おととい(6/16)は綺麗な寒気が襲来。どうなるかと思ったけどさすがに発達しました!なかなかの大きさの雹も降ったみたいで出会えた人にはちょっと羨ましかったり。
この不安定の話でもしようかと思ったけど、衛星画像好きとしては少し引っかかる記事を見つけてしまったので予定変更。
その引っかかる記事というのがコチラ↓
東京に白いリング状の雲が出現@片山由紀子(ウェザーマップ)
16日の昼過ぎに現れた、東京湾をグルッと囲むように広がってる雲についてこんな解説をしてます。
鹿島灘から吹く東風と東京湾や相模湾から吹く南よりの風がぶつかった所に雲が発生しています。東京では午前9時に北北東の風、その後、午前11時になると南南東の風に変わりました。そのころから白いリング状の雲ができ始めたと思われます。
半分あってるけど、半分足りない気がするので今回とりあげてみました。
まず最初にキーワードのひとつである〝海陸風〟のおさらい。
比熱&吸熱効率の差により、暖まりやすく冷えやすい陸地と、暖まりにくく冷えにくい海。この差によって昼間は海から陸地へ風が吹き、夜間は陸地から海へと風が吹くってやつです。
小学校の教科書あたりだと海岸近くだけを見て説明するけど、関東平野全体でもこの傾向はあてはまります。夜は内陸から川の流れに沿った風が、昼間は川の流れに逆らった風が吹くってイメージ。
ただし、メリハリのない気圧配置で全体的に風が弱いのが前提。気象っぽく表現すると「気圧傾度が小さい場」で起きる緩やかな風です。
今回は早朝から夕方にかけて、この海陸風による日変化が卓越した日。
朝9時には関東平野全体で緩やかな陸風が卓越。他の着目点として、衛星画像では低くて細かい雲が広がってます。
そして11時。陸風から海風に変化。気温があがることによって平野に広がってた下層雲もしだいに消散。
そして問題の?13時。確かに千葉県側は風の収束に対応してそうだけど、西側は海風が卓越してハッキリした収束は無し。雲の時間変化を追っても個々の雲は素直に南東風に乗って動いてました。
海風が卓越する中、少し雲のない領域を挟んだ内陸側で発生する細かな下層雲。たぶん、その仕組みはこんな感じ。ちょっと湿ってるけど雲になるほどじゃない海風が陸地に侵入。陸地を通過するうちに温められて対流が発達。この対流がある高さまで届くとその頭が対流雲(積雲)として可視化された、そんな仕組みなのかなと。
陸地に入った海風の中に対流雲ができるまで少し時間がかかるので、海岸からある程度の領域には雲ができないという分布になったんだと思います。
海風がもっと湿って雲を伴ってるとこの変化はさらにわかりやすくなります。以前、新千歳空港から南へ飛んだとき、太平洋から押し寄せる霧が積雲に変わる様子はなかなか見事でした。
手前が太平洋の海霧で、奥の陸地側に向かってゆるやかな風が吹いてます。霧(層雲)が一度消えてから積雲に変わってるのがよく分かるかと。※図中の日本海は太平洋の間違い!あとで直します…
この変化は山でもよく見るパターンで、夜間の放射冷却で霧が発生→朝から温められる&混ぜられることによって霧が消える→昼には対流が発達して積雲として現れる、という変化になります。
ちなみに、上の図において点線で表現した〝雲は無いけど水蒸気がモヤモヤしてる層〟のことを気象学では接地境界層と呼び、水蒸気やチリが多くて見通しもイマイチ。山ヤ的に表現するなら〝下界の空気〟といったところ。
この接地境界層の上まで登ることができれば、スッキリした〝山の空気〟の中で遠くまで景色が拝めることになります。
接地境界層は夜に薄くなり、日中は気温の上昇と共に次第に厚くなる(上空に広がるか)という変化が天気のいい日の定番。スッキリした景色を拝みたかったらできるだけ早い時間に登る必要がある、というのもこの変化によるもの。
特に上空の空気がスッキリしてるときはその差は歴然。こんなモヤモヤとスッキリの境界を目にしてる人も多いかと。
ただ、残念ながらこれから夏にかけては上空の空気もモヤモヤした状態になりやすい季節。その辺の話は以前に書いた春の高気圧を参考にどうぞ。
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