雪山ユーザーとなだれ注意報

那須の雪崩事故を受けての各所の動き。今回もお決まりの臭い物にはフタをしろ的な対応。予想通りとはいえ、登山者として見る限りなんとも変な方向に動いてる物が目立ちます…。

高校生を雪山から遠ざけたら確かに高校生の雪山事故は起きないかもしれない。そのかわり、正しく雪山を理解してない不完全な大学生登山者を量産することにならないか。

今本当に必要なのは、自然から離れることなんかじゃない。自然との上手な付き合い方をどう教えていくか。そして今回はなぜうまく伝えてあげれなかったを振り返ることじゃないでしょうか…。

そしてここにも見逃せない微妙な動きがひとつ。

「なだれ注意報」が発表されるなど、雪崩が発生するおそれがある場合には、住民や関係機関に伝達し迅速に注意を呼びかけることなどを求める通知を各都道府県に29日付けで出したことが報告され、再発防止策を徹底することを確認しました。

NHKニュースより

うーん…。

こういった動きはどうしようもないと諦めるとして、とりあえず個々の雪山好きの人にだけは伝えておきたい。
気象庁が発表する「なだれ注意報」について大事な2つのことを。

まず1つ。

なだれ注意報に限らず、気象庁が発表する注意報&警報が対象とするのは『人が日常的に活動するエリア』ってのが基本。スキー場を越えた先の山岳エリアのように『限られた人が活動するエリア』は対象外です。
このあたりを含めてしまうと山のまわりなんて常に強風注意報や濃霧注意報が出しっぱなしに。一般的な生活圏が対象、と表現すべきでしょうか。
街を離れ、自然のド真ん中に立ち入る登山やバックカントリーでは自分で危険性を判断するのが大前提です。

そして2つめ。

気象庁のなだれ注意報の基準は、だいたいどこの県でも
①まとまった雪が降ったとき
②雪が残ってて溶けやすいとき
の2本柱になってます。
たとえば栃木県の基準
①24時間降雪量が30cm以上
②積雪40cm以上で最高気温6度以上
の2つ。
前者が山で特に気になる降雪直後の表層雪崩、後者が融雪期の全層雪崩を意識した基準です。

そもそも雪は正確な積雪/降雪量の把握が難しい。さらには風や地形による局地性、気温や日射による変質、長時間にわたり積雪の中に潜む弱層などなど、正確に雪崩の危険性を把握するのは現地にいても難しい作業。
正直なとこ、今の気象庁の表層雪崩に対するなだれ注意報の運用は「まとまった雪が降ったらある程度の期間出す」程度のもの。まとまった雪の直後で危ないんだな、程度の参考にはなるけど、山における個々の行動判断の根拠にはなり得ません。

極論をいえば、斜面に雪がある時点で雪崩のリスクがゼロにはならない。その中でどのくらい危ないのか、どこを通ればより安全なのか、あるいは引き返すべきなのか。そういった細かな判断が必要なのが雪山です。

また、春になると峠では融雪期のなだれ注意報が長時間出続ける中で、標高の高い山ではまだまだ雪が降る季節、という状態にも。

こうした2つの理由から、雪崩事故における定番の質問(批判)である「なだれ注意報が出てたのになんで登ったか」は全くの的外れ。
よく分かってない人がトンチンカンなこと言ってるなぁと聞き流しちゃってください。

今回の事例ではビーコンを初めとした雪山装備がなかったのも問題ではあるけど、雪崩のリスク回避を徹底した講習会であればまだ納得できる話。

「目の前に一晩で積もった大量の雪という明確なリスクがあるのに、なぜ雪崩を考慮した判断&行動がとれなかったか」ってのが一番の問題です。

まだまだ高い山では冬と春の境目な季節。
GWになったって雪が降る世界です。
油断することなく、事故のない春山シーズンを楽しみましょ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です