沈まぬ太陽

南半球の夏至を迎え、白夜真っ盛りの昭和基地。
天気さえよければ存分に沈まぬ太陽を眺めることができる日々。
おかげで残業が捗ること捗ること。
そんなありがたくも恐ろしい白夜についてちょっとメモっておこうかと。

さっそくだけど、これが今の夜中の太陽。
12/24~25にかけて日付をまたいだ2時間弱のタイムラプスです。
太陽が一番低くなる24時前後でも太陽は沈まず、地平線のちょっと上を水平飛行。
すぐにまた高くなって1日のほとんどが青空になってます。

そもそもなんで白夜/極夜が起きるかというと、地球の自転軸が公転面に対して傾いてるから。
文字で書いても分かりにくいんでとりあえず図をどうぞ。

暦wiki@国立天文台より引用

地球が南半球を太陽側に向けてるせいで南端はどう回ってもずっと太陽光があたった状態、これが地上から見ると太陽が1日中沈まない白夜。
逆に北半球は太陽と逆側になっているせいでどう回っても太陽光が当たらず、1日中太陽が昇らない極夜になってます。

衛星画像で真夜中の地球を見ると、南極付近が明るいまま。2019/12/26 0:00ひまわり可視画像@気象庁より

逆に真昼でも北極周辺はぼんやり暗くなってます。2019/12/26 12:00ひまわり可視画像@気象庁より

北極がずっと暗く、南極がずっと明るい様子は動画だとさらに良く分かる。

ひまわりリアルタイムWeb@NICTより

こうして1日中明るい白夜の昭和基地。
今は気温も日中はちょっとプラス、夜にはいちよ下がってマイナス1桁ってとこ。

色々作業・調査するなら今しかない!ってことで越冬明けの越冬隊と、翌年の夏&越冬隊が合同で慌ただしい夏を過ごすのが南極の夏の定番。

間もなく61次隊が昭和基地に到着して、各種物資の輸送、引継ぎ、作業と慌ただしさがさらにアップ。

さすがに元旦は休日ってことになってるけど、そこはお天気屋さんの悲しさ。
元旦も気にせず普通に仕事です…。
まあ国内にいても同じ生活だったから別にいいんだけど。

ゆっくり休めるのは2月の頭に越冬交代して帰路のしらせに乗ってから。
昭和基地での生活もラスト1ヶ月ちょっと。
なんとか息切れしないように頑張るぞー!!

南極で引越し! 気象棟から基本観測棟へ

60次南極観測隊(越冬隊)の、そして誰よりも気象隊員にとっての一大イベント『気象棟から基本観測棟への業務移転』
これがついに12月2日に実行されました!
基本観測棟での気象観測始まる@昭和基地NOW

ここまでホントにしんどく、長い道のりだった。
というか、まだ続いてるけど。
色々吐き出したいことはあれど、とりあえず今回は“引越し”に焦点を絞ってお届けします。

まずはこちらが気象棟。
14次隊から気象業務の拠点となり40年以上が経過した、昭和基地の中でもかなり古株の建物。

昭和基地が抱えてる問題点として、色んな観測系の古い建物が別個にあるせいで除雪や暖房なんかの管理や効率がよろしくないってのがある。
それじゃ思い切って新しい建物作って観測系を集約しよう!ってことで建てられたのが基本観測棟。
60次隊では電気・設備・内装なんかの作業を進めつつ、移転集約の第一陣が気象部門ってことで準備を進めてきたとこでした。

なんで気象部門が一番乗りかというと、まぁ単純に近くて引越しやすかったってことかと。
道を挟んで目の前だし。

これだけ近いと楽勝じゃん、と言いたいとこだけど、気象棟と基本観測棟をよく見てほしい。

南極の建物は風下にできるドリフト(吹き溜まり)をなるべく軽減するように高床式になってるのが基本。
そして、最新式の基本観測棟は気合い十分な高床っぷり。
気象棟1階→基本観測棟2階の引越しだけど、気分的には2階から3階への引越し作業。
各種観測装置やたんまりある荷物を人力で運ぶにはちょっとツラい。

こんな時こそ昭和基地の底力を見せるとき!

まずは気象棟の目の前にコンテナ置いて、その中にせっせと荷物をつめる

いっぱいになったらフォークリフトで広い場所に動かして・・・

クレーン車に吊り下げたら・・・

あっという間に2階の入り口前。

ここで荷物を運び出し、空っぽになったコンテナはクレーンで吊り下げ、フォークリフトで気象棟前へ。
コンテナ3つ使ってこの作業をグルグルと。
ついでに、気象棟屋上から基本観測棟屋上への観測機器の移転も実施。

そんな華麗な連係プレーをどうぞご覧あれ。

こんな感じの作業を3回やって、やっとこさ引越し作業がだいたい完了。
古い荷物も多いなぁと思ってたけど実際に荷造り&運ぶとホントに多かった!
移転のタイミングでも観測の中断はできるだけ短く留める必要があってとりあえず運び込むので精一杯でした。
手伝ってくれた多くの隊員に感謝!

歴史ある気象棟の看板も建築担当・小山隊員に外してもらい記念撮影。
そのうちどこかに飾る予定です。

歴史あるといえば、こちらの何の変哲もない古そうな棚(右の3個)。
裏を見るとこんなタグが。

『昭和31年10月 納』

昭和31年・・・かなり古い。

しかも。

初代南極観測船『宗谷』が1次隊を乗せて日本を出発したのが昭和31年11月8日。
ま、まさか宗谷に載って1次隊と一緒に来た棚か!?
なんと恐れ多い棚を使っていたんだ・・・。
引越し作業が無かったら絶対に気付かなかった。
“有楽町の壽商店”をググってみると今もコトブキシーティングとして現存してる会社みたい。

戦後間もない頃、日本の意地と底力から始まった南極観測。
そこから脈々と続く歴史の中に確かにいる。

そんなことを実感させてくれた引越し作業でした。

まだ終わってないけど。

基本観測棟の中の整理はもうすぐ来る61次隊にお任せしよう・・・

空に輝く太陽の指輪『幻日環』

内陸旅行から帰ってきて、溜まりに溜まった仕事とひたすら闘うこと3週間。
いい加減に気分が煮詰まってきたところに久しぶりの野外オペ。
雪上車に乗って初の沿岸エリアへ!

向かったのは昭和基地から約30km離れたラングホブデ。
目の前に広がる南極らしさ溢れる景色に心が生き返るのを感じるひと時。

でも、やっぱり南極。
きれいだな、だけじゃ終わらない。

太陽が沈まない白夜が始まり、気温も日中0℃近くまで上がるようになったせいで海氷が融け始めた。
これまでは固く凍ってたクラックも氷が緩み、危なそうなところでは道板を渡して進む。

はぐれペンギンとの出会いも素敵だったけど、水たまり&ボロボロになった海氷はちょっと落ち着かない。

そして渡れないとこは渡れない。

色んな意味で夏になったことを実感しつつ、消化不良な野外オペ終了。

自然相手だから予定通りにいかないのは仕方ない。
かなり残念だったけど、その変わりに素敵なプレゼントをくれた。

薄雲が広がってたこの日。
きれいにハロ出てるなーと眺めてた。
お、いつの間にか幻日もちょっと出てる。

あれ、幻日から横にのびるラインも見えるような…

のびてる。めっちゃのびてる。

ってか空を1周しとる!!

空全体を使った見事な太陽の指輪、これが『幻日環』。
向きが揃って上空にただよう六角柱の氷晶側面で太陽光が反射することで見える現象。

太陽~幻日を繋ぐラインは幻日とセットで出ることもあるけど、丸っとフルサイズで出ることは相当レアらしい。
ぼくが見たのも初めて。
その大きさと不思議な光景にかなり感動…

惜しむべくは手持ちのレンズじゃ広角が足りず全体像を捉えきれなかったこと。
でもまぁなんとか分かるくらいには撮れたからよかったのかな。

相棒OM-D E-M5で使ってる主力レンズは35mm換算で24-80mm。
ハロを撮るとこんな感じ。

そしてボディキャップにレンズが付いた、なんちゃって広角レンズを使うと35mm換算で18mm。
これだけ余裕のある絵になる。
ほんとにもう少しだけ広ければ幻日環もバッチリだったんだけどな…惜しい。

ボディキャップというだけあって小さいし、何より手ごろな値段で広角気分が味わえる。
マイクロフォーサーズ使いで空が好きな人は持っといて損しないかも。