山岳救助に頼る側として一言 ~積丹岳判決をうけて~

もやもやしか出てこないこのニュース。
≪警察の救助活動中に遭難男性死亡 北海道に賠償命令確定@NHK≫

遭難事故が起きたのはもうかなり前の2009/1/31。
古い事例なのでうまくまとまった報道資料が見当たらないけど下記のサイトを参考に概要を書くとこんな事例。
≪積丹岳遭難事故裁判を追う@りんどう山の会≫
≪積丹岳での救助失敗事故@王子のきつね OnLine≫
≪遭難者の救助活動における過失@中央大学法学部の判例研究≫

2009/1/31、札幌の男性が3人パーティーで積丹岳でバックカントリー(スノーボード)。
他の2人とはぐれて道に迷い、天候も悪化。山頂付近でビパーグ。
翌日(2/1)早朝から道警&消防が捜索。昼頃、道警の山岳救助隊が発見。
救助活動中に雪庇を踏み抜いて救助隊・遭難者共に滑落。
遭難者をストレッチャー(そり)に載せて登り返す中、搬送者交代のため近くのハイマツにロープで固定したところ、ハイマツが折れて(もしくはロープが外れて?)遭難者が再び滑落。
悪天候のため救助活動を断念。
翌朝(2/2)の捜索で発見され、死亡を確認(要因は凍死)。

ちなみに積丹岳がどこかというとこんなとこ。
都市部から離れた積丹半島の真ん中。
雪が豊富で景色がいいけど、日本海に突き出た半島の山とあって冬型になれば環境は劣悪。そんな山です。map_shakotandake

そして、遭難した2009/1/31と救助活動が行われた2/1の天気図がこちら。(日々の天気図@気象庁より)
hibiten_20090131-0201
本州の南から低気圧が発達しながらぐいっと北上して、しっかりとした冬型気圧配置に替わりつつある状況。
このことはしっかり予報としても出てたので『この天気で積丹岳の選択はギリギリセーフだとしても、パーティーとはぐれて遭難とか何してるんだ…』というのが素直な感想だけど、とりあえず置いときます。

裁判で争われたのは、救助にあたった道警の救助失敗が過失にあたるかどうか。
上告棄却して二審が確定ってことは「救助に失敗した道警に明らかな過失があった」って結論に至ったってこと。

救助隊自身もリスクの真っ只中に入り、劣悪な環境化におけるギリギリの行動と判断。
それに対して「雪庇を踏み抜くのは素人」「コンパス使えば防げたはず」「確実な確保をするのが当然」といった訴訟を起こした原告(両親)側の主張や判決が本当に残念でならない。

そして何より自分が嫌だったのは、今回の1こ前、札幌地裁での判決後の両親のコメント(らしい)。
※上記のブログ内でしかソース確認できてないです。ご注意を。

「警察には、どうしたら頼りがいのある救助隊になれるのか考えてもらい、二度と息子のような犠牲を出さないでほしい」

言うまでも無く、登山者にとって救助隊は最後の手段にして最も頼りになる存在。
どんな結果になったのであれ、ギリギリの状況下で救助活動にあたってくれた人にかける言葉では絶対にないはず。
遺族である両親と警察の間でどんなやりとりがあって裁判にまでもつれ込んだのかは分かんないけど、このコメントだけはやめて欲しかった。

もし自分が遭難者となり、同じような状況&結末になったとしたら…無念の気持ちはあっても『助けにきてくれてありがとう』と伝えたい。

もし自分の子供が遭難者となり、同じような状況&結末になったとしたら。
さらに色々な思いはあるだろうけど『助けにいってくれてありがとう。これからも多くの人を助けてあげてください。』と伝えたい。

まあ、もし自分が山に縁の無い生活をしてて子供が同じような状況&結末になったら、を想像すると両親側の気持ちも分からないでもないですが・・・。

こんな判決がありえるなら際どい状況での救助活動そのものを見送るしか対策がないし、一般登山者がたまたま遭遇した遭難者の救助とか怖くて手が出せなくなりそう。

そんなもやもやばかりが溜まる裁判&判決でした。

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