2つ玉低気圧は融雪の香り

今日(23日)の夕方に発表された暴風雪と高波に関する全般気象情報

中身のメインは「25~27日頃にかけて強い冬型になりますよ。特に北日本の人は気をつけてね!」といったところ。
ただ、雪山好きとしては見逃せない内容がもうひとつ。

それは「25日は低気圧に向かって暖かい空気が流れ込むから北日本でも雨が降って雪解けが進みますよ」ってこと。

現時点(23日夜)で作成されてる予想天気図は24日朝と25日朝。
24日朝に朝鮮半島の西側にある低気圧が25日にかけて発達しながら東進。
と同時に、本州の南側にも低気圧が発生&発達しながら東進。
日本海と本州南岸をそれぞれ低気圧が進む、通称“2つ玉低気圧”って状態になることが予想されてます。

低気圧に向かって暖かい空気が~ ってとこを見るには24日夜の予想天気図が欲しいとこだけど、無いのは仕方ないので高層天気図(数値予報資料)に落書き。

※高層天気図はHBC(北海道放送)さんや地球気さんから見ることができます。どのタイミングでどこに低気圧や前線が予想されるかは地球気さんに載ってる短期予報解説資料が参考になります。

で、これが24日夜の予想資料(FXFE50シリーズ)に低気圧(赤×)と前線を落書きしたもの。
ちょうど2つ玉低気圧状態になったところです。

今のところ南側の低気圧だけに前線を予想してるけど、日本海の低気圧もしっかり発達して前線的な構造は持つ見込み。
細かい解説はおいといて、エイヤと落書きを追加するとこんな感じになります。
赤&青点線が前線的なもの。紫矢印が暖気、水色矢印が寒気の流れ。
南北2段の低気圧でせっせと南の暖気を北に押し上げ、ぐいぐいと暖かい空気が日本海に流れ込む予想です。

じゃあ具体的にどのくらい暖かくなるのかを見るのには上空約1500m(850hPa)の予想気温が載ってるFXFE57シリーズがオススメ。

23日夜には本州にかかっていた0℃の線が・・・

24日夜には日本海中部~青森まで北上する予想!

温度線からざっくり読み取ると、北アルプスエリアでも標高1500mでプラス3℃くらい。
だいたい標高2000mくらいまでは雨かべちゃ雪、そんな気温になることがわかります。

こうして雪山にはベチャベチャな積雪層が形成され、そのまま強い冬型に突入してドカッと乾いた雪が載ることに。

そんな劇的な変化が雪山に襲い掛かる予想です。

今回の一連の現象が落ち着いたあと、美味しい斜面を滑る前にシビアな判断が必要な人はもちろん。
のんびりした斜面で散策を楽しむ人も、少し雪を掘ってみると雪の中に記録された気象の変化に出会えると思います。

気になるけど雪山行けないよ~な人は、日本雪崩ネットワークの積雪観察情報、SPINから現地の情報を覗くこともできます。
データを読み取るにはちょっと勉強が必要ですが・・・。

その辺は雪崩との付き合い方も含めて日本雪崩ネットワーク発刊の雪崩リスク軽減の手引きにイロハがまとまってるので興味のある人はぜひ。
できたてほやほやの改訂版が発売中です。

なぜ昼に風が強まるか→やっぱり太陽の力は偉大

朝はとても穏やかだったけど、昼間は結構な北風が吹いてた昨日の関東。
ぼくも外出先で自転車を倒されました…。

アメダスを見ると朝と昼で大違い。
全体的に風の弱い朝に比べ、昼には関東平野を北西風が吹き抜けてるのがわかります。

じゃあなんで風が強まったのかと朝&昼の天気図を比べてみると…
間違い探しかってくらい変化は少なく、どっちも冬型気圧配置が続いたまま。

熊谷のウィンドプロファイラを見てみると、少し上空(高度1~3km)の風は夜中から昼にかけてずっと強かったことがわかります。

じゃあなんで地上の風がこんなに変化したかというと、ここでも太陽が大活躍。

夜間、地表付近の空気は冷えて落ち着き、上空の空気と混ざりにくくなってます。
上空でいくら風が吹いても頭の上をすり抜けるだけ。
地表付近の風は弱いまま。

ところが、朝になって太陽から照らされると地表付近の空気は暖められて軽くなることで対流が発生。
風の強い上空の空気と混ざることで地表付近でも風が強くなるって仕組みです。

夜間の地表付近の動きが鈍くなった空気の層を接地逆転層、日中に対流でかき混ぜられた空気の層を混合層なんて呼んだりもします。

そして夕方になると冬型気圧配置が緩んで上空の風も弱まり、再び夜間になることで地表付近はまた吹きにくい状態に。
こうした風の変化が起きた1日でした。

冬型気圧配置が続いてるのに風が弱いなぁと思った朝。
油断して日中の風の強まりに洗濯物などを飛ばされないようにご注意ください。

【読書感想文】雪崩教本 by 雪氷災害調査チーム&雪崩事故防止研究会

最近すっかり放置してたこちらのブログ。冬が始まってネタはいっぱいあるのにアウトプットがまったくもって間に合いってない!冬までに冬の気象をまとめたいとか思ってた時期がありました…。反省。

さて、久しぶりの話題は雪崩に関する新しい本が出たのでその感想です。

こちら、12月1日に発売されたばっかりの『雪崩教本』

“雪崩教本”と冠するだけあって、
1章 気象、雪、雪崩の科学的な話
2章 どう雪崩の危険性と付き合うか(リスクマネジメント)
3章 雪崩に巻き込まれたどうするか(レスキュー)
といった3段構えで、雪崩に対する知識を一通り網羅する内容になってます。

著者は日本雪氷学会北海道支部を母体とする雪氷災害調査チームと、雪崩に関する知識・対策の普及啓蒙をする任意団体の雪崩事故防止研究会
どちらも北海道に拠点を置く団体で、北海道の雪山を愛する人たちの集まり。
雪氷災害調査チームは2015年には山岳雪崩大全も刊行してます。

山岳雪崩大全は山岳大全シリーズらしくかなりの分厚さ!
内容もみっちり&結構マニアックなところもあって、雪山についてちょっと勉強してみようと軽い気持ちで最初に手を出すと挫折しかねない雰囲気を醸し出しています…。

そんな山岳雪崩大全から基礎&重要なところを抜き出してギュッと濃縮したのが今回の雪崩教本って雰囲気でした。
本の厚みは半分、お値段も半分と手を出しやすくなってるので山岳雪崩大全を手に取りかけて躊躇した人も雪崩教本ならきっといけるはず。
…とはいえ、あいかわらず結構マニアックな内容も含まれてるので、全部理解しようとはせず難しとこは流し読みでいいと思います。

ただ、全体的にいい本だな~とは思ったけど2章の雪崩リスクマネジメントのところはちょっと物足りなく感じたのが素直な感想。

雪崩について科学的な知識を持つのも大事だし、道具やレスキューも大事なんだけど、実際に雪山で行動する際に最も重要なのは『どう判断して、どう行動するか』ってとこじゃないかと。
本のボリュームの制約はあれど、もう少し詳しく記載してもよかったんじゃないかなぁ。

この辺の話は日本雪崩ネットワークが刊行した『雪崩リスク軽減の手引き』が詳しく載ってます。
ちょうど間もなく12月20日に増補改訂版が出るので雪崩教本と合わせて読むとバッチリかと。

あと、雪崩教本の最初には気象の話も載ってるけど、こちらもさすがに雪崩教本の内容だけでも心許ないところ。
気象の勉強もいきなり山岳気象大全みたいな重厚系に挑むんじゃなくて、まずは広く浅く日々の気象に親しむくらいの本にしておくのがいいと思います。
一般的な気象の知識を得て、プラスアルファとして山ならではの気象を学ぶってイメージで。

2011年とちょっと古いけど、気象入門には『史上最強カラー図解 プロが教える気象・天気図のすべてがわかる本』がぼくの好み。広く浅く、かつ系統だった内容でなかなかバランスいいです。

↑の本をひと通り読んで、実際の日々の天気の感じ方が変わった上で上級編の山岳気象大全に挑んでください。
高層天気図なんかも登場して気象予報士的な視点&知識も含まれるので、最初に読むとかなりの確率で挫折する気がします…。