カテゴリー別アーカイブ: お天気講座

天気と気象について色々知りたい人にお届けするコーナー。

ハリケーンから台風へ→なりました

前回(ハリケーンから台風へ)取り上げたハリケーンHector。

ついにハリケーンHectorから台風Hectorへ改名して再デビュー(?)したんでその記録を。

ハリケーンHectorから台風Hectorへ改名したってことは、RSMC Honolulu@ハワイからRSMC Tokyoへバトンパスしたってこと。
8月14日3時(日本時間)から東経域に入りRSMC Tokyo管轄の“台風”になりました。

RSMC Honoluluでは“Hurricane”から“Tropical Storm”へ。Hectorの進路予報@Central Pacific Hurricane Centerに加筆

RSMC Tokyoでは“熱帯低気圧”から“台風”へ。台風情報@気象庁より

…これじゃいつもと変わらん!ってことで、8月14日3時のアジア域天気図から台風17号を拡大。

普段の“熱帯低気圧から発達して台風”のパターンとの違いを探してみてください。
こっちは8月13日9時にできた台風16号のとき。

元々TROPICAL STORM(最大風速34ノット以上)だった台風17号と、TD(TROPICAL DEPRESSION、最大風速34ノット未満)から強くなってできた台風16号。
そんな感じです。

しかし、こうした熱帯低気圧ネタを書くときは日本語と英語で微妙にズレがあるからなんとも書きにくい。

最大風速34ノット以上の熱帯低気圧は台風。
でも、最大風速64ノット未満の台風はTYPHOONではない、なんてことになってます…。
アジア太平洋域 実況天気図の説明@気象庁より

ハリケーンから台風へ

ハワイの近くにあって、日本のアジア域天気図にも姿が見えるハリケーンHector。もうある程度話題になってるけど、場所と進路がちょいと気になる状態です。天気図赤外画像@気象庁より

赤外画像に書き込んだ赤線は東経180度線(かつ西経180度線)。ハリケーンHectorがこのラインを跨ぐとちょっとめんくさいことに。

台風やハリケーン、サイクロンといった熱帯低気圧に対して、世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)の枠組みの元、世界で6つの熱帯低気圧地区特別気象センター(RSMC:tropical cyclone Regional Specialized Meteorological Centre)があってそれぞれ担当エリアの監視を請け負ってます。

日本周辺はというと、気象庁がRSMC Tokyoとして北西太平洋エリアの熱帯低気圧“台風”を担当。
地域特別気象中枢@wikipediaより

困ったことにたまにRSMCの担当エリアを跨いで移動するひねくれ者が出てくる。今回話題になってるハリケーンHectorがまさにこのパターン。

今のとこRSMC Honolulu@ハワイの管轄の元でハリケーンとして過ごしてるけど、このまま西へ進んで東経180度線を跨げばRSMC Tokyoが管轄する台風として看板を掛けかえることになります。
ハリケーンHectorの進路予報を見ても順調に西進するようなので時間の問題なのかなと。
Hectorの進路予報@Central Pacific Hurricane Centerに加筆

RSMC HonoluluからRSMC Tokyoへ。
どのタイミングで引継ぐか、両者の強度解析や進路予報に大きなズレはないか。
イレギュラーな事例に対してシステムはうまく動くか。
台風の現場では色々と大変だそうです。

ちなみに、普段の台風の名前はリストから順番につけてるけど、越境してくる場合は生まれ故郷の名前をそのまま引き継ぐルール。

ハリケーンHectorから台風Hectorへ。

日本への影響はまったくもって気にする段階じゃないけど、ひねくれ台風の誕生の瞬間にご注目あれ。

しっかし本当に色んなことが起きる2018年夏ですな…。

ハザードマップのススメ(洪水編)

本当に、本当に大きな被害となった今回の西日本豪雨(気象庁は平成30年7月豪雨と命名)。
こういった記録的な大雨になるとダムや堤防、排水施設内といった物(ハード)の能力の限界を超えてしまう場所が出てくるのは仕方ない。これをハードで抑え込もうとすると、とんでもない費用と環境負荷がかかってしまう。
こんなときにどう行動して被害を抑えるかは人(ソフト)の役割が大きくなる。
じゃあどうすればうまく行動できるか。

今回はそんな話を洪水をテーマに書いてみました。ちょっと長い&堅い話です。

まず最初に抑えておきたいポイント。
災害はどんな時にどこで起きるか。

当たり前だけど、どんなに大雨が降っても山の上に洪水は起きないし、平らなとこで土砂崩れは起きない。
洪水は低くて水が集まりやすいとこ・流れが淀むとこで起き、土砂崩れは急な斜面で起きる。

こうした地形や地質によるその土地が元々持つ災害に対する危険性、これが〝素因〟。
そして、大雨や地震みたいに災害を引き起こす直接的な現象を〝誘因〟といいます。
素因に誘因が重なり、さらにそこに人がいたとき起きるのが〝災害〟です。

自然現象である誘因は様々なパターンがあり、まったく同じことが起きるってことはまずない。
一方、土地の特性である素因は基本的に変わらない。
災害対策の土木工事なんかも、素因を無くすってよりは軽減する、改善するといった雰囲気です。

そこで、どこにどんな災害リスクがあるか、ある想定の現象が起きたらどれだけの被害が起きるか、を考えて作ってるのがハザードマップ。
各市町村で細かく作ってることが多いけど、手軽にざっくり把握するなら重ねるハザードマップ@国土交通省がオススメ。簡単に場所&災害種別を切り替えることが可能。
さらにわがまちハザードマップ@国土交通省では各自治体がまとめたハザードマップをまとめて探すこともできます。

ただし、ハザードマップを見てココは安心、ココは危ない、とだけ丸暗記するのはちょっと危険。
ハザードマップはあくまでもある想定に基づいた予測なので、現象の程度によって被害は大きくも小さくもなる。
また、小さな河川や崖など、ハザードマップではカバーしきらない危険性もあるってことを忘れちゃいけない。

そこでハザードマップに踏み込んで活用するために意識して欲しいのが地形。
地形もネットでお手軽に見れる時代。ブラタモリ好きなら地形を楽しむ素養はすでにあるはず。
ぜひ地理院地図@国土地理院で身の回りの地形を眺めてください。
※ぼくが見やすいなと思ったのはベースの地図+色別標高図+陰影起伏図(少し透過)。他にも色んなデータ&見た目をカスタマイズ可能。めっちゃ高機能です。今は他にも色んなツールがあるので、お気に入りを各自探すのもいいかと。

こんな災害の後に取り上げるのも躊躇しちゃうけど、より現実性を感じてもらうべく岡山県の倉敷市真備を例にします。

真備周辺の洪水ハザードマップがこちら。

そして、このエリアの地形。

この地形から真備がなぜ浸水想定が深い(≒洪水リスクが高い)か見てきます。

まず最初に着目するのは大きな川。
真備町周辺だと北から南に流れる高梁川が目立ちます。

そして、川の流れになった気持ちで川を下ってみる。
すると気になるのが次の赤丸エリア。山が連なる中をすり抜けるように流れてて、どうにも通りにくい。

ここに大雨が降るとどうなるか。
狭いとこで流れが詰まり、上流側の低地に溜まることに。

今回決壊して直接的な影響を与えたのは高梁川の支流で少し小さい小田川だけど、小田川決壊の背景には
高梁川の詰まりやすい地形→高梁川の水位上がる→小田川の水が先に流れない→小田川の水位上がる→限界になって決壊
そんな流れが指摘されてます。
「バックウォーター現象」で支流の水位急上昇か@読売オンライン

繰り返しになるけど、ハザードマップはあくまでもある想定に基づいた予測なので、現象の程度や決壊の場所によって被害は大きくも小さくもなる。
それでも、その土地が持ってる災害リスクを分かりやすく示してくれてることは間違いないです。PASCOによる災害前後の衛星画像から引用 ※撮影時点でまだ冠水してる場所=洪水被害エリアの全体、というわけではないことに注意

危ない!避難して!と言われても、なぜ・どこが危なくて、どうすればいいか。ここをあらかじめ考えとかないと有効な行動をとるのは本当に難しい。
ぜひ、身の回りのハザードマップ&地形を眺めて、なぜそこにその災害リスクがあるか、避難するにはどう行動すればいいかを考えてみてください。

これだけで防災の備えとしては各段にレベルアップ。そして、ここからはさらに上のレベルを目指す人ための話。

洪水において土地の特性を抑えた次にチェックして欲しいのが、個々の川の危険度を示してる指定河川洪水予報の存在。
ある程度の広さを持つ市町村全体の危険度を包括的に示す注意報や警報と違って、個々の川の水位実況や予測を元にして出す個々の川に対する特別な情報、それが指定河川洪水予報。
自分の近くの〇〇川が危ないよ!ってな直接的に自分に関わる情報です。指定河川洪水予報@気象庁より引用

対象となる河川は地図一覧表になってるけど、ちょっと見にくい。洪水危険度分布から近くに黒線で囲った太い川を見つけたらそれが指定河川洪水予報の対象河川。
名前を頭に叩き込んでおいて、その川が対象になった指定河川洪水予報が出たらすぐに避難行動できる準備!
そんな感じかと。

ただ、ある程度大きな河川で指定河川洪水予報が発表されるような時は相当な大雨の真っ最中。
色んな情報が飛び交い、自分が本当に必要な情報にたどり着きにくい傾向あり。
ここをどう改善するかは伝え手側の大きな課題だけど、ひとまず現状は現状として受け入れてもらうしかないかと…。

この辺の〝情報を整理して必要なとこを住民に伝える〟って作業の最終段階が地元自治体の避難勧告や避難指示。でも、逃げろと言われたってどうすればいいかはあらかじめ考えとかないとまず動けない。

自分の周辺にどんな災害リスクがあるか、そしていざという時にどう行動するか。それは住民各々があらかじめ知る&考えておいて欲しいこと。そんな考えで各家庭にハザードマップを配布したるんだろうなと。

これだけ記録的な大雨なのになんで避難しなかったんだ、なんて感じた人へ。

自分の身の周りにどんな災害リスクがあるか、そしていざというときどう行動するか。ちゃんと把握してますか??

この機会に災害を遠い世界の出来事ではなく、ぜひ自分の立場に置き換えて考えてみてください。

一生遭遇しないかもしれないけど、もし遭遇したときに自分自身と大事な人を守るために。

最後になりましたが、今回の災害で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

山の天気の不思議~寒冷前線通過で気温上昇?

やっぱり春先の悪天は対応が難しい!
そして山の天気は奥深いです…。
「寒冷前線が通過したら気温が上がる」なんて予報士試験で書いたら即刻アウトな現象が実際には起きちゃうんだから。

天気が悪いときは山に行かないが基本的なスタイルだけど、めずらしく悪天が予想されてる中、山(の麓)で過ごす機会があったんでその記録です。

2月28日から3月1日にかけて、乗鞍岳の麓、一の瀬園地エリア(標高1600mくらい)で過ごしてきました。地理院地図より

28日から1日の天気図を並べるとこんな感じ。

日本海で発達する低気圧に南からグイグイと流れ込む暖気。
事前の予想資料では、暖気のピークとなる1日朝には長野エリアでも850hPaで+3℃に届きそうな勢い。

夜から早朝にかけて少しまとまった雪、朝には雨に変わってビチャビチャになるんじゃないかなぁ。そして寒冷前線が通過したあとは軽い寒気移流で気温はさがるけど天気はある程度落ち着くんじゃないか。
そんな予想をしながらのツェルト泊。

夜になって寝付く頃には雪が降り初め、ずーっと降ってるなぁと感じつつウトウト。
計算外だったのが降り積もる雪のせいでツェルトがどんどん狭くなるw
しかも隣のツェルトとの間でまったく余裕スペースのない張り方したもんだから、ツェルトとツェルトの間に雪が溜まって押しのけることもできない…。

そして早朝5時過ぎに起床。
まだ降り続ける雪の中、遠くから響く雷鳴。
あぁ、寒冷前線のお出ましか…。

次第に近づき太くなる雷鳴。
フラッシュのような雷光にも照らされ、バチバチと1cm弱の雪あられも登場(雹と呼ぶには密度の低い玉)。
あとから振り返ればポールやシャベルの先から〝セントエルモの火〟見れたかも、なんて呑気なことも思ったけど、当時は炊事テントに逃げ込んでさっさと過ぎ去ってくれるのを願うばかりでした。

30分くらいで雷祭りは終わり、天気も小康状態に。
それじゃと撤収作業をしてると雪が雨に変化。
ありゃりゃ、寒冷前線が通過して気温下がるはずなのに雨??なんて困惑しながらの撤収作業。

その後、昼前にはしっかり気温が下がって再び雪に。
そうそう、これが寒気移流の天気だよね。
さっきのはなんだったんだ?

そんな変化の2日間でした。

まとまった雪が降るとわかってたのに〝降ったらどうなるか〟を想像&設営に反映できなかったのが今回最大の反省。

天気が悪くなると知ってるだけでは意味がない。
その状況下で何が起きると想定され、その対策として何ができるか。
そこまで想像力を働かせてこそ、山の悪天対応なんだなぁとしみじみ実感しました。

あと、現地ではうまく理解できなかった「寒冷前線通過で雪から雨に」の謎は山を降りてから再検証。
ちょうど乗鞍エリアの近くにアメダス奈川があって、ここのデータがいいヒントになりました。
※天気図的には寒冷前線か閉塞前線か微妙な位置だけど、寒冷型閉塞だし雷鳴りまくりだし寒冷前線ってことで進めます

レーダーや天気の変化から考えて寒冷前線の通過はまちがいなく7時頃。
でも奈川では8時過ぎまで気温が低く風の弱い状態が継続。
そして、8時半頃に風が強まると共に気温が急上昇。

この風と気温が連動しての急変化、おそらく〝滞留冷気層の破壊〟によるものです。
※8時まわりの風は欠測してるけど、たぶん弱い状態続いてたはず。あと、近いとはいえ一の瀬園地より標高は500mほど低いことに注意。

教科書的な大気は高度が上がるほど気温が下がる構造。
ただし実際にはちょくちょく地面付近の気温が低く、上空の方が気温が高い〝逆転層〟が形成されます。
そして逆転層の上下では空気の性質が大きく異なり、混じりにくい状態になることがしばしば。

逆転層の成因は
地面付近が放射冷却や降水による冷却で冷えるパターン
前線や低気圧の前面で上空に暖かい空気が流れ込むパターン
など色々。

おそらく今回は両者のミックスで、低気圧に吹き込む暖気の中で地面付近(特に凹部)に降水粒子に冷やされた空気が取り残されたパターン。
そっと残された冷たい空気の中にあるうちは低温&弱風。
寒冷前線の通過に伴いこの空気が吹き飛ばされたことにより(相対的に)昇温&風速増大。
そんな変化をアメダスの気温&風速から読み取ることができます。

こんなふうに後から推測する知識は持ってても事前にそんな予測はしてないし、実際に山の中で体験するのは初めて。
つくづく山の気象条件を予測するのは難しいなぁと…。
ほんと、いい勉強&経験になりました。

ちょっとした条件の差や局地的な影響で雨と雪の境目が変わる春先の山。
穏やかな時はほんとに穏やかだけど、いざ変化する気象状況への対処という意味では厳冬期よりよっぽど難しい。
春の山はそんな危険性も含むことを忘れずにお楽しみください。

最後に。

なんでこんな天気の中で乗鞍にいたのか。
この理由は近いうちに改めて。

2つ玉低気圧は融雪の香り

今日(23日)の夕方に発表された暴風雪と高波に関する全般気象情報

中身のメインは「25~27日頃にかけて強い冬型になりますよ。特に北日本の人は気をつけてね!」といったところ。
ただ、雪山好きとしては見逃せない内容がもうひとつ。

それは「25日は低気圧に向かって暖かい空気が流れ込むから北日本でも雨が降って雪解けが進みますよ」ってこと。

現時点(23日夜)で作成されてる予想天気図は24日朝と25日朝。
24日朝に朝鮮半島の西側にある低気圧が25日にかけて発達しながら東進。
と同時に、本州の南側にも低気圧が発生&発達しながら東進。
日本海と本州南岸をそれぞれ低気圧が進む、通称“2つ玉低気圧”って状態になることが予想されてます。

低気圧に向かって暖かい空気が~ ってとこを見るには24日夜の予想天気図が欲しいとこだけど、無いのは仕方ないので高層天気図(数値予報資料)に落書き。

※高層天気図はHBC(北海道放送)さんや地球気さんから見ることができます。どのタイミングでどこに低気圧や前線が予想されるかは地球気さんに載ってる短期予報解説資料が参考になります。

で、これが24日夜の予想資料(FXFE50シリーズ)に低気圧(赤×)と前線を落書きしたもの。
ちょうど2つ玉低気圧状態になったところです。

今のところ南側の低気圧だけに前線を予想してるけど、日本海の低気圧もしっかり発達して前線的な構造は持つ見込み。
細かい解説はおいといて、エイヤと落書きを追加するとこんな感じになります。
赤&青点線が前線的なもの。紫矢印が暖気、水色矢印が寒気の流れ。
南北2段の低気圧でせっせと南の暖気を北に押し上げ、ぐいぐいと暖かい空気が日本海に流れ込む予想です。

じゃあ具体的にどのくらい暖かくなるのかを見るのには上空約1500m(850hPa)の予想気温が載ってるFXFE57シリーズがオススメ。

23日夜には本州にかかっていた0℃の線が・・・

24日夜には日本海中部~青森まで北上する予想!

温度線からざっくり読み取ると、北アルプスエリアでも標高1500mでプラス3℃くらい。
だいたい標高2000mくらいまでは雨かべちゃ雪、そんな気温になることがわかります。

こうして雪山にはベチャベチャな積雪層が形成され、そのまま強い冬型に突入してドカッと乾いた雪が載ることに。

そんな劇的な変化が雪山に襲い掛かる予想です。

今回の一連の現象が落ち着いたあと、美味しい斜面を滑る前にシビアな判断が必要な人はもちろん。
のんびりした斜面で散策を楽しむ人も、少し雪を掘ってみると雪の中に記録された気象の変化に出会えると思います。

気になるけど雪山行けないよ~な人は、日本雪崩ネットワークの積雪観察情報、SPINから現地の情報を覗くこともできます。
データを読み取るにはちょっと勉強が必要ですが・・・。

その辺は雪崩との付き合い方も含めて日本雪崩ネットワーク発刊の雪崩リスク軽減の手引きにイロハがまとまってるので興味のある人はぜひ。
できたてほやほやの改訂版が発売中です。

秋の青空とエマグラム

更新をサボってるうちにすっかり秋の雰囲気。ちょっと暑い気はするけど。そして今日の午前中は秋らしく空が高く感じるステキな青空でした。

この青空を運んできてくれたのは、もちろん移動性高気圧。関東から見るとちょっと中心が北にズレてたけど、今日山に登ってた人は本当にステキな景色が見れたと思う。あぁうらやましい…。

低気圧は上昇流が卓越してるのと反対に、高気圧は下降気流が卓越。
特に勢力の強い移動性高気圧は下降気流が強く、上空の塵や水蒸気が少ない綺麗な澄んだ空気が地表付近まで下りてきてるから”いかにも秋!”な澄んだ空になるって仕組みです。

この澄んだ空を”見る”ことができる資料が、ラジオゾンデによる高層気象観測のデータを使ったエマグラム。

縦軸に高度&気圧、横軸に気温を描いて高度ごとの変化がとても分かりやすい資料で、説明は気象庁のサイト内にもあるけど・・なんと、エマグラムそのものは掲載されてないという悲しい状況だったりします。
≪ラジオゾンデによる高層気象観測@気象庁≫

そんな時にとってもありがたいのが気象会社のSunny Spot
「観測・情報」の中にエマグラムが掲載されてます。

そして今日(21日)朝の輪島のエマグラムがこちら。

縦軸が高度&気圧。横軸が温度で、赤線が気温、青線が露点温度になってます。

今日のエマグラムで注目すべきは700hPa、高度約3000mの赤矢印のとこ。
基本的に対流圏の中は高度が上がるにつれて気温は下がるので、エマグラムの気温線(赤線)は左斜め上にのびてるのが普通の姿。
でも700hPaのとこでは高度が上がると気温も上がる層があって、これが“逆転層”と呼ばれるところ。この逆転層を境にここより上空は露点温度(青線)がぐっと低くなり、非常に乾燥してることが分かります。

この700hPaにある逆転層は“沈降性”の逆転層で、高気圧の下降気流によって乾燥断熱昇温した上空の空気と、下層の空気の境目。
登山者目線でいくと、この境目より上が景色がスッキリクッキリな山の空気。この境目より下がモヤっとした下界の空気ってとこです。

しっかりした移動性高気圧がくる春と秋に起きやすいこの状態。
街中で今日は空綺麗だな~と見上げたり、山で今日は遠くまで見えて凄いな~と思った時、気が向いたら天気図と衛星画像、そしてエマグラムも眺めてみてください。

前に書いた≪春の高気圧その2≫の時もちょうどそんな雰囲気の時でした。エマグラム確認してなかったけど…。

波浪学のススメ(うねりとの付き合い方)

本格的に始まった夏休みシーズン。
台風はいるけどまだ遠いし大丈夫。とりあえず海でも遊びに行くか!

でも、今週末みたいに、天気はそんなに悪くないけど、遠くに台風があって、そろそろ“うねり”が入りそう、な状況が非常に危ない。
いわゆる“土用波”で、「堤防や磯で釣りをしてたら予期せぬ大波で流された」というのが事故の典型例。

自然を甘く見てると痛い目に会うのは山も海も一緒。
山が好きだけど海も好き、ってことで“うねり”と上手に付き合うためのポイントをご紹介。

①波の特性
まずは最初に“波”の話。

波がどうやってできるかというと、当たり前だけど風が吹くから。
強い風でできるバシャバシャとした波を“風浪”といい、風浪が風の弱いところに伝わりながら丸みを帯びて周期が長くなった波が“うねり”。
この風浪とうねりが重なりあったのが普段目にする波“波浪”です。

様々な高さや形の波が混じりあう中で波の高さを表現するのに用いるのが“有義波”という概念。
「ある地点で一定時間に観測される波のうち、高いほうから順に1/3の個数までの波について平均した波高」を有義波高と定義してて、目で見た波高に近い値と言われてます。
天気予報や観測データで一般的に「波高」として使われてるのは、この有義波高。波浪の知識@気象庁より

ここで重要なのが有義波は“平均した波”ってこと。
平均というからには当然それよりも大きな値を含んでいるわけで、統計的には100個の波の中には有義波高の1.5倍の波が、1000個の波なら有義波高の2倍の波が含まれてることになります。
周期10秒の波としたら、100個で20分弱、1000個の波で3時間弱。
このたまにくる大波が曲者。サーフィンの場合はこのおかげで波が小さい日でものんびり待ちながら遊べるわけですが。

② うねりの特性
続いて“うねり”ならではの特性の話。

遠くにある台風の周辺で猛烈に発達した風浪は、うねりとして遥々伝播。
周期10秒の波が伝わる速さは約40km/hで、1000km離れたところから伝わるには1日ちょっと。
元が何だったのか忘れてしまうほどタイムラグがあります。(実際には伝わりながら周期が伸びる&周期が長いほど波は早くなるのでもっと複雑)

“うねり”は見た目が丸く、周期が長い=波長も長い波。
白波が立つわけではないので沖からくる大きなうねりは気付きにくい。

さらに、海岸近くで海が浅くなると波は高く&急峻になる“浅海効果”という変化があるけど、この効果は波長が長い波ほど強く影響が出る。
ずっと前にできた波が・そ~っと近づいて・目の前で急に高くなる。
そんな恐ろしさを“うねり”は持ってます。

③ 波浪の観測&予想
そして最後に観測&予想の話。

気象と同じく、波浪の世界もスパコン×数値モデルによる予想が基本。ただし気象と波浪で違うのは、波浪は観測データが圧倒的に少ないってこと。

ネット上で利用できるとこだとナウファス@国土交通省港湾局波浪観測情報@気象庁
あとはたまに通る人工衛星の観測データがあるくらい。
様々な手段で高頻度&広域の観測データが得られる気象とは相当な差があります。

そんな限られた観測データを共にして数値モデルが計算するわけだけど、困ったことに数値モデルはうねりの表現がちょっと苦手。
そして予想と実況がどうズレてるか比べようにも実況データが少ないという3重苦。

最近はいろんなところ(国際気象海洋GPV気象予報波伝説とか)で数値波浪モデルの計算結果を見ることができるけど、「数値モデルはうねりの表現がちょっと苦手」ってことをしっかり踏まえた上で見るべき資料です。

そんな諸事情を踏まえた上で予報官が出すのが天気予報。
波の予報に「うねりを伴う」とあったら、特に現地では周囲の状況に注意を払ってください。28日11時の水戸地方気象台の天気予報

ナウファス@国土交通省港湾局の実況でも関東付近じゃ急激に周期が伸びて波高も上がり、そろそろ本格的に台風第5号からのうねりが届き始めたみたい。

台風第5号はしばらく南の海でウロウロする予想。
そこそこのうねりが入る状況も長くなりそうなので海で遊ぶ予定の人はくれぐれもご注意を。

サーフィンやるには願ってもない好条件といえるけど、今回のうねりはかなりしっかりした高さになりそう。
初心者にとって、2mを超えるようなうねりは迫り来る脅威の壁。波の頂上から谷を覗き込み、高度感に体が一瞬でも固まったら波に揉まれてあっという間に海底行き。

挑戦するのはいいけど、無茶をしちゃダメ。

自然をなめちゃいかん、を実際に体験した元ヘタレサーファーからの忠告です・・・。

最後におまけ。

海遊びする人向けのゆるい本はいっぱい出てるけど、そこからもう一歩踏み込んで“波浪学”に触れてみたい人にオススメするのがこちら。
数式はすっ飛ばしても大体の雰囲気は掴めるし、何より数式見ると眠くなる病のぼくが読み通せた貴重な一冊ですw

雲が消えて、またできて(好天の場合)

おととい(6/16)は綺麗な寒気が襲来。どうなるかと思ったけどさすがに発達しました!なかなかの大きさの雹も降ったみたいで出会えた人にはちょっと羨ましかったり。

この不安定の話でもしようかと思ったけど、衛星画像好きとしては少し引っかかる記事を見つけてしまったので予定変更。

その引っかかる記事というのがコチラ↓
東京に白いリング状の雲が出現@片山由紀子(ウェザーマップ)

16日の昼過ぎに現れた、東京湾をグルッと囲むように広がってる雲についてこんな解説をしてます。

鹿島灘から吹く東風と東京湾や相模湾から吹く南よりの風がぶつかった所に雲が発生しています。東京では午前9時に北北東の風、その後、午前11時になると南南東の風に変わりました。そのころから白いリング状の雲ができ始めたと思われます。

半分あってるけど、半分足りない気がするので今回とりあげてみました。

まず最初にキーワードのひとつである〝海陸風〟のおさらい。
比熱&吸熱効率の差により、暖まりやすく冷えやすい陸地と、暖まりにくく冷えにくい海。この差によって昼間は海から陸地へ風が吹き、夜間は陸地から海へと風が吹くってやつです。
小学校の教科書あたりだと海岸近くだけを見て説明するけど、関東平野全体でもこの傾向はあてはまります。夜は内陸から川の流れに沿った風が、昼間は川の流れに逆らった風が吹くってイメージ。
ただし、メリハリのない気圧配置で全体的に風が弱いのが前提。気象っぽく表現すると「気圧傾度が小さい場」で起きる緩やかな風です。

今回は早朝から夕方にかけて、この海陸風による日変化が卓越した日。
朝9時には関東平野全体で緩やかな陸風が卓越。他の着目点として、衛星画像では低くて細かい雲が広がってます。

そして11時。陸風から海風に変化。気温があがることによって平野に広がってた下層雲もしだいに消散。

そして問題の?13時。確かに千葉県側は風の収束に対応してそうだけど、西側は海風が卓越してハッキリした収束は無し。雲の時間変化を追っても個々の雲は素直に南東風に乗って動いてました。

海風が卓越する中、少し雲のない領域を挟んだ内陸側で発生する細かな下層雲。たぶん、その仕組みはこんな感じ。ちょっと湿ってるけど雲になるほどじゃない海風が陸地に侵入。陸地を通過するうちに温められて対流が発達。この対流がある高さまで届くとその頭が対流雲(積雲)として可視化された、そんな仕組みなのかなと。
陸地に入った海風の中に対流雲ができるまで少し時間がかかるので、海岸からある程度の領域には雲ができないという分布になったんだと思います。

海風がもっと湿って雲を伴ってるとこの変化はさらにわかりやすくなります。以前、新千歳空港から南へ飛んだとき、太平洋から押し寄せる霧が積雲に変わる様子はなかなか見事でした。
手前が太平洋の海霧で、奥の陸地側に向かってゆるやかな風が吹いてます。霧(層雲)が一度消えてから積雲に変わってるのがよく分かるかと。※図中の日本海は太平洋の間違い!あとで直します…

この変化は山でもよく見るパターンで、夜間の放射冷却で霧が発生→朝から温められる&混ぜられることによって霧が消える→昼には対流が発達して積雲として現れる、という変化になります。

ちなみに、上の図において点線で表現した〝雲は無いけど水蒸気がモヤモヤしてる層〟のことを気象学では接地境界層と呼び、水蒸気やチリが多くて見通しもイマイチ。山ヤ的に表現するなら〝下界の空気〟といったところ。
この接地境界層の上まで登ることができれば、スッキリした〝山の空気〟の中で遠くまで景色が拝めることになります。

接地境界層は夜に薄くなり、日中は気温の上昇と共に次第に厚くなる(上空に広がるか)という変化が天気のいい日の定番。スッキリした景色を拝みたかったらできるだけ早い時間に登る必要がある、というのもこの変化によるもの。
特に上空の空気がスッキリしてるときはその差は歴然。こんなモヤモヤとスッキリの境界を目にしてる人も多いかと。

ただ、残念ながらこれから夏にかけては上空の空気もモヤモヤした状態になりやすい季節。その辺の話は以前に書いた春の高気圧を参考にどうぞ。

落書きノススメ(850hPa相当温位の予想図編)

12月末だというのに南からゴッソリ暖気を運んで季節はずれの暖かさをもたらす今回の低気圧。
全国的に悪天だけど、ぼくとしては北海道の大雪が気になるところ。
雨なら流れておしまいだけど、北海道じゃギリギリ雪になるくらいの気温になりそうで、もっさもっさ積もる予感。

どんな予想でどんな影響がってところは全般気象情報地方気象情報が出てるし、テレビの天気予報でも結構とりあげられてるので細かいことは今回ナシで。
そのかわり、とある高層天気図(の予想図)を使って低気圧をもっと楽しもうって話です。

今回使うのは高層天気図のひとつ「FXJP854」。
850hPa高度面(だいたい上空1500m)における相当温位の予想を、12時間ごとに48時間後まで表す予想天気図です。
※相当温位:気温と湿り気をあらわす指数、暖かくて湿ってるほど値が大きい

これは数値予報天気図@気象庁でも見れるけど、専門天気図@HBC地球気@日本気象株式会社Sunny Spotの方が使い勝手いいです。

そして、2016/12/21夜のFXJP854がこれ。
左上が12/22朝、右上が12/22夜、左下が12/23朝、右下が12/23夜の予想図です。fxjp854_20161221-12

昔からある無線FAX仕様の資料なので全て白黒。
古めかしい感じもするけど、天気予報に関わる者にとっては基本の資料となるのは今でも変わらず。
気象予報士試験でもおなじみの資料です。

でも、これを眺めるだけじゃさすがに味気ないので色鉛筆を用意して落書きしちゃいましょう。

FXJP854の相当温位は3K(ケルビン)ごとに細い線、15Kごとに太い線で書かれてるので、
とりあえず太い線に狙いをつけて4つある図の全てで同じ値の線を同じ色で塗ってみます。(今回は330Kを赤、315Kを黄、300Kを水色に)
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こうすると、12/22夜にかけて南から暖かく湿った空気がググッと北上した後、12/23には一気に北から冷たく乾いた空気に入れ替わる姿が見えてくる。

さらに、とっても役立つ参考資料を追加。
それは気象庁が民間気象事業者に対して「気象庁はこんな理由でこんな天気図にして、こんなことに注目して欲しいんです」を示している“短期予報解説資料”。
この資料も地球気@日本気象株式会社Sunny Spotで見る事ができて、その中でも注目するのは12時間ごとの低気圧や前線の動きを説明した“主要じょう乱解説図”。
予想天気図と合わせて眺めると、どの低気圧がどう動いて変わっていくのかがとってもわかりやすくなります。
※あくまでも「気象庁は今こんなストーリーで考えてますよ」の資料であって、これが「正解」というわけではないです

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主要じょう乱解説図でここに低気圧や前線があるのか~、を確認したらFXJP854に戻って低気圧や前線も落書きしちゃいましょう。
(今回は低気圧の中心をピンク印、前線を緑線)

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さらにさらに。
風の向きと強さを表す矢羽にそって、空気の流れをエイヤと記入。
「この空気はこっちから流れてきてるのか~」を妄想しながらハッキリいって適当です。
あえてポイントを挙げるなら、風が強いところと、南北への風の流れ(暖気移流と寒気移流)は積極的に書くくらい。(青矢印)
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ここまで落書きが進むと、このFXJP854という1枚の資料に天気のストーリーが詰め込まれた感じが出てくるかなと。
高層天気図(予想)にも色々あるけど、48時間後までのストーリーが1枚に収まってるのでぼくはFXJP854が結構好きだったりします。

ここで改めて、地上天気図(実況&予想)を確認。
落書きを通して、天気図に描かれたストーリーが少しでも感じやすくなってれば嬉しいなと。
紙1枚で済む作業なので、メリハリのある天気の時にはよかったら試してみてください。

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オホーツク海高気圧と山の天気

今日の天気図の見所は台風…ではなく、オホーツク海に中心をもつ高気圧。
三陸から関東に向って高気圧の足が南にのびてます。
“オホーツク海高気圧”は春から夏にかけて現れる、その名の通りオホーツク海に中心を持つ高気圧で、特徴はひんやり&しっとり。
オホーツク海高気圧が張り出す領域は低くてペッタリした雲に覆われ、気温も上がらず、時にはシトシト雨も。
こんな天気をもたらすオホーツク海高気圧からの北~東よりの風を、東北地方では「やませ」、関東では北東気流なんて呼んだりします。

そしてもうひとつ大きな特徴が、背が低い(厚みが薄い)ということ。
関東に流れ込んでくるときのヒンヤリした空気の厚みはせいぜい2kmくらい。
関東平野の西側の山を越えることはできず、関東はヒンヤリ曇り空、長野や山梨はアツアツ好天と対照的な天気になります。
今日も見事にそんな感じ。
ame-tem_20160705-1200ame-sun_20160705-1200vis_20160705-1200日本海にある前線の雲が混じって分かりにくいけど、赤線で囲ったくらいがオホーツク海高気圧による下層雲

登山にとってこの厚さ2kmというのはなんとも微妙な数字で、関東平野周りの山の標高を見ると、武尊山2158m、谷川岳1977m、赤城山1828m、榛名山1449m、甲武信ヶ岳2475m、丹沢山1567m。
1000台半ばの山じゃまず雲の下か中だけど、武尊山や谷川岳といった2000m級だとうまくいけば雲の上に出て壮大な雲海を眺めれるかも?甲武信ヶ岳ならまず大丈夫そう。そんな感じです。

今回は北東気流が比較的厚みがありそうな上に前線の雲も混じるのであまりいい条件じゃないけど
・関東が北海道~三陸沖に中心を持つ高気圧の縁になる
・関東の天気予報は曇り&気温低め、長野や山梨の予報は晴れ&気温高め
の条件が揃う日は、登山口がモヤモヤでも雲の上に抜ける期待を胸に登ってみてください。

ちなみに、そうやって登った2015/10/23の谷川岳。
山頂は惜しくもガスの中だったけど、新潟側(土樽側)に下ると滝雲を見ることができたんでまあ納得、そんな結果でした。
spas_20151023-0920151023tanigawa-2左が関東側、右が新潟側
20151023tanigawa-1茂倉新道から振り返った谷川岳。関東側の雲が新潟側にぎりぎりあふれ出てるのがよくわかる景色。

登る日の気象条件からどんな景色が見れるか予想する、というのも山の楽しみ方のひとつかと。
プランニングの際は、登山地図と一緒に天気図もお供にどうぞ。