台風16号、伊勢湾を揺らす

非常に強い勢力で上陸した台風16号。
雨風ともにさすがの威力でした・・・。
そのあたりの話題は各種メディアで豊富に流れているので、今回はちょっと違う視点からのネタをひとつ。
前回の台風の目の話に続き、台風と潮位についてです。

沿岸部に住んでない人はほとんど気にしてないだろうけど、台風接近時の注意警戒事項として毎度おなじみの「高潮」。
台風によって潮位が上がる理由としては大きく3つ。
・気圧低下による吸い上げの効果
・強い風による吹き寄せの効果
・高波の打ち寄せの効果
があるのは前回も書いた通り。

この台風による高潮の影響が最悪な形で出たのが有名な「伊勢湾台風」。
記録的な強さで紀伊半島に上陸、名古屋などの伊勢湾沿岸で大規模な高潮が発生して甚大な被害が出た台風です。
詳しくは伊勢湾台風@wikipediaをどうぞ。
伊勢湾台風がどのくらい凄かったのか、現代の台風情報風に再現したこれも面白いアイデア。

そして今回の台風16号。
台風が上陸した近くの鹿児島県志布志の潮位データがこちら。tide-map_minamikyushutide-shibushi_20160920-1tide-shibushi_20160920-2

台風の通過によって普段より潮位が約100cm上がったけど、干潮の時刻に重なったたので潮位的にあまりたいしたことがないレベル。
もしかすると急な潮位変化(=潮流が激しい)による影響はあったかもしれないけど、他の地点でも台風による高潮としての影響はあまり大きくなかったようです。

続いて、ず~っと東に目を向けてみると、面白い変化をしてたのが名古屋の潮位データtide-map_tokaitide-nagoya_20160921-1tide-nagoya_20160921-2

台風が通過した20日の昼頃から潮位が上がっただけでなく、台風が通り過ぎたあとも今日にかけて潮位はグネグネと変動。
名古屋と同じく伊勢湾沿いの鳥羽の潮位データではこのグネグネがもっと綺麗にひとつの“波”として見えます。tide-toba_20160921-1tide-toba_20160921-2

この20日から21日にかけて続いた潮位変動の正体は「副振動」。
どんな物体も揺れやすい周期である「固有振動」を持っていて、なんと「湾」や「港」のような巨大な物体(?)も同じように揺れやすい周期を持ってます。
台風のように大きくて強い力で伊勢湾全体の潮位がグッと変化したあと、ゆっくりと揺れながら収まっていった、そんな現象です。

綺麗なひとつの波として変化をした鳥羽に対して、名古屋はギザギザした形。
おそらく伊勢湾全体の副振動に、もう少し小さな湾か港の副振動が重なってこんな変動をしたんだろうなと。

今回は台風という一度の“入力”で起きた波が収まっただけだけど、湾や港の固有振動に一致して共鳴がおきると副振動はどんどん大きくなることも。

この共鳴型の副振動で有名なのが九州西岸の「あびき」。
東シナ海の気圧変動によって発生した潮位変動が地形の複雑な湾の中で共鳴&増幅し、なんと数十分で何メートルも潮位が急変する現象です。

詳しくはあびきとは@長崎地方気象台をどうぞ。

実際に「あびき」が起きたときの長崎港の状態がこちら。
知らない人が見たら津波か!?って思うくらい海が激しく動いてます。

「あびき」については現地にいないとまず関わることはないだろうけど、世の中にはこんな不思議な自然現象もあるんだな~と思ってもらえればネタにしたかいがあるかなと。

ちなみにこの「あびき」、かなり派手な現象なのにまだ予測するだけの技術はありません。(もしかしたら起きるかな・・・?くらいの段階)
自然には人類の知識が及ばない現象がまだまだいっぱいです。

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