カテゴリー別アーカイブ: 日々の天気

日々の天気に関する話題を幅広く。ちょっと顔を上げてみれば、まぎれもなく天気は生活の一部です。

なぜ昼に風が強まるか→やっぱり太陽の力は偉大

朝はとても穏やかだったけど、昼間は結構な北風が吹いてた昨日の関東。
ぼくも外出先で自転車を倒されました…。

アメダスを見ると朝と昼で大違い。
全体的に風の弱い朝に比べ、昼には関東平野を北西風が吹き抜けてるのがわかります。

じゃあなんで風が強まったのかと朝&昼の天気図を比べてみると…
間違い探しかってくらい変化は少なく、どっちも冬型気圧配置が続いたまま。

熊谷のウィンドプロファイラを見てみると、少し上空(高度1~3km)の風は夜中から昼にかけてずっと強かったことがわかります。

じゃあなんで地上の風がこんなに変化したかというと、ここでも太陽が大活躍。

夜間、地表付近の空気は冷えて落ち着き、上空の空気と混ざりにくくなってます。
上空でいくら風が吹いても頭の上をすり抜けるだけ。
地表付近の風は弱いまま。

ところが、朝になって太陽から照らされると地表付近の空気は暖められて軽くなることで対流が発生。
風の強い上空の空気と混ざることで地表付近でも風が強くなるって仕組みです。

夜間の地表付近の動きが鈍くなった空気の層を接地逆転層、日中に対流でかき混ぜられた空気の層を混合層なんて呼んだりもします。

そして夕方になると冬型気圧配置が緩んで上空の風も弱まり、再び夜間になることで地表付近はまた吹きにくい状態に。
こうした風の変化が起きた1日でした。

冬型気圧配置が続いてるのに風が弱いなぁと思った朝。
油断して日中の風の強まりに洗濯物などを飛ばされないようにご注意ください。

やる気がないけど性悪な寒冷前線もある

昨日、11月4日に本州を通過した寒冷前線。連休中の寒冷前線通過、しかも通過後の寒気は少し強めの予想だったんで気にかけていたんですが…。
重要な視点が抜けてたので反省をこめてご紹介。

寒冷前線の通過というと「強い北寄りの風に変わって気温も急降下。強い雨や雷を伴う。」ってのをイメージする人が多いんじゃないでしょうか。
もう少し詳しく書くなら、上層の気圧の谷(トラフ)の前面(東側)で低気圧が発達。低気圧&トラフが東に抜けたら後面からドッと押し寄せる下層寒気。この下層寒気移流の先端が教科書的な寒冷前線です。

そんなイメージを抱きつつ4日朝の天気図、アメダスの風、衛星可視画像を見てみると…

寒冷前線が通過した後というのに関東はそよそよとした北風。確かに本州の南に帯状の雲(青線)はあるけど、なんか日本海にもっと元気そうな雲の塊(赤丸)が。
ハッキリ言って、いつのまに前線通過したの?ってくらいの影響しかありませんでした。

このやる気の感じられない寒冷前線の理由は、高層天気図と衛星水蒸気画像から見えてきます。
4日朝(9時)の500hPa高層天気図と水蒸気画像がコチラ。

寒冷前線は本州を通過したけど、上層トラフ(赤線)はまだ西に残ったまんま。例えるなら、腰(トラフ)が引けたまま足先(寒冷前線)だけちょこんと出したような状態。これじゃ強いボール(下層寒気移流)は期待できません。

昼から夕方にかけてトラフが東進すると共に本格的に下層寒気移流が強まり、天気図で表現されてる寒冷前線に遅れて〝寒冷前線らしい天気の変化〟が起きた、そんな1日でした。

事前に資料を見てた時は、昼くらいから下層寒気移流が強まりそう。きっとこのタイミングで寒冷前線を表現するだろう、の認識。
でも実際には、やや不明瞭な寒冷前線が朝に通過したあと、遅れて昼過ぎから下層寒気移流が本格化するって現象。

注意を呼びかけるべきは寒冷前線の通過そのものじゃなく、「寒冷前線の通過時は大したことないけど、少し遅れて本格的に天気悪化するから油断しないでね!」といったことでした。

素直な寒冷前線よりよっぽど性質が悪かった今回の現象。
予想天気図を見て、ずいぶん寒冷前線の通過早いなぁと感じた時点でちゃんと確認してれば気づいた話。
物事を単純化させすぎずに丁寧に見る&考えなきゃな、とつくづく反省です。

※一応補足しとくと、ぼくは確認が甘くなってたけど、予報の担当者はしっかり現象を理解した上で天気予報や注意報を判断してるはずなのでご安心を。

関東の「北東風 晴れ」予報には要注意

なが~い見事な秋雨がやっと一息ついた今日。太陽をちゃんと拝むのもホントに久しぶり。

「…って気分を今日の午後には味わえそうですよ」な雰囲気を醸し出してた昨日(17日)の天気予報。
実際にはどうだったかというと、確かに雨は昼頃で終わったけど午後もなかなか雲が取れずに日差しはおあずけ。
あれ?話が違うぞ…と思った人もいたんじゃないかと。

この17日夕方(16時)の雲を見ると、関東の南海上に広がるしっかりした雲と、関東平野に広がる少し不明瞭な雲に別れてました。

南の雲は前線に対応する厚い雲。関東平野の雲は地表付近の北東風と少し上空の空気の境目に広がる薄くて低い雲。

ここで大事なポイントは、南の雲は数値予報が表現するのが得意な雲で、関東平野の雲は数値予報の表現が甘い雲ってこと。

関東平野に北東風が入り込んでる時に、予想してなかった薄ぺっらい雲が広がるってのは関東の晴れ予報がハズレるときのお決まりパターンのひとつ。
担当者は北東風の存在&曇る可能性は把握した上で、北東風の強さや各層の湿り具合をチェックして「今回は素直に晴れるはずだ!」と決断しての晴れ予報。
…なんだけど、読みが外れることもしばしば。
今回もそんな典型例の1つでした。

南関東で「北東風&晴れ」な予報が出てるときは、ホントに晴れるかな~と空を見上げてもらうと天気を楽しめると思います。アメダス&衛星画像も合わせて使うと楽しさ倍増。

ちなみに、予報になかった北東風は天気も気温も大ハズレを告げる〝不吉の風〟。
少し前の10月11日は完膚なきまでに凹まされるこっちのパターンでした…。

大雨の予測と解析と防災情報(20171007大雨@伊豆諸島)

下層暖湿が強く、トラフもしっかりしてて結構降りそう。あとは前線&低気圧がどこまで北上するか、が重要な着目点だった今回の大雨イベント。

結果として、暖気が北上したのは伊豆諸島の真ん中までで、これより北側の関東はヒンヤリした空気に覆われてダラダラと雨。
そしてヒンヤリと暖気のちょうど境目となった伊豆諸島の三宅島は猛烈な雨に。海の上なんで当然観測点は島にしかないけど、レーダーに対応する風と気温の境目もくっきり。 ↑はアメダスの分布図を加工して作成。高解像度ナウキャストに雨量以外のアメダス観測値も重ねれるようにならないかなぁ…。

赤外画像で見た対応する雲域の発達っぷりもなかなかのもので、日中で可視画像が見えたら凄い姿をしてたんだろうなぁとちょっと惜しい気持ちにもなったりして。

ただ、小さくて激しい現象だったので、天気図の低気圧&前線はドンピシャで対応するほど細かくは表現されてない、といった感じでした。

こういったコンパクトな低気圧&前線による大雨は、強雨となる領域(主に南北)。 そして強雨域の走向(分布)と移動方向が重なって強雨が持続するパターンにはまるか、といったあたりが重要なポイント。

でも、この両方を事前にピタッと当てるのは今の予報技術では相当難しいのが現状。
ある程度幅をもった予報を出しつつ、実況監視&解析をしながらどんどん予測シナリオを修正&絞り込んで注意報や警報等の防災情報に反映させていく、というのが予報現場での作業になります。
今回は後半急激に発達&大雨パターンにはまり出したのでちょっとバタバタだったかも。

こんな感じで連休頭は微妙な天気になったけど、明日~明後日はまあまあな天気になりそう。事故の無いように気をつけつつお楽しみください。

…まあまあ、と言いつつ、高気圧の中心が北にずれてる時の関東は天気予報がかなり嫌らしいパターン。
関東の天気好きは明日どれだけ晴れ間があるかにもご注目ください。

秋の青空とエマグラム

更新をサボってるうちにすっかり秋の雰囲気。ちょっと暑い気はするけど。そして今日の午前中は秋らしく空が高く感じるステキな青空でした。

この青空を運んできてくれたのは、もちろん移動性高気圧。関東から見るとちょっと中心が北にズレてたけど、今日山に登ってた人は本当にステキな景色が見れたと思う。あぁうらやましい…。

低気圧は上昇流が卓越してるのと反対に、高気圧は下降気流が卓越。
特に勢力の強い移動性高気圧は下降気流が強く、上空の塵や水蒸気が少ない綺麗な澄んだ空気が地表付近まで下りてきてるから”いかにも秋!”な澄んだ空になるって仕組みです。

この澄んだ空を”見る”ことができる資料が、ラジオゾンデによる高層気象観測のデータを使ったエマグラム。

縦軸に高度&気圧、横軸に気温を描いて高度ごとの変化がとても分かりやすい資料で、説明は気象庁のサイト内にもあるけど・・なんと、エマグラムそのものは掲載されてないという悲しい状況だったりします。
≪ラジオゾンデによる高層気象観測@気象庁≫

そんな時にとってもありがたいのが気象会社のSunny Spot
「観測・情報」の中にエマグラムが掲載されてます。

そして今日(21日)朝の輪島のエマグラムがこちら。

縦軸が高度&気圧。横軸が温度で、赤線が気温、青線が露点温度になってます。

今日のエマグラムで注目すべきは700hPa、高度約3000mの赤矢印のとこ。
基本的に対流圏の中は高度が上がるにつれて気温は下がるので、エマグラムの気温線(赤線)は左斜め上にのびてるのが普通の姿。
でも700hPaのとこでは高度が上がると気温も上がる層があって、これが“逆転層”と呼ばれるところ。この逆転層を境にここより上空は露点温度(青線)がぐっと低くなり、非常に乾燥してることが分かります。

この700hPaにある逆転層は“沈降性”の逆転層で、高気圧の下降気流によって乾燥断熱昇温した上空の空気と、下層の空気の境目。
登山者目線でいくと、この境目より上が景色がスッキリクッキリな山の空気。この境目より下がモヤっとした下界の空気ってとこです。

しっかりした移動性高気圧がくる春と秋に起きやすいこの状態。
街中で今日は空綺麗だな~と見上げたり、山で今日は遠くまで見えて凄いな~と思った時、気が向いたら天気図と衛星画像、そしてエマグラムも眺めてみてください。

前に書いた≪春の高気圧その2≫の時もちょうどそんな雰囲気の時でした。エマグラム確認してなかったけど…。

台風の進路は風まかせ

南の海をふらふらと北上する台風15号。
このまま素直にまっすぐ北上してくれればいいのに、このあとグイッと西に曲がって本州に近づきながら北上する予想。どこまで日本に近づくか、どのくらい影響が出るのかちょっと気になる位置関係です。台風情報@気象庁から72時間予報と5日予報

台風このやろう!と言いたくなるけど、台風はきっと「おれに言われても…」なんて思ってるはず。
人からすれば凄まじく大きくて激しい自然現象である台風だけど、地球全体を見渡して考えると“小さな渦”。台風よりずっと大きなスケールの高気圧に東から邪魔されて、仕方なく西に向かおうとしてるってのが今の状況です。
この高気圧がどのくらい張り出して、どのくらい台風が大回りさせられるかが今回の台風進路の最大のポイント。ここを越えないことにはなかなか台風予報の“幅”が狭まってきません。

そして高気圧を回って北上した後は、いつ偏西風の影響を受けるかが次のポイント。
今回は日本の近くに北上した頃に西から大きなトラフ(気圧の谷)が近づく予想。このトラフも台風に比べるとずっと大きな存在なので、台風はついつい引き寄せられることに。

どんなタイミングで北上して、どのくらいトラフの影響で西に寄るか。
その予想は世界各国の数値予報でもまだバラツキの大きい状態。
北&東日本は今週末にかけて天気予報が変わりやすい状況が続くので最新の情報に注意してください。

雨や風に注意するのはもちろんだけど、今の予想だと31日~1日あたりは台風がグイグイと北の冷たい空気を引き込んでかなり気温も下がりそう。何も考えずに半袖で出かけると寒い思いをすることになるかもしれません…。
関東の東にある前線がヒンヤリと大雨の境界線。今後の予想天気図&気温予想にもご注目を。

そろそろ山行きたいのに台風やだなーとは思いつつ、天気図もメリハリが出てきてだいぶ秋っぽさがでてきた感じ。移動性高気圧を掴んでスカッとした秋空を満喫したい。そんな視点で天気図を見るのが楽しい季節になってきました。

涼しすぎるけど冷夏じゃない、かも?

結構暑かった7月から一転、グダグダな天気が続いてる8月の北~東日本。さすがに大きな影響出るんじゃないかってことで、気象庁から報道発表資料が出てきました。
平成29年(2017年)8月前半の北・東日本太平洋側の不順な天候及び沖縄・奄美の高温について@気象庁

いまどんな状況かは、この図がすべて。北海道から東北地方の太平洋側~関東にかけて、低温と日照の少なさが顕著です。ほんと、関東暮らしな自分も今月になってからまともに太陽を拝んでないような気が…。
夏の主役であるべき太平洋高気圧がサボってるのと、冷たい海に居座るオホーツク海高気圧から送り込まれるひんやり&しっとりな北東風が原因という解説も素直に納得できるかと。いわゆる“やませ”です。(関東地方だけで見るときは“北東気流”と表現することが多い)

でも、関東に住んでる人が「あれ?」と思いそうな資料も混じってたりします。
それはこちらのエリアごとの平均気温差。
これだけスッキリしない天気が続いといて、東日本の太平洋側では平年に比べてたった0.2℃低いだけ。
そんなバカな、もっと低いはずだ!なんて感じても不思議じゃありません。

これにはちょっと理由があって、気象庁が定義する「東日本の太平洋側」は「関東+甲信地方」ということ、そして“やませ”の特徴を知る必要があります。

“やませ”として北~北東から流れてくる冷たい空気は地上から1~2km程度の厚みしかなく、高い山は越えることができません。大きな影響が出るのは冷気がせき止められる北海道~本州の東側が中心で、特に日照時間の分布を見るとこのことがよく分かります。

ちょうど今日もそんな感じで、12時の衛星画像日照時間気温の分布がこちら。
東北地方の太平洋側から関東平野はペタッとした雲に覆われてくもり&気温低め。でも山を越えた先になる長野~山梨エリアは結構雲の隙間から日照があるし気温も高めになってます。
グズグズな関東から北アルプスに行ったら思った以上に天気が良くて幸せ~!!な人も結構いたんじゃないかなと。

「東日本の太平洋側」は「気温の低い関東」と「気温が高めの甲信」全体の平均。
このため関東の人は「もっと低いだろ~」と感じることに。逆に甲信の人は「そんなに低くないけど?」と思ってたりして。

ちなみに、気象庁が“冷夏”を判断するのは夏と定義してる6~8月全体の平均気温がどうだったか。
7月はかなり気温が高かったので冷夏と判断されるかはちょっと微妙なところ。
これだけ8月が涼しかったあとに「(平均すれば)平年並みの夏でした」と発表しようものなら問い合わせが殺到するのは目に見えてるので、担当部署の人はちょっとやりにくい思いをしてるかもしれません…。前3か月間の気温経過@気象庁より

そして、この先どうなるかもとっても気になるところ。今日発表の1ヶ月予報では、来週以降は気温が持ち直して夏の名残りくらいは楽しめるという予想。
そうなることを信じて夏らしい遊びができるのを待ちましょう!

台風予報の別れ道 ~台風は山が嫌い~

南の海でずいぶんとのんびり過ごして長い一生を満喫してる台風第5号。さんざん迷走したあげく、ここにきてまた予報官の頭を悩ませる事態に突入中。

14時発表の台風位置と進路予想がコチラ。四国を掠めながら間もなく紀伊半島に上陸。そのあと本州ド真ん中を突っ切って北東に進む(ように見える)予想。

そして、こちらが明日朝の予想天気図。よ~~く見ると、本州ド真ん中よりほんの少しだけ北よりに見えないこともない。

え?見えない?
じっと見てるとそんな風に見えてくる、はず。
いや、やっぱりこないかも…。

そんな見える見えないは置いといて、今回の台風予報と予想天気図に籠められた想いを知るには2つのポイントを押さえる必要があります。

まず、台風の予報円について。
気象庁の台風情報を見ると、すぐ下に書いてある大事なこと。

『台風の中心は必ずしも予報円の中心を結ぶ線に沿って進むわけではありません。台風の中心が予報円に入る確率は70%です。』

台風の予報円はあくまでも確率70%をカバーする領域であって、必ずしも中心を通る可能性が高いわけじゃないです。
台風の進路が変わりそうなタイミングで「あっち?それともこっち?」な状況になってどっちも可能性がある場合、台風の予報円はどっちの進路もカバーするように大きくなる。そして、実際に進む可能性が高いのは予報円の中心ではなく、予報円の両端どっちかという状態になることも。

そして2つめのポイント、台風の“性格”の問題。

台風は大きくてエネルギーあふれる現象だけど、その厚み(高さ)はあくまでも対流圏の中に収まる10数km。
そんな“薄っぺら”な現象である台風にとって、本州の真ん中にそびえる2~3000m級の中部山岳エリアは結構邪魔な存在。台風の厚みを人の身長だとすると、中部山岳エリアは膝の高さくらいの障害物。
勢いよく進めば乗り越えれなくもないけど、ふらふら歩くには自然と避けてしまう、そんな存在です。

台風が本州の中部山岳にぶち当たりそう。
このまま乗り越えるかなぁ。日本海側か太平洋側に避けるように進む可能性も結構高いはず。
どう進むかはホントに難しいけど…可能性が高いのは北側だ!!

といった予報官の葛藤と決断が今日の台風予報と予想天気図には籠められてます。

この結果が分かるにはもう少しだけ時間がかかりそう。

もし仮に今後台風の予想進路が南寄りになれば天気や各種防災情報の中身が大きく変わる可能性もあるんで、これから明日にかけては特に最新の情報にご注意ください。

雲が消えて、またできて(好天の場合)

おととい(6/16)は綺麗な寒気が襲来。どうなるかと思ったけどさすがに発達しました!なかなかの大きさの雹も降ったみたいで出会えた人にはちょっと羨ましかったり。

この不安定の話でもしようかと思ったけど、衛星画像好きとしては少し引っかかる記事を見つけてしまったので予定変更。

その引っかかる記事というのがコチラ↓
東京に白いリング状の雲が出現@片山由紀子(ウェザーマップ)

16日の昼過ぎに現れた、東京湾をグルッと囲むように広がってる雲についてこんな解説をしてます。

鹿島灘から吹く東風と東京湾や相模湾から吹く南よりの風がぶつかった所に雲が発生しています。東京では午前9時に北北東の風、その後、午前11時になると南南東の風に変わりました。そのころから白いリング状の雲ができ始めたと思われます。

半分あってるけど、半分足りない気がするので今回とりあげてみました。

まず最初にキーワードのひとつである〝海陸風〟のおさらい。
比熱&吸熱効率の差により、暖まりやすく冷えやすい陸地と、暖まりにくく冷えにくい海。この差によって昼間は海から陸地へ風が吹き、夜間は陸地から海へと風が吹くってやつです。
小学校の教科書あたりだと海岸近くだけを見て説明するけど、関東平野全体でもこの傾向はあてはまります。夜は内陸から川の流れに沿った風が、昼間は川の流れに逆らった風が吹くってイメージ。
ただし、メリハリのない気圧配置で全体的に風が弱いのが前提。気象っぽく表現すると「気圧傾度が小さい場」で起きる緩やかな風です。

今回は早朝から夕方にかけて、この海陸風による日変化が卓越した日。
朝9時には関東平野全体で緩やかな陸風が卓越。他の着目点として、衛星画像では低くて細かい雲が広がってます。

そして11時。陸風から海風に変化。気温があがることによって平野に広がってた下層雲もしだいに消散。

そして問題の?13時。確かに千葉県側は風の収束に対応してそうだけど、西側は海風が卓越してハッキリした収束は無し。雲の時間変化を追っても個々の雲は素直に南東風に乗って動いてました。

海風が卓越する中、少し雲のない領域を挟んだ内陸側で発生する細かな下層雲。たぶん、その仕組みはこんな感じ。ちょっと湿ってるけど雲になるほどじゃない海風が陸地に侵入。陸地を通過するうちに温められて対流が発達。この対流がある高さまで届くとその頭が対流雲(積雲)として可視化された、そんな仕組みなのかなと。
陸地に入った海風の中に対流雲ができるまで少し時間がかかるので、海岸からある程度の領域には雲ができないという分布になったんだと思います。

海風がもっと湿って雲を伴ってるとこの変化はさらにわかりやすくなります。以前、新千歳空港から南へ飛んだとき、太平洋から押し寄せる霧が積雲に変わる様子はなかなか見事でした。
手前が太平洋の海霧で、奥の陸地側に向かってゆるやかな風が吹いてます。霧(層雲)が一度消えてから積雲に変わってるのがよく分かるかと。※図中の日本海は太平洋の間違い!あとで直します…

この変化は山でもよく見るパターンで、夜間の放射冷却で霧が発生→朝から温められる&混ぜられることによって霧が消える→昼には対流が発達して積雲として現れる、という変化になります。

ちなみに、上の図において点線で表現した〝雲は無いけど水蒸気がモヤモヤしてる層〟のことを気象学では接地境界層と呼び、水蒸気やチリが多くて見通しもイマイチ。山ヤ的に表現するなら〝下界の空気〟といったところ。
この接地境界層の上まで登ることができれば、スッキリした〝山の空気〟の中で遠くまで景色が拝めることになります。

接地境界層は夜に薄くなり、日中は気温の上昇と共に次第に厚くなる(上空に広がるか)という変化が天気のいい日の定番。スッキリした景色を拝みたかったらできるだけ早い時間に登る必要がある、というのもこの変化によるもの。
特に上空の空気がスッキリしてるときはその差は歴然。こんなモヤモヤとスッキリの境界を目にしてる人も多いかと。

ただ、残念ながらこれから夏にかけては上空の空気もモヤモヤした状態になりやすい季節。その辺の話は以前に書いた春の高気圧を参考にどうぞ。

衛星画像ノススメ(霧&ベナール対流)

関東まで一気に梅雨に入ったということで、衛星画像でつい目が行くのは日本の西側エリア。
でも、北側エリアにもなかなか面白い物が見えてたので今回はそちらのご紹介です。

こちら、6月5日のオホーツク海の可視画像&天気図。春の定番、キンキンに冷えたままのオホーツク海に広がる下層雲(霧)が北風にのって南下。ごく低い高度にある雲なので千島列島にせき止められ、島と島の隙間から流れ出してます。
流れ出した雲は小さな渦を巻いてるところもあって、つくづく大気は流体なんだなぁと感じる光景です。

そして翌日、6月6日の可視画像&天気図。前日にオホーツク海から流れ出した下層雲域が不思議なまだら模様に。これは“ベナール・セル”と呼ばれるもの。

薄い流体を下からじんわりと暖めると、上昇流と下降流が規則正しく並んでセル(細胞)状の対流分布が生じるのを見つけたのがベナールさん。流体力学の実験で定番メニューのひとつです。
実験じゃお皿くらいの大きさの容器の中でやるわけだけど、実際の大気の中でも同じような現象が起きるってのが面白いところ。雲のあるところが上昇流、雲のないところが下降流になってます。

ヒンヤリした薄い下層雲が、高気圧に蓋をされた状態で、海からゆっくり暖められてる、という気象条件が実験室と同じ環境をとんでもなく大きなスケールで作ってるってのがミソ。
そして対流が進むにつれて下層雲はゆっくり消散していきました。

このオホーツク海からの流れ出しとベナール対流の様子は動画でみるとなお綺麗。
ひまわり8号リアルタイムWEBでは静止画だけじゃなくて日ごとの動画も公開してくれてるのでこちらからどうぞ。

6月5日 オホーツク海から流れ出る下層雲

6月6日 ベナール・セル化&消散
(高頻度観測領域の端でちょっと見にくいのが残念!)

冬型の気圧配置が日本海でもたまに見ることができるので、気になる人は来シーズンにでも探してみてください。