気象についての防災情報を提供する立場にいる一人として
『どんな情報を・いつ・どのように提供すると活用してもらえるのか』
ってことを考える機会は多くある。
なるべく情報を一方的に押し付けにならないようにって想いはあるけど、正直なところ現状じゃ大量の情報を流してユーザーが消化不良になってるんじゃないかぁと思うこともしばしば。
(このくらいの表現で止めときます。あと、もちろん個人の感想です。)
そんな中、今回強烈に刺さった言葉が那須雪崩事故/6 情報提供と共に教育を@毎日新聞にありました。
以下、日本雪崩ネットワークの理事、出川あずささんよるコメントからの抜粋です。
雪崩情報で大事なのは、情報提供と同時に、ユーザーに雪崩教育も行っていくことです。コンディションを伝えた上で、行動は各自に判断させるのが原則で、欧米では必ずこれがセットになっています。情報で人の行動をコントロールしようとすると、必ず強めに発信したくなり、ユーザーはやがて信用しなくなっていきます。
そう、そうなんだよ!那須雪崩事故の各種報道やコメントを見てて感じる違和感はまさにここ!!
今回一番問題だと思うのはユーザー(指導者含む)への教育をどう進めていくかってことで、情報によるコントロールだけが先走ると「危ないから行くな」にたどり着いてしまう。
雪山に限らず、どんなリスクがあるのか常に考えながら行動することが山じゃ重要なのに・・・。
ちょうど今行われてる立山エリアの山岳スキー情報も情報によるコントロールに重点を置いたタイプに見えてしまう。
富山県と富山県山岳遭難対策協議会の連名による“なだれ情報”の危険度は4段階。
なだれに注意 ⇒ 危険な状態 ⇒ 非常に危険な状態
そして、『行動の自粛を要請』
最初見たときはなんて表現だとホントにびっくりした。
そして実際に表示されてたのが昨年(2016年)の11月末。
前日に東工大の学生パーティーが雪崩に遭遇した直後とはいえ、富山県の名で『行動の自粛を要請』とはなかなか強烈。明らかな雪崩地形に踏み込んでしまっての事故ってのが分かったのは後になってから、ってのを割り引いても凄い表現だなぁと。
「危ないから行くな」を行政的な表現にするとこうなる、そんな感じです。
このときの雪崩事故は日本雪崩ネットワークによる現地調査報告を参考にどうぞ。
こんな感じで雪山の話として強く共感した出川さんのコメント。
でも、ぼくとしてはそれだけじゃすまなかった。
出川さんのコメントで「雪崩」を「防災」に入れ替えるとこんな文章ができあがります。
【防災情報で大事なのは、情報提供と同時に、ユーザーに防災教育も行っていくことです。 ~中略~ 情報で人の行動をコントロールしようとすると、必ず強めに発信したくなり、ユーザーはやがて信用しなくなっていきます。】
注意報、警報、記録的短時間大雨情報、土砂災害警戒情報、竜巻注意情報、そして特別警報。(その他略)
ぼくが働き始めたここ10年だけを見ても結構情報が増えたなぁと。
何かが起きる⇒強い表現の情報が増える、の繰り返しになってる気がする気象庁の防災情報。
もちろんユーザーのレベルアップの手助けをする重要性も組織として重々承知してるけど、なかなかそっちに力を入れる余裕が無くて歯痒い感じです。
このままじゃスーパー警報、スペシャル警報なんてもの冗談じゃなくなったりして。
そんなことを笑い話のまま話しながら防災情報の提供&教育に携わっていけたらなぁ、なんて考えさせられた言葉でした。
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