巨大アイスモンスター、武尊山

前回でアクセスについて書いた武尊山。
今度はメインの山の話です。

ルートは山麓の川場スキー場のリフトを降りたら基本的に稜線に沿った素直なコース。
一部雪庇が発達してたり、急傾斜・痩せ尾根・ちょっとした岩場があったりはするけど歩く技術としてはそんなに難しくはない。

ただし、上部は森林限界に届く雪山の世界。
ガスると見事に周囲が分からなくなるから初心者さんが視界の悪いときに単独で歩くのはちょっとオススメできないとこです。少なくとも地形が読める&コンパスを頼りに歩くってことができなきゃ怖くてて歩けたもんじゃないかと。

今回はまさにそんな感じ。
週末で荒天ってほどは悪くないから登山者はいっぱい。
でもちょっと離れると周りは真っ白。

平日で周りにほとんどいなかったら最後までいったはちょっと微妙だったかなと。これ以上荒れない予想だってのはそれなりに自信があっても、やっぱ怖いもんは怖いです。
まあこの緊張感も雪山のいいとこなんだけど。

中には展望は無理なら山頂はいいやと割り切って、途中でツェルトを張って雪遊びモードに切り替えてた方も。
そんな柔軟な遊び心も大切だよな~と再確認するコンディションでした。

ガスガスの山頂にはあっさりと別れを告げて降りてくると、下界側の天気はすっかり回復。せっかくなんでスノーシューでふらふらと散策タイム。好きなとこを好きなように歩けること、そして周りの景色ひとつひとつが本当に美しいのは雪山ならではの楽しみですな。

さて、武尊山の見所といえばリフト降りてすぐの剣ヶ峰や山頂からの展望だけど、ぼくとしては樹氷(エビのしっぽ)の発達っぷりも推しておきたいところ。
山頂近くの木々はこんな感じでなかなかの伸びっぷり。

そして山頂周りは山そのものが巨大なアイスモンスターと化してる…のが背景真っ白な今回の写真じゃよくわかんないんで、2011年に登った時の写真もあわせて。

どうしてのっぺらしたとした普通の雪山ではなく、全身ハリネズミみたいな姿になるのか。
これには武尊山の風上側に壁のように並ぶ三国山脈の山々がとっても重要。

日本海でたっぷり水蒸気を補給した北西の季節風がぶち当たり、強制的に上昇気流となって雪雲が発達。谷川岳を代表とする三国山脈の山々に大量の雪を降らせるのはご存知の通り。
そして風下側に位置する武尊山には一度雪を降らせて水蒸気の大部分を失った季節風が届くことになる。

武尊山も標高2158mとそこそこ高く、2000m級の三国山脈よりもさらに高いくらい。
武尊山にぶち当たった季節風は再び上昇気流となるけど、しっかり雪を降らせるほどの水蒸気はもうない。
こんな時どうなるかというと、絞り出された水蒸気は雪未満のごくごく小さな水滴になり、雲として姿を見せるのみ。
しかもごく小さい水滴とういのは氷点下でもなかなか氷にならず、氷点下よりも冷たい水の粒、過冷却水滴として存在してます。

こいつが風に乗って何かにぶつかると、その途端に細かい氷の粒となって相手にくっつくことに。
何かの風上側にどんどんぶつかってくっついて、を繰り返すことでエビのしっぽは風上側に伸びていく。
そして武尊山の山頂だとすでに森林限界を超えてるので、ぶつかる相手は地面のみ。
こうやって山そのものが巨大なアイスモンスターになったのが冬の武尊山ってわけです。

樹氷やアイスモンスターの本家:蔵王も、先に新潟~山形県境にある朝日山系でほどよく水蒸気を落としてるからこそ生まれた景色。
蔵王のアイスモンスターも空と一体化してるときにしか行ったことがないんでまたリベンジしたいです…。

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