2つの現地調査報告から見えるもの

3月27日の那須雪崩事故。

日本雪崩ネットワーク(以下、JAN JapanAvalancheNetworkの略)が行った現地調査の報告に続き、防災科学技術研究所(以下、防災科研)が行った現地調査の報告が今日(31日)公開されました。

さらっと積雪について見たい人は概要版を。
今回の事故を総合的に眺めるには気象現象の推移も載ってる詳細版のほうがオススメです。

あとはJANが30日に公開した、日本における近年(1991-2015)の雪崩死亡事故の資料も必読の品。
死者数、年齢、所属、活動別などの各種データが整理されてます。
メディアで叩かれることが多いのはスノーボーダーだけど、死者数で見ると 登山者>山スキー>>山スノーボード なのは意外と感じる人も多いんじゃないかなと。

話を現地調査に戻すけど、やってることそのものについてはJANと防災科研、どちらも同じような感じ。積雪構造を調べて雪崩が起きた仕組みを解明しようって取り組みです。

ただ、両者の雪崩防災に対するスタンスはちょっと違う。
それぞれのスタンスが見える言葉を上で紹介した資料から引き抜いてみます。

【JAN:雪崩死亡事故資料より】
雪崩安全に最も重要なのは、雪を調べることではなく、地形を賢く使うこと。
大きな事故は「雪崩地形と行動マネジメント」に問題を残す。
※別々に記載されてる2文です

【防災科研:現地調査報告詳細版より】
雪崩がどこで発生するのかを広域に把握する手法は確立されていないため、山岳域も含めた全国的な雪崩ハザードマップを整備することが必要である。

JANと防災科研がそれぞれの切り口で雪崩による被害を減らそうとしてることがよくわかります。JANは自助的、防災科研は公助的な雰囲気です。

雪崩に限らず防災を考えるにはどちらも大事だけど、少なくとも自分の意思で山に入っていく人は自分の判断と行動でリスクを避けるって意識は絶対に無くしちゃいけない。
災害が起きるとたびたび「(行政から)避難しろと言われなかった」なんて声も聞かれたりしますが、自然のド真ん中で頼れるのは自分自身だけなので。

最後に蛇足。
気象屋として防災科研の報告書に少しだけ補足を。

気になったのが、今回の大雪をアメダスデータから過去3シーズン&平年値と比べて、3月としては突出した大雪でしたって記載。

那須みたいに太平洋側に位置するエリアでは、ドカ雪になるのは冬型より南岸低気圧による事例の方が多い。
そして、毎年それなりに安定して雪を降らせる冬型とは違い、南岸低気圧による雪はシーズンごとのムラがとても大きい。

こういったムラのある現象、特にたまにしか起きないような現象は
『「0、1、0、10、1、0」の平均は2。10は平均の5倍も凄いです!』
といった感じになってしまい、平年値と比べることにあまり意味はありません。
これに似たパターンとして、(ゼロに近い)基準の何倍の○○が!と言って煽るのも一部の方々がよく使う手です…。

確かにアメダス那須高原の降雪ランキング(1989年~)でも8位に入るほどの値だったけど、もともとムラの大きい現象だってことは知っておいてください。
最近だと2010/4/17に38cmって記録もあります。

また、アメダス那須高原の標高は約750mで、事故現場との標高差は500m以上。これだけ標高差があるとアメダスでは大雨、山の上では大雪、なんてことも十分ありえます。
今回の大雪がどのくらいの頻度で起こるかって問いはなかなか難しいとこだけど、少なくとも山で出会って大騒ぎするような物ではなかったんじゃないかなと。


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