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無謀な登山者はなぜ増える? ※答えは持ってません

今回のブログを書くきっかけになったのは、岳沢小屋のスタッフブログ。

まだまだ厳しい状況にある残雪期の穂高エリアにやってくる場違いな登山者への、やりようのない怒りを感じる現場の臨場感あふれるブログです。
まずは一読をどうぞ。
5月13日、最近ひどくレベルの低い登山者が多い件について@岳沢小屋スタッフブログ

山小屋関係のブログを眺めてるとトンデモ登山者の実例には事欠かず、時々ニュースを騒がせてるのもご存知の通り。
遭難関連の報道は憶測混じりのかなり適当なモノも混じってるようなんでそのまま信じるのはやめておきたいところ。

それでも、自分のレベルと山のレベルをまったく把握しないままにトラブルを起こしてる登山者がいっぱいいる、増えてる、ってのは間違いないんだろうと思います。

土いじり的に例えると…

  • トラブル起こした人をこってり搾るのは、伸びてきた雑草を抜くような対処療法的な対応。
  • 「こうなっちゃいかんよ、気をつけてよ」と呼びかけるのは除草剤。されど効果は実感できず、どんどん雑草が増える有り様。
  • 誰だ雑草増やしてるヤツは!なんとかしてくれ!!(怒)

そんな感じなのかなぁと。

本当に解決したいならトンデモ登山者が増える原因を正確に把握した上で、原因に合った効果的な対処が必要なはず。

じゃあ、トンデモ登山者が増えてる正確な原因って何?

  • 山ブームを盛り上げようといい面ばかり前面に出すテレビや雑誌、アウトドアメーカー、登山者自身。
  • 登山の多様化、細分化。
  • ツアー登山によるリスク管理無しでのハイレベル登山が可能に。自分はできる、との誤認。
  • 危ないものは見るな触るな近づくな、と自然の面白さと怖さを知らずに過ごす現代社会(教育含む)。
  • 山岳会などの人から教わる場の少なさ。
  • タクシー感覚のお気楽救助要請でも無料と認知が広がった。
  • 登山者の母数が増えて同じ比率でトンデモ登山者も増えただけ。
  • むしろネットでレベルの低い層の増加が加速?

色々思い浮かびはするけど、何がどれだけ影響してるのか少なくともぼくは知らない。
そして、あーじゃないか、こーじゃないかという記事は見ることがあるけど、しっかりした根拠とセットになってるのも見たことない。
たぶん、トラブルを起こしたトンデモ登山者に対してこってり絞る&叩くだけでなく、どうしてそうなったのかを逐一丁寧にデータ取って蓄積していかないとホントのところは分かんないんだろうなぁと。

そんなスッキリしない気持ちを持ってる中で読んだ冒頭のブログ。

トンデモ登山者の相手をさせられる現場の大変さは本当に大変だと思う。

でも…

数年前、「岳」(漫画のほう)が流行ったときに、安易に救助要請する登山者の話しが何度も書かれていましたが、きっとそれでも読んで、山で困れば110番とでも思っていたんでしょうね。あのマンガには本当に困ります、漫画としてフィクションの話しなら問題はないのですが、設定が槍穂を中心に妙にリアル過ぎて、ああいう話しがリアルな世界だと思う人間が多くなってしまいました。

ちょ、おまっ・・・「岳」のせいにするなよーー!!

どうしたら『きっとそれ(岳)でも読んで、山で困れば110番とでも思っていたんでしょうね。』で片づける気になった??
いや、実際現場じゃ遭難騒ぎ起こした人の多くが『「岳」読んでここに来ました。救助呼びました。』って言ってる可能性も全くないわけじゃないけど…。

山が好きで、マンガも好きで、『岳 みんなの山』って作品も大好きなぼく。
※実写映画のことは聞かないよーに

いくら山の最前線にいる現場をもの凄く知ってる人の言葉とはいえ、どーしても素直に頷く気にはならない。
安易な登山や救助を誘うより、そんなことすんなよ!ってメッセージを伝えてる作品だと思うんだけどなぁ。

この人はマンガ嫌いなのかな?
よっぽど「岳」で嫌な思いをしてきたのかな?
他の山岳関係の人はどう思ってるんだろ?
(根拠なく)結構好意的にとらえてる人が多いと思ってたけど実は違うのかなぁ。

前半は山の遭難のことを考えてたのに、こっちばっかり気になりながらブログを読み終えてしまいましたw

いちよ書いとくけど、別にこの人を批判する気も否定する気もないです。
どんな経験と過程を経てそんな考えを持つに至ったのか。
そこが気になっただけ。

あと、そもそもの「無謀な登山者はなぜ増える?」も答えが知りたい。
誰かデータから本格的に取り組んでる研究者さんいないかな。

防寒テムレスのススメ

家庭用・産業用手袋のメーカーであるSHOWAが製造してる防寒テムレス
ぱっと見ただのゴム手だけど、なんと透湿性も兼ね備えた防水手袋。
雪山で遊ぶのにもピッタリとの噂を聞いて試しにスキー場に持ってきました。

わかってたけど見た目は無骨なゴム手そのもの。
見事な青々しさでウェアの色との相性を考える必要ありw

そして肝心の使い心地は…確かに暖かい。そして蒸れない!!

冬用グローブとしては比較的、というよりかなり薄手。
それでも中のボアと濡れ知らずな表面コーティングのおかげで全然冷たくない。
マイナス5℃よりちょいと低め(たぶん)なゲレンデトップで長居しても、ゲレンデ下部のキッズパークで雪を触りまくって遊んでも快適そのもの。
インナーグローブ併用すればかなり寒いとこまでいけそう。

そして薄手なおかげで手作業の効率がめっちゃいい!!
チビすけのスキーの脱着やカメラ操作も普段の冬用グローブに比べてかなり楽。

弱点といえば、ただ広がってる袖口は絞りたい気もするから適当に工作する必要あり。

もし失敗したとしてもやり直せばいいさ。
だって…

2000円でたっぷりおつりがくるお値段だもの!!

まだ1回使っただけで耐久性は未知数だけど、元々作業用の手袋なんだからそこはまず問題ないはず。
少なくとも今の時点でぼくの予備グローブの座はコイツに決まりました。

ググれば他の人の使用レポートもたくさん見つかるけど、公式サイトでも白馬エリアのツアーガイド、BLUECLIFFの滝本倫生さんが防寒テムレスの宣伝してらっしゃったw
国際山岳ガイドに聞くバックカントリースキーの面白さ@SHOWA

BLUECLIFFはぼくが冬山に初めて踏み入ったときにお世話になったガイドさん。
もう10年以上経ったという事実がちと怖い…。
秋&春の立山、また行きたいなぁ。

こんな感じでプロのガイドも御用達な防寒テムレス。
一度試してみてはいかがでしょ。

ただ、非雪国じゃ防寒テムレスの扱いは少ないみたい。
わが埼玉のでっかいホームセンターでも置いてなかったし。
そんな時は近くで普通のテムレスを試着してサイズ感を確かめてから防寒テムレスをぽちっと購入するのがオススメかと。
防寒テムレスだけでも十分暖かい気がするけど、中にインナーグローブ付けるなら一回り大きなサイズを選ぶのもお忘れなく。
ぼくはLでぴったり、LLでインナーグローブ付けてちょうどいいくらいでした。

秋の日はつるべ落とし ※特に山の中!

10月になって高山帯は紅葉の真っ盛り。この連休も各地の山好きが秋を満喫してるみたいですね。
秋の青空と鮮やかな紅葉のコラボ、これぞ四季のある日本の山の特権!
そんな景色を拝めた人が本当にうらやましい!
ぼくはというと、なんでこんな天気の日に仕事をしてるんだろうと悲しくなる時間を過ごしてます・・・。

そんな愚痴はさておいて。

秋分の日を過ぎて、日の出の遅さと日没の早さを日々実感するこの季節。
平地はもちろん、山でも下山時に思った以上の暗さにびっくりする事もあるかと。

日の出の遅さと日没の早さ、そして昼時間の短さはテレビ等でもよく取り上げられて目にすることは多いけど、山に登る上でもうひとつ重要な要素が。
それは、太陽を見上げる角度である“太陽高度”。

夏は真上(に近い角度)からジリジリと、秋から冬にかけてどんどん低い角度になって弱々しい日差しになるのはよく実感してると思います。
この低い太陽角度が山の中でどんな影響があるか。

まずは平地での変化を確認。
太陽高度@KEISANから長野県大町の8~12月の各月1日の太陽の方位角&高度をグラフにしたのがこちら。 
太陽高度0度が地表面にあたり、薄茶エリアから上に出たところが日の出、入ったところが日の入りになります。

夏には早い時間から出て高くまで昇り、遅い時間に沈む。季節が進むにつれて日の出は遅くなり、高度も低くなり、早い時間に沈む。
当たり前のことではあるけど、夏から冬にかけて太陽の動きは劇的に変化していきます。

そして、ここで自分のいる場所を再確認。

上のグラフはあくまでも平地で、地平線が広がる状況での変化ってこと。
山の中にいるとき、山の近くにいるときに水平線が見渡せるなんてことはそうそうない。太陽が山の向こう側にしずむなんてことはよくあるし、谷沿いの登山道を歩くときなんて本当に空が狭くなります。

それじゃ、例えば山の稜線が見上げて20度の角度にど~んと広がってるとどうなるかがコチラ。
もちろん1日中太陽のある方角に山があるなんてことはないけど、ある時間に太陽がどのくらい稜線から出てるかをイメージしてもらえばいいかと。

長々と上から照らされる夏にくらべ、劇的に太陽を拝める時間が短くなる秋~冬。
太陽高度が低いとそれだけ山に隠れる影響が大きく、平地以上にがっつりと昼の時間が削られることがわかります。
しかも、紅葉の季節ってことは、まだ木々には葉っぱがいっぱい付いてるってこと。
早々に山影に立ち去る太陽と合わさって、秋の夕方の山道は本当に暗くなります。

こまめな地図の確認で道に迷わないように心がけるのはもちろん、日帰りでもヘッドライトと防寒着を1枚余分に持って行くのはお忘れなく。帽子や手袋もザックに押し込んだってそんなに場所はとりません。

最悪暗くなって道に迷ったとしたら、よく分からないまま歩き回るのは深刻さを増やすだけ。腹を括って一晩ビパークしちゃって、明るくなってからルートを探す方が安全です。
1~2食分の予備食、飲み物、防寒着、レスキューシートくらいの装備があって雨さえ降らなけりゃ1晩でどうこうなるのはまず無いはずなので。

レスキューシートは安くてかさばらないけど効果は絶大な非常グッズ。使い捨てと割り切って安いのを買っとくのもいいし、少しだけ高くなるけど繰り返し使えるタイプにしとくとくるまりながら景色をながめたり、シュラフの上にかけて防寒力アップさせたりと色々役に立つんでオススメです。


そんなに収納サイズは変わらないから大は小を兼ねる方式で2人用もありかと。

火山との付き合い方

ちょっと前(4/25)のネタだけど、内閣府が火山への登山の注意点を動画にまとめたみたい。
それが公開されてるのがこちらのサイト。
7分半でコンパクトにまとまってるんでぜひ1度どうぞ。
火山防災に関する普及啓発映像資料@内閣府

いい感じにまとまってるけど実際にどこに関連する情報があるかってのは詳しく解説してなかったんで、そこだけ少し補足しようと思います。

まずは狙ってる山が火山かどうかを知らなきゃ始まらない。

身も蓋もないけど、木々が生えてなくて、ガスでも出てるようなら文句ナシの火山。
そんなの当たり前だと言いたくなるけど「噴火しない火山はない」ってことも自分に言い聞かせとくのもお忘れなく。
近年の噴火記録なんかはGoogleで検索かけてWikipediaで調べるのが一番手っ取り早いです。

山好きな人ならこの本なんかもオススメ。


何がいいかって、一般的な山のガイド本は麓から眺めた山の姿&地形図ってのが定番。でも、この本は〝火山図鑑〟というだけあって火口周りの空撮写真集。違う切り口の山のガイド本としても使えちゃう。
当然ながら火山な山しか載ってないけど…。

もちろん基本的な火山の知識も載ってるからまさしく一石二鳥。こんな形してたのか、登山道こうなってたのか~と新しい発見もあると思うんでぜひ見つけたら眺めてみてください。

続いて第2ステップ

内閣府動画でも紹介されてた火山登山者向けの情報提供ページ@気象庁から火山の最近の様子をチェック。

噴火警報(噴火警戒レベル2以上)が発表されてると連動して入山規制がかかってるはずだからそもそも登ろうとしないだろうけど、問題なのは「警報は出てないけど最近ちょっと元気」な状態。

ザックリした目安として、火山解説情報(臨時)という情報が出てると「ちょっと気になるんで急いでお知らせしときますね」って意味なんで危険察知スイッチを入れといた方がいいです。

火山に対して様々な観測機器で顔色悪くない?熱ない?ちょっと呼吸荒いけど…みたいなことをして、本格的に体調を崩す予兆を捉えようってのが噴火予知。
でも御嶽山みたいに火山としては「ちょっとしたくしゃみ」程度の噴火でも人にとってはとんでもない脅威。
「は…は…はくしゅっ!」の「は…は…」を捉えるのは容易じゃないです。
いまの技術じゃ噴火をキッチリ予測できて事前に噴火警戒レベルが上がってる、って状況は期待しすぎない方がいいだろうなと。(※表現は自重)

もちろん、こんなことばっか言ってゼロリスクを求めたらたらどこの山にも登れない。
山に登る以上、火山に限らずその山にどんなリスクがあるから事前に調べて、登りながら頭の片隅でイメージしときましょ、って話でした。

無責任に人に勧めるわけにもいかないけど、ぼくは火山への登山はかなり好き。
地球、生きてるぞ~!!って力に溢れてる場所なんで。
あわせて、下山後の温泉という偉大な火山の恵みを調べるのもお忘れなく♪

情報を提供すること、利用すること

気象についての防災情報を提供する立場にいる一人として
『どんな情報を・いつ・どのように提供すると活用してもらえるのか』
ってことを考える機会は多くある。
なるべく情報を一方的に押し付けにならないようにって想いはあるけど、正直なところ現状じゃ大量の情報を流してユーザーが消化不良になってるんじゃないかぁと思うこともしばしば。
(このくらいの表現で止めときます。あと、もちろん個人の感想です。)

そんな中、今回強烈に刺さった言葉が那須雪崩事故/6 情報提供と共に教育を@毎日新聞にありました。
以下、日本雪崩ネットワークの理事、出川あずささんよるコメントからの抜粋です。

雪崩情報で大事なのは、情報提供と同時に、ユーザーに雪崩教育も行っていくことです。コンディションを伝えた上で、行動は各自に判断させるのが原則で、欧米では必ずこれがセットになっています。情報で人の行動をコントロールしようとすると、必ず強めに発信したくなり、ユーザーはやがて信用しなくなっていきます。

そう、そうなんだよ!那須雪崩事故の各種報道やコメントを見てて感じる違和感はまさにここ!!

今回一番問題だと思うのはユーザー(指導者含む)への教育をどう進めていくかってことで、情報によるコントロールだけが先走ると「危ないから行くな」にたどり着いてしまう。
雪山に限らず、どんなリスクがあるのか常に考えながら行動することが山じゃ重要なのに・・・。

ちょうど今行われてる立山エリアの山岳スキー情報も情報によるコントロールに重点を置いたタイプに見えてしまう。

富山県と富山県山岳遭難対策協議会の連名による“なだれ情報”の危険度は4段階。

なだれに注意 ⇒ 危険な状態 ⇒ 非常に危険な状態

そして、『行動の自粛を要請』

最初見たときはなんて表現だとホントにびっくりした。
そして実際に表示されてたのが昨年(2016年)の11月末。

前日に東工大の学生パーティーが雪崩に遭遇した直後とはいえ、富山県の名で『行動の自粛を要請』とはなかなか強烈。明らかな雪崩地形に踏み込んでしまっての事故ってのが分かったのは後になってから、ってのを割り引いても凄い表現だなぁと。
「危ないから行くな」を行政的な表現にするとこうなる、そんな感じです。
このときの雪崩事故は日本雪崩ネットワークによる現地調査報告を参考にどうぞ。

こんな感じで雪山の話として強く共感した出川さんのコメント。
でも、ぼくとしてはそれだけじゃすまなかった。

出川さんのコメントで「雪崩」を「防災」に入れ替えるとこんな文章ができあがります。

【防災情報で大事なのは、情報提供と同時に、ユーザーに防災教育も行っていくことです。 ~中略~ 情報で人の行動をコントロールしようとすると、必ず強めに発信したくなり、ユーザーはやがて信用しなくなっていきます。】

注意報、警報、記録的短時間大雨情報、土砂災害警戒情報、竜巻注意情報、そして特別警報。(その他略)

ぼくが働き始めたここ10年だけを見ても結構情報が増えたなぁと。
何かが起きる⇒強い表現の情報が増える、の繰り返しになってる気がする気象庁の防災情報。
もちろんユーザーのレベルアップの手助けをする重要性も組織として重々承知してるけど、なかなかそっちに力を入れる余裕が無くて歯痒い感じです。
このままじゃスーパー警報、スペシャル警報なんてもの冗談じゃなくなったりして。

そんなことを笑い話のまま話しながら防災情報の提供&教育に携わっていけたらなぁ、なんて考えさせられた言葉でした。

雪山ユーザーとなだれ注意報

那須の雪崩事故を受けての各所の動き。今回もお決まりの臭い物にはフタをしろ的な対応。予想通りとはいえ、登山者として見る限りなんとも変な方向に動いてる物が目立ちます…。

高校生を雪山から遠ざけたら確かに高校生の雪山事故は起きないかもしれない。そのかわり、正しく雪山を理解してない不完全な大学生登山者を量産することにならないか。

今本当に必要なのは、自然から離れることなんかじゃない。自然との上手な付き合い方をどう教えていくか。そして今回はなぜうまく伝えてあげれなかったを振り返ることじゃないでしょうか…。

そしてここにも見逃せない微妙な動きがひとつ。

「なだれ注意報」が発表されるなど、雪崩が発生するおそれがある場合には、住民や関係機関に伝達し迅速に注意を呼びかけることなどを求める通知を各都道府県に29日付けで出したことが報告され、再発防止策を徹底することを確認しました。

NHKニュースより

うーん…。

こういった動きはどうしようもないと諦めるとして、とりあえず個々の雪山好きの人にだけは伝えておきたい。
気象庁が発表する「なだれ注意報」について大事な2つのことを。

まず1つ。

なだれ注意報に限らず、気象庁が発表する注意報&警報が対象とするのは『人が日常的に活動するエリア』ってのが基本。スキー場を越えた先の山岳エリアのように『限られた人が活動するエリア』は対象外です。
このあたりを含めてしまうと山のまわりなんて常に強風注意報や濃霧注意報が出しっぱなしに。一般的な生活圏が対象、と表現すべきでしょうか。
街を離れ、自然のド真ん中に立ち入る登山やバックカントリーでは自分で危険性を判断するのが大前提です。

そして2つめ。

気象庁のなだれ注意報の基準は、だいたいどこの県でも
①まとまった雪が降ったとき
②雪が残ってて溶けやすいとき
の2本柱になってます。
たとえば栃木県の基準
①24時間降雪量が30cm以上
②積雪40cm以上で最高気温6度以上
の2つ。
前者が山で特に気になる降雪直後の表層雪崩、後者が融雪期の全層雪崩を意識した基準です。

そもそも雪は正確な積雪/降雪量の把握が難しい。さらには風や地形による局地性、気温や日射による変質、長時間にわたり積雪の中に潜む弱層などなど、正確に雪崩の危険性を把握するのは現地にいても難しい作業。
正直なとこ、今の気象庁の表層雪崩に対するなだれ注意報の運用は「まとまった雪が降ったらある程度の期間出す」程度のもの。まとまった雪の直後で危ないんだな、程度の参考にはなるけど、山における個々の行動判断の根拠にはなり得ません。

極論をいえば、斜面に雪がある時点で雪崩のリスクがゼロにはならない。その中でどのくらい危ないのか、どこを通ればより安全なのか、あるいは引き返すべきなのか。そういった細かな判断が必要なのが雪山です。

また、春になると峠では融雪期のなだれ注意報が長時間出続ける中で、標高の高い山ではまだまだ雪が降る季節、という状態にも。

こうした2つの理由から、雪崩事故における定番の質問(批判)である「なだれ注意報が出てたのになんで登ったか」は全くの的外れ。
よく分かってない人がトンチンカンなこと言ってるなぁと聞き流しちゃってください。

今回の事例ではビーコンを初めとした雪山装備がなかったのも問題ではあるけど、雪崩のリスク回避を徹底した講習会であればまだ納得できる話。

「目の前に一晩で積もった大量の雪という明確なリスクがあるのに、なぜ雪崩を考慮した判断&行動がとれなかったか」ってのが一番の問題です。

まだまだ高い山では冬と春の境目な季節。
GWになったって雪が降る世界です。
油断することなく、事故のない春山シーズンを楽しみましょ。

山岳救助に頼る側として一言 ~積丹岳判決をうけて~

もやもやしか出てこないこのニュース。
≪警察の救助活動中に遭難男性死亡 北海道に賠償命令確定@NHK≫

遭難事故が起きたのはもうかなり前の2009/1/31。
古い事例なのでうまくまとまった報道資料が見当たらないけど下記のサイトを参考に概要を書くとこんな事例。
≪積丹岳遭難事故裁判を追う@りんどう山の会≫
≪積丹岳での救助失敗事故@王子のきつね OnLine≫
≪遭難者の救助活動における過失@中央大学法学部の判例研究≫

2009/1/31、札幌の男性が3人パーティーで積丹岳でバックカントリー(スノーボード)。
他の2人とはぐれて道に迷い、天候も悪化。山頂付近でビパーグ。
翌日(2/1)早朝から道警&消防が捜索。昼頃、道警の山岳救助隊が発見。
救助活動中に雪庇を踏み抜いて救助隊・遭難者共に滑落。
遭難者をストレッチャー(そり)に載せて登り返す中、搬送者交代のため近くのハイマツにロープで固定したところ、ハイマツが折れて(もしくはロープが外れて?)遭難者が再び滑落。
悪天候のため救助活動を断念。
翌朝(2/2)の捜索で発見され、死亡を確認(要因は凍死)。

ちなみに積丹岳がどこかというとこんなとこ。
都市部から離れた積丹半島の真ん中。
雪が豊富で景色がいいけど、日本海に突き出た半島の山とあって冬型になれば環境は劣悪。そんな山です。map_shakotandake

そして、遭難した2009/1/31と救助活動が行われた2/1の天気図がこちら。(日々の天気図@気象庁より)
hibiten_20090131-0201
本州の南から低気圧が発達しながらぐいっと北上して、しっかりとした冬型気圧配置に替わりつつある状況。
このことはしっかり予報としても出てたので『この天気で積丹岳の選択はギリギリセーフだとしても、パーティーとはぐれて遭難とか何してるんだ…』というのが素直な感想だけど、とりあえず置いときます。

裁判で争われたのは、救助にあたった道警の救助失敗が過失にあたるかどうか。
上告棄却して二審が確定ってことは「救助に失敗した道警に明らかな過失があった」って結論に至ったってこと。

救助隊自身もリスクの真っ只中に入り、劣悪な環境化におけるギリギリの行動と判断。
それに対して「雪庇を踏み抜くのは素人」「コンパス使えば防げたはず」「確実な確保をするのが当然」といった訴訟を起こした原告(両親)側の主張や判決が本当に残念でならない。

そして何より自分が嫌だったのは、今回の1こ前、札幌地裁での判決後の両親のコメント(らしい)。
※上記のブログ内でしかソース確認できてないです。ご注意を。

「警察には、どうしたら頼りがいのある救助隊になれるのか考えてもらい、二度と息子のような犠牲を出さないでほしい」

言うまでも無く、登山者にとって救助隊は最後の手段にして最も頼りになる存在。
どんな結果になったのであれ、ギリギリの状況下で救助活動にあたってくれた人にかける言葉では絶対にないはず。
遺族である両親と警察の間でどんなやりとりがあって裁判にまでもつれ込んだのかは分かんないけど、このコメントだけはやめて欲しかった。

もし自分が遭難者となり、同じような状況&結末になったとしたら…無念の気持ちはあっても『助けにきてくれてありがとう』と伝えたい。

もし自分の子供が遭難者となり、同じような状況&結末になったとしたら。
さらに色々な思いはあるだろうけど『助けにいってくれてありがとう。これからも多くの人を助けてあげてください。』と伝えたい。

まあ、もし自分が山に縁の無い生活をしてて子供が同じような状況&結末になったら、を想像すると両親側の気持ちも分からないでもないですが・・・。

こんな判決がありえるなら際どい状況での救助活動そのものを見送るしか対策がないし、一般登山者がたまたま遭遇した遭難者の救助とか怖くて手が出せなくなりそう。

そんなもやもやばかりが溜まる裁判&判決でした。

御嶽山噴火を振り返って

昨日の9月27日で、多くの被害者が出た御嶽山の噴火から丸2年。
現地では追悼式などが行われました。
<御嶽山噴火から2年 追悼式で遺族などが黙とう@NHKニュース>

2年たって御嶽山噴火の記憶が薄まってたとしたら、こんなとき振り返るにはwikipedeiaがやっぱり優秀。
<2014年の御嶽山噴火@wikipedia>

wikipediaはあくまでも事実を整理してるだけなので、登山者として考えるには遭遇した人の体験談がかかせません。
そこで、山岳ガイドである小川さゆりさんの体験記が長野県山岳協会サイトに掲載されているのでまだ読んだことがない人はぜひ。
<小川さん手記「御嶽山噴火に対する思い」@長野県山岳協会>

この小川さんを含め、多くの登山者と救助活動に携わった方の体験記をまとめたのが山と渓谷者の『ドキュメント御嶽山大噴火』として発行されてます。
噴火が起きた現場で何が起きてたかを知り、登山者として火山に向き合うには必読の書と思うのでまだ読んだことがない人はぜひ。
もし自分が現地にいたら、と想像しながら読むとゾッとします・・・。

続いて、NHKがまとめたサイト『御嶽山「噴火の証言」』は、地図上に証言と写真を配置。
ある登山者の足取りを追いかけたり、時系列で証言を進めたりできて、より具体的な行動をイメージしやすくなってます。
スマホからも見れるけど、地図と重ねて見れるパソコンからの閲覧がオススメです。
<御嶽山「噴火の証言」@NHK>

そして最後にもう一冊、御嶽山の噴火を考える上で外せないのが信濃毎日新聞社の『検証・御嶽山噴火 火山と生きる―9.27から何を学ぶか』。
登山者だけでなく、救助、自治体、地元住民、気象庁、火山学者、報道、そして家族のそれぞれの立場から見た御嶽山噴火をまとめた非常に読み応えのある本です。

登山者はもちろん、何らかの形で火山に縁のある人が読めば、火山についてより深く向きあえることは間違いなし。
ちょっとボリュームのある本ですが、ぜひ手にとってみてください。

もし、登ってる山が噴火したら。

もし、目の前で倒れた人がいたら。

もし、一緒に登ってる友人や家族が倒れたら。

どうするのが正解なのかは分からなくても、少し想像しておくだけで危険に対するセンサーがしっかり働いてくれるはずです。

登山をする前に、その山がどんな山なのか。
火山であれば、どんな状態にあるのか。
<火山登山者向けの情報提供ページ@気象庁>も参考に心の準備もお忘れなく。

ちなみに、現在の技術水準では精度よく噴火を予知することはできません。
特に御嶽山のような噴火としては小規模な噴火ならなおさらです。
どんな情報も「安全情報」ではなく、危険を知るための情報としてお使いください。

最後に。

一般的な報道では「噴火災害」と表現されてるけど、ぼくは「噴火事故」だと認識してます。
あくまでも人が自ら山の中に入り、たまたま噴火という自然現象に遭遇してしまった結果なので。
被害の規模は違えど、山の中で雷に遭った、と同種のものかと。

登山者でない人から見れば確かにこれは災害で、登山者を守らなきゃ!となるのは仕方ない。
でも、登山者として考えると、山が元々持つリスクのひとつとして認識し、自ら身を守る手段を考えておかなきゃいけないんだろうなと。
綺麗、楽しい、オススメ!だけが前面に出される傾向にある山ブームに対する自然からの警告だったような気もします。

自然の素晴らしさと同時に、自然の厳しさも忘れちゃいけない。

山好きの一人として、そして防災情報を発信する立場にある者の一人として。
犠牲者の冥福を祈ると共に、山文化のさらなる発展を願ってます。

黒部渓谷(下ノ廊下)で小規模地震多発

今年の8月から富山県東部で小規模地震が頻発してるというこちらのニュース。富山で小規模地震、1週に200回超@J-CASTニュース

地震としての規模はごく小さく、火山(弥陀ヶ原@立山)との関連性は無しということで地元でも扱いはかなり軽そう。
ローカル新聞社のニュースも共同通信全国版の垂れ流しでそれ以上の報道はしてないみたい。

ま、今の富山はダメダメすぎる市議会議員ネタ一色で仕方のないことかもしれませんが…。
上記J-CASTの記事で「市議会にお怒りか」なんてネタにされるのも納得するしかない。
富山LOVEなぼくとしてはこれだけ評判を落としてくれたジーサマ・オッサン方に怒りしか感じません。
今後、他の地方議会でも同じような話がいくらでも出てきそうな予感。

ってのはさておき、本題の地震ネタ。

「富山県東部で小規模地震多発」ならサラッと読み流してもいいけど、これが「黒部渓谷(下ノ廊下)で小規模地震多発」ってタイトルなら気になる登山者も多いはず。

この地震多発情報のソースは富山地方気象台が9/16と9/20に続けて発表した地震解説資料です。

要約すると
・2016/8月末から黒部湖の北側でごく小規模(M2以下)な地震が頻発
・近くにいる人は地震を感じることもあるかも(山の中すぎて、近くに震度計無し)
・弥陀ヶ原@立山の火山活動は変化なく、直接の関係なし
って内容。

解説資料には地図ものってるけど、わかりにくいのでgoogleマップヤマタイム@ヤマケイから周辺地形&地図を。quake-kurobe01

kurobe_map1kurobe_map2

地震が頻発してるのはちょうど十字峡の西側、雲切新道~仙人新道と下ノ廊下に囲まれたエリアです。
(解説資料の地図は尾根・谷が逆転して見えちゃうのはぼくだけ・・・?)

そして解説資料にある震源の深さの分布もチェック。
quake-kurobe02
右側が震源がどの深さに分布してるかの図だけど、震源はほとんどが2kmより浅く、深さ0kmのラインにも赤点がビッシリ。
気象庁の震源は海水面(標高0m)を基準に深さを決めているので、これは標高0mより上にも震源が広がってることを示してます。

このあたりは谷筋で標高1000m、稜線に上がれば2000m級。
震源の分布は稜線の走向と一緒ってわけでもないんで、“山(尾根)の内部”で起きた地震ではなく“地面の中”で起きた地震ってことでよさそう。

地震としてはごく小さいけど、震源が登山者の足元のごく浅いところなので近くにいると多少揺れを感じる可能性は十分にありそう。
このあとの地震活動がどうなるかは分からないけど、付近を通る際は揺れと落石には十分ご注意を。

あいにく地震や地質の専門家ではないんで、残念ながらこれ以上のことは分かりません。

ちなみにこのエリア、ぼくも昔一度だけ縦走しました。
黒部渓谷鉄道の欅平から入り、水平歩道~雲切新道~剱沢を通って、最後に剱岳&立山に登って室堂に下山。
切り立つ岸壁を削りとって作った水平歩道、ダム施設の中を通る“登山道”、剱岳が美しい(はずの)仙人池(ガスで見れず…)、そして剱沢の大雪渓と変化に富んで面白いルートでした。

宇奈月温泉に始まり、ルート上に阿曽原温泉、仙人温泉、地獄谷温泉と温泉がいっぱいあるのもこのルートの贅沢なとこ。
開いて間もない雲切新道の登りはかなりキツかったけど、それも地元小屋番の方の努力の結晶です。
雲切新道について@阿曽原温泉小屋

展望のいい稜線歩きってわけじゃないけど、黒部を味わうには面白いコースなので興味のある方は調べてみてください。
下りルートを歩く人の方が多いらしいけど、どうせなら登るルートのほうが楽しいんじゃないかなぁ。
ちなみに、水平歩道はこんな感じの緊張感ある道が続くので間違っても高いとこが苦手な人にはオススメしません!

「黒部では怪我をしない」とはよく言ったもんです・・・。
どー見ても落ちたら怪我じゃすまない絶壁歩きが続きます。
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山のお供、地図いろいろ

山に登るとき、どんな地図を持ってきますか?
ぼくは
①Webで拾ったハイキングマップ(手抜き)
Googleマップ(地形表示)(周囲も含めてざっくり地形把握)
③山と高原地図(ド定番)
ヤマタイム@ヤマケイオンライン(地形図+ルートならベスト?)
電子地形図25000オンライン(好きな範囲の地形図をPDF購入)
といったラインナップでそれぞれ単品だったり組み合わせたり。
普段は①~④、歩きながらしっかり地形を判断したい積雪期とかは⑤も、といった感じです。

そして、家で印刷orコンビニでコピーしてから100円ショップのB4クリアフィルムに入れれば簡易防水地図のできあがり。
ポケットにはこれを、ザックには山と高原地図を。
手軽に見れるコンパクトさ、耐久性、コストあたりを考えてこんなやり方に落ち着きました。

そして今回、上記のヤマタイムの地図がセブンイレブンのプリンタで「ヤマタイムマップ」として280円で購入&印刷できるようになったそうです。

コンビニで手軽に購入できる登山地図『ヤマタイムマップ』、 いよいよセブン‐イレブンで販売開始

ファミマでも買えるみたいだし、地図持ってくるの忘れたー!な時に役に立ちそうな予感。

そんなうっかりな時があれば思い出してみてください。
くれぐれも「まあいっか」で地図ナシのまま山に突入しないようにしましょ。

でも、最寄りのコンビニがローソンだったときは…己の不運を嘆くしかない??