カテゴリー別アーカイブ: 南極

第60次南極地域観測隊員(JARE60)についての話

しらせ出港!

11/10(土)の晴海埠頭。
荷物も満載して準備万端の砕氷艦しらせがお目見え。
出港前、乗組員や隊員の家族はちょっぴり乗船時間もあり。

国内を巡行しての訓練航海時は空っぽだった12ftコンテナも埋まり、なんとなく引きしまった姿に。外からは見えない船の中にも荷物がいっぱい。
南極・昭和基地への物資輸送は1年に1度のしらせのみ。
南極での活動計画立てて、必要な物を考えて、買って、どんな大きさ&重さの何を載せるかをリスト化して、検品うけて、揺れても大丈夫なようにしっかり固定して。

隊員それぞれがそんな苦労をしてるけど、輸送のとりまとめ担当者はそりゃもう大変な日々を過ごしてこの日を迎えたんだろうなと…。

そんな感慨深さは置いといて、ぼくも家族と一緒にしらせの中へ。

人&モノの輸送で大活躍する2機の大型ヘリCH-101は随時とコンパクトになって後部格納庫の中。ブレードが外せるだけでなく、尻尾も折り畳めるとは知らなかった。

船首が向くのは東京湾、そして遙か彼方の南氷洋。

ぼくたち観測隊はまだ乗らず、この日はあくまでも見送り。
観測隊は約2週間遅れの11/25(日)に成田から空路でオーストラリアへ。
西海岸のフリーマントルで先行してたしらせに合流。
オーストラリアでたんまり食料&燃料を補給したら、いよいよ11/30(金)には南極へ向かうことになります。

しらせが今どこにいるかは、進め!しらせ@極地研究所で随時更新中。

しらせに乗ったらその様子を随時アップ…といきたいとこだけど、出港しちゃえばネットはほぼ使えない。
12月中旬に南極・昭和基地に着いたあとも、2ヶ月しかない南極の夏を活用すべく必死に働くことになるとか。
なんせ1日中明るい白夜だからリアルに24時間働けちゃうわけです。
まあ1人がぶっ通しで24時間働く訳じゃないけど。…たぶん。

ってなわけで、そんな時は他力本願!

これまで極地研究所の情報発信は〝いかにも南極〟の雰囲気が強い越冬隊のネタが中心な昭和基地NOW!!がメイン。
60次隊では昭和基地に着く前から、必死に作業してる夏の話題も出してこうってことで60次隊NOW!!がスタート。
60次隊の活動を追いかけるにはオススメです。

この昭和基地&60次隊NOW!!はあくまでも観測隊視点。

もうひとつの南極の主役が、もちろん砕氷艦しらせ。そして海上自衛隊の乗組員。

しらせで越える南氷洋、そして南極・昭和基地で何をするか。
海上自衛隊が過去の活動記録を綺麗にまとめてるんでぜひぜひ。

【第58次南極地域観測協力行動】しらせ氷海を行く~海上自衛隊~@YouTube

広報ってのは組織の顔を担う重要な部署。
自衛隊は組織としてちゃんと広報に力を入れてるんだなぁとつくづく感心。
そしてちょっとうらやましい…

60次隊出発まであと16日!

思ってた以上にバッタバタなもんで放置してたこのブログ。そろそろ出発ってことでこちらもぼちぼち再開です(^^;

しらせに載せる荷物が落ち着いたいま、一番忙しいのは各種壮行会w
その中でも文句なしに一番大規模&格式高いのが11/8に開催された第60次南極地域観測隊員・しらせ乗組員壮行会。

友人、同僚、職場、観測隊…と色んな枠組みの壮行会があるけど、この壮行会は観測隊としらせ乗組員(海上自衛隊)の双方が参加。
もちろんそれぞれの関係者も集まるんでかなりの人数。

去年は南極希望者としてお邪魔させてもらった会に、今年は隊員として参加。
改めて、ここまで来たか…と感慨深かったりしやす。
60次隊NOW@極地研究所より

壮行会の実施に合わせて、60次観測隊の顔写真集も公開。
去年まではマジメ顔で固かったけど、今回は明るく笑顔verでの作成。※まだ配布のみ

多くが南極を自ら希望して、南極を楽しみにしている隊員。
うん、絶対こっちのほうがいいね!(・∀・)

そしてこの壮行会とセットで行われるのが隊員の家族説明会。
南極に何しに行くのか、どんな生活なのか、連絡手段はどうなるのか。
家族、特に小さな子供を残してく隊員にとっては非常に重要なイベントです。

説明会が終わった後の壮行会でも結構目立つ子供たち。
夏隊でも4ヶ月、越冬隊では1年4ヶ月のお別れ。
ものすごい変わるんだろうなぁ…。

一緒に過ごせずホントにゴメンと心の中で謝りつつ、だって行きたかったんだもん!と若干開き直りに似た感情も。
とりあえず奥さんに一生頭が上がらなくなる隊員が結構いるのは間違いなしw

泣いても笑っても出発まであと2週間ちょい。
それまで自分の準備も、家族の準備も整えてこうと思います。
あとは来年の隊員に向けた運用計画や引継資料もまだできない現状をどうしたものやら…。

ちなみに、観測隊の出発は11/25(日)に成田から飛行機だけど、しらせは一足早く明日11/10(土)に晴海埠頭から出発。
晴海埠頭からはもちろん、東京湾各地から姿が見えると思うんで興味のある人はぜひ。
昼前に出港予定です。
東京港港湾情報システムより

“南極の氷”の楽しみ方

砕氷艦しらせ、11月の出発を前に毎年恒例の全国巡航&一般公開がスタート!

訓練として、10月頭にかけて横須賀→横浜→苫小牧→新潟→博多→高松→横須賀と日本をぐるっと一周。

各地の港に寄港したときは一般公開もされるのが定番。しらせを直接見れる&乗れる貴重な機会。文句なしに他に同じような船はないんで気になる人はぜひぜひ。
細かい日程は砕氷艦「しらせ」平成30年度総合訓練の実施について@海上自衛隊やGoogle先生に聞いてみてください。

こういった南極関連イベントでまず間違いなく展示されるのが“南極の氷”。
南極からはるばる持って帰ってきたってだけでもまずまずありがたい気がするけど、今回は南極の氷をどっぷり楽しむ6つのポイントをお伝えしようかと。

① 歴史を楽しむ

南極から持って帰ってきた氷の一番大事なポイント。それは“氷山の欠片”ってこと。

巨大な氷の塊(氷床)に覆われてる南極大陸。
寒い南極では降った雪は融けることなくただ降り積もるのみ。厚く積もった雪は自分の重みでゆっくりと圧縮され、しだいに氷に変わってきます。
その氷も自分の重さでゆっくりと海に向かって流れ下り(特に流れが速いとこが氷河)、海に向かってせり出し(棚氷)、バキッと割れて流れ出す(氷山)。棚氷@Wikipediaより
※日本語のいい図が見つからなかった…

南極からお土産に持って帰る氷はこうした長い行程の最後、氷山の欠片を切り出してきたもの。

最初の“降った雪”からどのくらい時間が経ってるかというと…ザッと数万年!

数万年前というと、最後の氷河期(氷期)の真っ只中。
はるか昔に降り積もり、氷河期を生き抜いた氷の末裔が目の前にあると思えばありがたさ倍増間違いなし。
途方もない時間の長さに想いを馳せてもらえればと。

② 見た目を楽しむ

南極の氷、塊だと結構白っぽい。
でも、小さな欠片を手にとって眺めるとこんな感じ。

氷そのものは透明だけど中に小さな気泡がいっぱい。このせいで塊として白っぽく見えてます。
この細かな気泡が“南極の氷”であることの何よりの証拠。

降り積もった雪からできた南極の氷。
雪はたっぷりと空気を含んでて、ムギュッと圧縮されて氷になるときに空気も一緒に圧縮される。
その空気が丸まって閉じこめられたのがこの気泡。
中には氷河期のウン万年前の空気が詰まったまま。
南極の氷は、昔の空気のタイムカプセルってことです。

降り積もる雪が氷になるから、深く掘れば深いほど古い氷が見つかる。この氷から色んなことがわかるんだけど、もうちょっと勉強したら改めて詳しく取り上げようかなと。

さて、本題に戻って南極の氷の楽しみ方の続き。

③ 感触を楽しむ

じっくり観察したとこで次はそっと触れてみる。
軽く手のひらで触れて、冷たいけどちょっと我慢。
すると、小さくパチッと、プチっと、小さく何かが弾ける感触が伝わるはず。

これは氷が融けて、気泡にギュッと詰まった昔の空気が弾け出る時の衝撃。

いま、その手には南極のウン万年前の空気がくっついた。

④ 音を楽しむ

音を楽しむのに便利な道具が使い捨てのプラコップ。

コップに南極の氷を入れて、ちょいと水を入れて氷が融けやすくする。
それからコップに耳を近づけると… パチパチっ、シュワシュワっ、そんな音が聞こえるはず。
太古の氷から太古の空気が飛び出すハーモニーをお楽しみあれ。

※塊の氷しか展示してないとこじゃ集中して耳を澄ませるしかないです。

⑤ 香りを楽しむ

④で音を楽しんだら、そのままこちらへ。
コップの中には太古の氷から弾けだした空気がいっぱい。
つまり、氷の中は太古の地球の大気そのもの。
コップの中の空気を吸う、それは氷河期の南極で息をしてるのと同じ。

で、どんな香りかって?

それは気分の問題かな…

⑥ 味を楽しむ

そして、最後の楽しみ方。
見て、触って、聞いて、嗅いだらあとは味が気になるところ。

ぜひ味わってもらいたいとこだけど…
残念ながらイベントでは食べるのは禁止!

雪を食べるようなもんで変な物は入ってないと思うけど、衛生管理も消毒してない物だからやめといてねってこと。

どーしても気になる人は、どこか身の回りで最近南極観測隊に参加した人を探すか、将来の観測隊を目指して頑張りましょう!

南極行くと、氷を掘るついでに流しそうめんしたり、カキ氷にしたり。詳しくは極地研究所のアイスオペレーション@昭和基地NOW!!をどうぞ。
“よりもい”でもキマリ達が参加&食べてたやつですな。

昭和基地NOW!!@極地研究所では、いま南極で観測隊がどんなことやってるかを随時更新中。
南極に興味のある人は時々覗いてみてくださいな。

2020年の春には60次隊がせっせと掘った南極の氷を日本にお届けします♪

めざせ!南極気象予報士(決定版)

先週6月22日に文部科学省から出たこちらの報道発表。
第60次南極地域観測隊員等の決定について@文部科学省

第152回南極地域観測統合推進本部総会で第60次南極地域観測隊員の大部分が決定。
その中にはぼくの名前も。

ってなわけで。

今年の11月から、約1年半。
第60次南極地域観測隊(越冬)の一人として南極に行ってきます!

4月に所属部署が変わったことで事実上の準備は始まってたけど、ついにこうして〝決定〟まで来たのは大きなひと区切り。
南極地域観測隊の候補者から正式隊員となる上での最大の障壁〝健康判定〟を無事にクリアしたってことになります。

今の立場はこんな段階↓第60次南極地域観測隊の行動予定@国立極地研究所(以下、極地研)より

わざわざ赤字で「身体検査の進捗により~」と書いてるあたり、いかに重要ポイントかが伝わるかと。
どんな検査をするかは健康判定の検査項目@極地研をどうぞ。

色々と人生初の検査があって面白くもあったけど、もちろん結果が出るまではドキドキ。
どうやら検査の時点で指摘された虫歯の対処でせっせと歯医者に通ったくらいで無事に終わったみたい。

夏期総合訓練(通称:なつくん)もすでに終わり、各隊員は自分の任務に必要な訓練、物資の調達&梱包と慌ただしい準備が本格化。
しらせが日本を出発する11月にかけて怒涛の数ヶ月になる、らしいです。

夏訓では南極地域観測隊が成り立つための仕事や任務について色々と教わったけど、文明圏から離れた場所で昭和基地というひとつの街を維持するだけでもホントに大変なんだなぁと。

南極がどんなとこで、どんなことをしてるのか。

何よりぼくの志望動機の柱である、どんな景色が広がり、どんな自然現象が起きるのか。

その辺をキャッチーでウィットでセンセーショナルに伝えてきます!

…とはいっても、南極に向けて出発するまでまだ5ヶ月くらいあるんで、それまでは日常の気象ネタと南極ネタが入り混じるごちゃごちゃした内容になりそうな予感。
ブレブレな軸のことは気にしないでください(^^;)

【読書感想文×2】南極で生き物を愛した人と、空を愛した人

最近は何かと南極絡みの本を読むことが多いけど、今回はその中から印象深かった2冊をご紹介。

まずは田邊優貴子さんによる〝すてきな地球の果て〟

よりもい(宇宙よりも遠い場所)見てて、「あ、これは…」と思った。
こうすればもっと分かりやすいかと。

たぶん、よりもい作中で報瀬の母、貴子が書いた本である〝宇宙よりも遠い場所〟デザインのモチーフだろうな~と。
狙ってか、名前も田邊優貴子と小淵沢貴子で似た雰囲気。

田邊優貴子さんは極地を中心に活躍する生物学者さん。

…ってことだけは知ってたけど、よりもい見た時点でまだ読んではなかった(^^;
で、今回の更新になったわけ。

極地に向かうきっかけから、実際に南極と北極に行って出会った感動を生き物との関わりを中心に綴った手記的な雰囲気の強い1冊。
本当に極地が好きで、生き物が好きで、この世界が好きで。
そんな溢れ出る気持ちがよく伝わってくる素敵な本。
南極に興味があるなら一度読んで損はしないはず。
もっと早く読んどけばよかったな~。
よりもい視点でも色々思ったけどそれは後で。

この本の難点をあげるとすれば手記的な要素が強いんで、あらかじめ南極や北極の写真や映像をそこそこ見てればすんなりリンクするけど、前知識がない状態だともしかすると入り込みにくいかも??

パートごとにまとまって素敵な写真も数多くのってるけど、あくまでもメインは文章を通して田邊さんの感動を追体験するって本な気がしました。

そこでもう1冊のオススメをご紹介。

こちら、武田康男さんによる〝世界一空が美しい大陸 南極の図鑑〟

武田康男さんは〝南極の空を見る&撮る〟ことを目的に南極を目指した空の写真家。
個人的にかなり親近感を感じる動機ですw

こっちは素直に主題は〝南極の自然の写真集〟で、写真に筆者の想いや解説が付く形。
目の前に広がる圧倒的な自然を切り取った作品がズラリと並んでます。
南極ってどんなとこだろ、と思ってる人は先にこっちをみた方が分かりやすくていいんじゃないかなと。

田邊優貴子さんと武田康男さん。

同じ南極を舞台にしていながら、生物学者と空好きが見る景色の違い。
もちろん重なる視点もあるけど、やっぱり生き物を見ちゃう人と、空を見ちゃう人。
手記と写真集という表現の違い。
あと、田邉さんは夏の南極だけ。武田さんは越冬隊として丸ごと1年の南極って違いも。
読み比べるととても面白い2冊なんでぜひセットでどうぞ。

さて、ここからはちょいとアニメ好き属性強めな話を。

よりもい見てない人はなんのこっちゃ、だと思うんでスルーしちゃってください。
できればよりもい見てからまたどうぞ。
アニオタ以外が見ても面白いっすよ!(たぶん)

報瀬母・貴子のモデルの1つになったであろう田邊優貴子さん(少なくとも本においては)。
田邊さんは生物学者、貴子は作中から察するに天文系の人。
学問のジャンルは違えど、〝すてきな地球の果て〟を読むときっと貴子の〝宇宙よりも遠い場所〟もこんな南極への好奇心と感動と愛情に満ち溢れた本だったんだろうな~と思う。

でも、そんな本を残して母:貴子は南極から帰ってこなかった。
そして取り残された娘:報瀬。

当然本を読んでも母の想いや感動を素直に感じられるはずもなく、ただ戸惑うばかり。
意を決して南極に向かうも、実際に南極に立ってもその気持ちは変わらない。

戸惑いもがき続ける中、仲間の助けでついに長年の想いが溶け出し決壊した報瀬。

作中では描かれなかったけど、きっと帰ってから(あるいは帰りの船旅で)お母さんの〝宇宙よりも遠い場所〟を読み直したんだろうなぁと。
どんな気持ちだったんだろう。
ちゃんとお母さんの想いは伝わったかなぁ。

あぁ、そんな想像をするとまた涙が…。

ってな感じで、よりもい という作品を味わう上でも〝すてきな地球の果て〟は結構意味のある1冊だと思う。
よりもいを楽しんだ人はぜひ手にとってみてください。
ホントに南極に行きたくなるかも!?