪特性. 雪氷, 80, 131-147.
荒木健太郎,雲の微物理過程の研究
防災科学研究所による現地調査:概要版詳細版
日本雪崩ネットワークによる現地調査
衛星画像(可視):ひまわりリアルタイム@NICT
天気図:日々の天気図@気象庁