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太陽、完全復活

極夜が明けたとはいえ、どんより空で実感のなかったここ数日。

しかし。

昨日16日の朝はこんな空。これは期待できる!

次第に北の空が明るくなり、11時にはいよいよ!といった雰囲気。

反対側の南の空には山影からこっそり太陽を見守るお月さま。
少し隠れるけど、今はちょうど“沈まない月”の時期。

そして11時半、ついに来た!

太陽が顔を出すと一気に世界に光があふれる。
明るいんじゃなくて、眩しい。久しぶりの感覚。

太陽が昇ったとはいえ、正中(北中)時でも太陽高度は1度未満。
このくらいで今のMAX。
昇ったというか顔を出したくらいの高さだけど存在感は抜群。

そして13時頃には早くも店じまいの準備。

14時半にゾンデ観測をする時には色濃く漂う夜の気配。

夜も快晴、月明かりがとっても明るくてヘッドライトいらず。
快晴の月夜もいいけど、前日の薄い雲がかかった月夜もなかなかいい雰囲気でした。

これからどんどん昼が長く、夜が長くなる。
振り返ってみると、極夜も意外とすんなり終わったなぁってのが素直な感想。
特に6月が極夜というかブリ強化月間だったせいかな。

夏が近づくにつれて今度は夜がどんどん短くなる。
その前にビックリするようなオーロラが見たいなぁ。

そんな平和な極夜明け。

極夜明け!でも寒さはこれから本番

5月末に太陽とお別れした後、ひたすらどんより暗い時間を過ごした6月。
7月になってからちょっとずつ日中が明るくなってきたことを感じる日々。
そして12日の昼過ぎ、どんより曇り空と水平線(氷平線?)との隙間から久しぶりに見るまばゆい光!

ついに昭和基地では極夜が明けました。
初日の出にも通じる、世界が新しくなったような清々しさ。
そして越冬隊も後半戦に入ったことを実感する瞬間。
ありがたやありがたや。

極夜が明けたしこれからどんどん明るくなって暖かくなるぞ~!
…と言いたいとこだけど、実は寒さはこれからが本番。

気温のグラフでいくと今がこの辺。
7月中旬で極夜が終わって日照時間が出てくるけど、気温が一番低いのはもうちょっと先の8月~9月頭だったりします。

太陽が出てきて熱をくれてるのに、なんで寒くなるか。
これを理解するには「もらう熱」だけでなくて「失う熱」を意識することが重要。

何もない宇宙空間に浮かぶ地球は、寒い部屋に置かれたお湯の入ったヤカンみたいな存在。
ほっとけばどんどん冷めてくし、ごくごく弱い火をかけてもまだ冷めるほうが強い。
ある程度強い火力にして冷めるペースを打ち消すだけの熱を与えてやっとお湯は温まるって話です。

もっと簡単に表現すると、ちょっとくらいおこずかい貰ってもお金使ってるうちは財布の中身は減る、ってとこ。
日本だって一番暑いのは夏至よりあと、寒いのは冬至よりあと、ってのも同じ話です。

この季節と気温の関係をもう少しちゃんと理解するには、地球の熱の収支の仕組みを知る必要あり。
気象学と名の付く本にはまず出てくる、地球全体の熱の収支を示したのがこちらの図。地球のエネルギー収支@wikipediaに加筆
大元はKeihl and Trenberth (1997),Earth’s Annual Global Mean Energy Budgetより

太陽の光は全部地面に届くわけじゃなく、雲で反射されたり、直接大気に吸収されたり。
届いてもそのまま反射されて宇宙に返ってったり。

そして地面からも目には見えない赤外線として熱を空に出し続けてる。
この赤外線は一度雲や大気に吸収されて、また地面に戻ったり、反対の宇宙に出てったり。

あとは対流や水蒸気(潜熱)で熱が運ばれたり。

そんなあちこちのやり取りがあって地球全体としてみれば収支が取れてるって図になります。

昭和基地では「空から降ってくるエネルギー(上図中、赤枠)」と「空に出て行くエネルギー(同青枠)」の観測ってのもやってて、2017年のデータがこちら。
赤線が空から降ってくる下向きのエネルギー量。
青線が空に出ていく上向きのエネルギー量。
そして緑線がその差、結局どれだけエネルギーが増える/減るを示してます。南極気象資料 日射放射観測データ@気象庁より

赤線の下向きエネルギーを見ると、確かに極夜が終わって7月から8月にかけて少し増えてる。
でも、青線の上向きエネルギー方が多い状況は変わらず、収支はまだまだマイナス。
真夏の12~1月以外はずっとエネルギー収支がマイナス、つまり冷め続けてるってことになります。

なるほど、だから極夜が明けてもまだ気温が下がるのか~。
と分かってもらえたら今回伝えたかったことはほぼOK。

でも。

…あれ?
それじゃなんで9月から気温が上がるの?まだ収支がマイナスじゃん。と気になった人は鋭い!

あくまでも上のグラフは昭和基地の直上の空とのエネルギーのやり取りを示した図。
水平方向のエネルギー(熱)の移動は含まれてない。

実際にはこれに大陸から冷たい空気が流れてきたり、海から暖かい空気が流れてきたりと水平方向のエネルギーの移動が混じって気温の変化が起きてます。
冷えすぎな南極にせっせと熱を運ぶのが大気を大規模にかき混ぜる低気圧なわけ。

低気圧といえば、悪天続きの6月に比べて静かすぎる7月。

仕事的にはとってもやりやすくて助かるけど、そろそろ久しぶりにブリザードを味わいたい…なんて思ってないよ。
ホントだよ!

昭和基地ってこんなとこ(気候編その1)

ついに5月末から始まった極地の夜、極夜。
太陽が約1ヶ月半の長期休暇に入り、次に会えるのは7月中旬になってから。

“極夜”とは言っても一日中真っ暗なわけじゃなく、今だと真昼でこのくらいの明るさ。

真昼には太陽が地平線ギリギリの惜しいとこまで来てるんで、ほぼ夜明け直前。
もっとも天気が悪い日が多すぎて実際にはもっと暗い日が多いんだけど。

せっかく極夜が始まったんで(?)今回は昭和基地の気候についてザっとまとめてみました。
ホントは出発前か到着直後に書こうとしてたネタが今さらの登場です…。

南極と言えば寒い!ってことでまずは気温。
こちら、昭和基地の最高&最低気温と日照時間のグラフ。
南半球にある南極は北半球の日本と季節が逆。
日本がいま夏に向かってどんどん暑くなってるのと反対で、昭和基地は冬に向けてどんどん寒くなってる最中。

夏の昭和基地はあったかい日で日中の気温がちょっとプラスになるくらい。
だいたい札幌の冬と同じような感覚です。

そして冬に向かってグイグイと気温が下がり、真冬の8月には“平均的な最低気温”で-25℃近く。
寒い日は-30~40℃くらいになります。

そんな厳冬期のちょっと前、冬至(日本じゃ夏至)まわりで太陽が全くでないのがちょうど今、極夜の時期。
地球が南半球を太陽と反対側に向けてるせいで南端にはどうやっても太陽が当たらない状態です。
暦wiki@国立天文台より引用

実際に“ひまわり”から6月後半の地球全体を眺めてみると、ごく細い領域だけど北極付近は1日中明るく、南極付近は1日中暗いままなのが見えたりします。
ひまわりリアルタイムWEBから2018年6月23日の地球の様子。

それじゃ昭和基地で1年を通していつどんな明るさかってのを図にしたのがこちら。
横軸が月、縦軸が時。何月の何時でこんな明るさ、と見てください。
いま、極夜の時期は昼前後の数時間が薄明るいだけで1日のほとんどが夜。
屋外に出るにはヘッドライトが手放せない生活です。

逆に夏の白夜では太陽が出っぱなし。
昭和基地に到着した12月末は夜9時でもこんな空でした。
あぁ、青空が懐かしい…。

でも、極夜は夜が長くても星空とオーロラに感動する日々!
…なんて夢見てたけど、週に一度も晴れる日がないくらいの悪天&曇天っぷり。
前回のブログネタ5/26の次に星空を満喫できる日はいつになるのやら。

そんなモヤモヤを吹き飛ばすべく、ただいませっせと極夜の祭典“ミッドウィンターフェスティバル”の準備中。
南極のいろんな基地でやってる、極夜を楽しもうぜヒャッハー!な気分になるためのお祭り騒ぎ。
仕事にたっぷりイベントを重ねるもんだから自分の首を絞めてるような気がしてならないけど、せっかくなんで色々楽しんどきます!

最後に。
今回作ったグラフの元データは気象庁の過去の気象データ検索で見たり、過去の地点気象データ・ダウンロードでごそっと取ってくることが可能。
ちゃんと南極も選べるんで気が向いたら覗いてやってください。※全天日射量の図は複数年の時別データからmax値を取るってな加工をしてます

ブリザードが去ったあと

絶賛ブリザード月間突入中の昭和基地。
せめてブリとブリの間にはちょっとくらい好天を挟んでくれい!と文句を言いたくなる天気が続いてます。

こちら、先週(5/12-19)の気温・風速・気圧のグラフ。
ご丁寧にブリが3つもいらっしゃった。
ブリザード(猛吹雪)が「低気圧の接近(気圧の低下)」「海洋性の空気を持ち込んで気温上昇」のセットだってことが良くわかるかと。

ブリみたいな視界の悪い吹雪の間は“外出注意令”が発令され、外出はできるだけしないのが基本方針。
ただ、気象屋は天気が悪い時こそ働き時ってのは国内でも南極でも一緒。
食事や人員交代、ゾンデ放球などの必要最低限の移動をしつつ、いつもより人を増やして働いてます。

そんなわけでブリ中もちょいちょい移動するけど、ブリの間にどんどん景色が変わってくのを見るのもなかなか面白い。

13日、ブリ1が終わった夜遅く。
さっそく除雪に動いてくれた機械隊員の手により綺麗に除雪された気象棟の脇。
これで歩きやすくなった、ありがとー!

でもホッとする間もなく、14日夜から次のブリ2がスタート。
15日の昼にはもうこんもりとドリフト(吹き溜まり)が…

ブリ2とブリ3の間も15m/s前後の強風と吹雪でとても外で作業をする気にならない状況。
そうしてるうちに息の長いブリ3が襲来。
終わるころにはこんな立派な迫力あるドリフトに育ってました…

せっかく張り直した移動時の命綱、ライフロープもあちこちドリフトに埋没。
順番に15日、17日、18日の様子です。

こんなブリの後には再び重機を操る機械隊員が大活躍。
何といっても除雪で強いのはコイツ、PistenBully
ドイツの科学力は世界一ィイイイイ!!と叫ばずにはいられないカッコよさ。
通称ピステン、スキー場でお馴染みの頼れるヤツです。

他にも色々重機が動き回り、除雪中はさながら白い土木工事。

重機が入れない場所や細かいところ、そして各種観測機器のメンテはもちろん人の手で。

清浄大気観測小屋、通称ゾル小屋の風下にも立派なドリフト。
人と比べるとその大きさが分かるかと。

逆に、建物の風上には風が避けることで深い溝・ウィンドスクープが形成。
うっかり落ちると結構痛い目にあうレベルの段差ができるから歩くときには要注意です。

他には面白いものとして、こんな雪面も。

ポコポコと飛び出した雪の列。
実はこれ、人の足跡。

降り積もった雪の上を人が歩くと、ギュッと踏み固められて雪が硬くなる。
その後に強風が吹くと表面の雪が吹き飛ばされけど、硬くなった踏み後の雪だけはそのまま残ってこんなことになるって仕組みです。

悪天が続くとちょっと気分もどんよりしてくるけど、せっせと周りを見渡して面白りものを探す日々。

そして20日にはひっさびさの太陽を浴びてリフレッシュ。

ハッキリ分かるくらい日ごとに昼が短くなり、太陽のありがたさが心底身に沁みる。
あと1週間くらいでついに太陽が地平線から出てこなくなる極夜の始まり。

当たり前のことが、当たり前じゃなくなる。

そんな南極の真骨頂ともいえる極夜を過ごすとどんな気分になるのか。
なんとなくソワソワした期待と不安の中で越冬隊に冬が来ます。