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山の天気の不思議~寒冷前線通過で気温上昇?

やっぱり春先の悪天は対応が難しい!
そして山の天気は奥深いです…。
「寒冷前線が通過したら気温が上がる」なんて予報士試験で書いたら即刻アウトな現象が実際には起きちゃうんだから。

天気が悪いときは山に行かないが基本的なスタイルだけど、めずらしく悪天が予想されてる中、山(の麓)で過ごす機会があったんでその記録です。

2月28日から3月1日にかけて、乗鞍岳の麓、一の瀬園地エリア(標高1600mくらい)で過ごしてきました。地理院地図より

28日から1日の天気図を並べるとこんな感じ。

日本海で発達する低気圧に南からグイグイと流れ込む暖気。
事前の予想資料では、暖気のピークとなる1日朝には長野エリアでも850hPaで+3℃に届きそうな勢い。

夜から早朝にかけて少しまとまった雪、朝には雨に変わってビチャビチャになるんじゃないかなぁ。そして寒冷前線が通過したあとは軽い寒気移流で気温はさがるけど天気はある程度落ち着くんじゃないか。
そんな予想をしながらのツェルト泊。

夜になって寝付く頃には雪が降り初め、ずーっと降ってるなぁと感じつつウトウト。
計算外だったのが降り積もる雪のせいでツェルトがどんどん狭くなるw
しかも隣のツェルトとの間でまったく余裕スペースのない張り方したもんだから、ツェルトとツェルトの間に雪が溜まって押しのけることもできない…。

そして早朝5時過ぎに起床。
まだ降り続ける雪の中、遠くから響く雷鳴。
あぁ、寒冷前線のお出ましか…。

次第に近づき太くなる雷鳴。
フラッシュのような雷光にも照らされ、バチバチと1cm弱の雪あられも登場(雹と呼ぶには密度の低い玉)。
あとから振り返ればポールやシャベルの先から〝セントエルモの火〟見れたかも、なんて呑気なことも思ったけど、当時は炊事テントに逃げ込んでさっさと過ぎ去ってくれるのを願うばかりでした。

30分くらいで雷祭りは終わり、天気も小康状態に。
それじゃと撤収作業をしてると雪が雨に変化。
ありゃりゃ、寒冷前線が通過して気温下がるはずなのに雨??なんて困惑しながらの撤収作業。

その後、昼前にはしっかり気温が下がって再び雪に。
そうそう、これが寒気移流の天気だよね。
さっきのはなんだったんだ?

そんな変化の2日間でした。

まとまった雪が降るとわかってたのに〝降ったらどうなるか〟を想像&設営に反映できなかったのが今回最大の反省。

天気が悪くなると知ってるだけでは意味がない。
その状況下で何が起きると想定され、その対策として何ができるか。
そこまで想像力を働かせてこそ、山の悪天対応なんだなぁとしみじみ実感しました。

あと、現地ではうまく理解できなかった「寒冷前線通過で雪から雨に」の謎は山を降りてから再検証。
ちょうど乗鞍エリアの近くにアメダス奈川があって、ここのデータがいいヒントになりました。
※天気図的には寒冷前線か閉塞前線か微妙な位置だけど、寒冷型閉塞だし雷鳴りまくりだし寒冷前線ってことで進めます

レーダーや天気の変化から考えて寒冷前線の通過はまちがいなく7時頃。
でも奈川では8時過ぎまで気温が低く風の弱い状態が継続。
そして、8時半頃に風が強まると共に気温が急上昇。

この風と気温が連動しての急変化、おそらく〝滞留冷気層の破壊〟によるものです。
※8時まわりの風は欠測してるけど、たぶん弱い状態続いてたはず。あと、近いとはいえ一の瀬園地より標高は500mほど低いことに注意。

教科書的な大気は高度が上がるほど気温が下がる構造。
ただし実際にはちょくちょく地面付近の気温が低く、上空の方が気温が高い〝逆転層〟が形成されます。
そして逆転層の上下では空気の性質が大きく異なり、混じりにくい状態になることがしばしば。

逆転層の成因は
地面付近が放射冷却や降水による冷却で冷えるパターン
前線や低気圧の前面で上空に暖かい空気が流れ込むパターン
など色々。

おそらく今回は両者のミックスで、低気圧に吹き込む暖気の中で地面付近(特に凹部)に降水粒子に冷やされた空気が取り残されたパターン。
そっと残された冷たい空気の中にあるうちは低温&弱風。
寒冷前線の通過に伴いこの空気が吹き飛ばされたことにより(相対的に)昇温&風速増大。
そんな変化をアメダスの気温&風速から読み取ることができます。

こんなふうに後から推測する知識は持ってても事前にそんな予測はしてないし、実際に山の中で体験するのは初めて。
つくづく山の気象条件を予測するのは難しいなぁと…。
ほんと、いい勉強&経験になりました。

ちょっとした条件の差や局地的な影響で雨と雪の境目が変わる春先の山。
穏やかな時はほんとに穏やかだけど、いざ変化する気象状況への対処という意味では厳冬期よりよっぽど難しい。
春の山はそんな危険性も含むことを忘れずにお楽しみください。

最後に。

なんでこんな天気の中で乗鞍にいたのか。
この理由は近いうちに改めて。

やる気がないけど性悪な寒冷前線もある

昨日、11月4日に本州を通過した寒冷前線。連休中の寒冷前線通過、しかも通過後の寒気は少し強めの予想だったんで気にかけていたんですが…。
重要な視点が抜けてたので反省をこめてご紹介。

寒冷前線の通過というと「強い北寄りの風に変わって気温も急降下。強い雨や雷を伴う。」ってのをイメージする人が多いんじゃないでしょうか。
もう少し詳しく書くなら、上層の気圧の谷(トラフ)の前面(東側)で低気圧が発達。低気圧&トラフが東に抜けたら後面からドッと押し寄せる下層寒気。この下層寒気移流の先端が教科書的な寒冷前線です。

そんなイメージを抱きつつ4日朝の天気図、アメダスの風、衛星可視画像を見てみると…

寒冷前線が通過した後というのに関東はそよそよとした北風。確かに本州の南に帯状の雲(青線)はあるけど、なんか日本海にもっと元気そうな雲の塊(赤丸)が。
ハッキリ言って、いつのまに前線通過したの?ってくらいの影響しかありませんでした。

このやる気の感じられない寒冷前線の理由は、高層天気図と衛星水蒸気画像から見えてきます。
4日朝(9時)の500hPa高層天気図と水蒸気画像がコチラ。

寒冷前線は本州を通過したけど、上層トラフ(赤線)はまだ西に残ったまんま。例えるなら、腰(トラフ)が引けたまま足先(寒冷前線)だけちょこんと出したような状態。これじゃ強いボール(下層寒気移流)は期待できません。

昼から夕方にかけてトラフが東進すると共に本格的に下層寒気移流が強まり、天気図で表現されてる寒冷前線に遅れて〝寒冷前線らしい天気の変化〟が起きた、そんな1日でした。

事前に資料を見てた時は、昼くらいから下層寒気移流が強まりそう。きっとこのタイミングで寒冷前線を表現するだろう、の認識。
でも実際には、やや不明瞭な寒冷前線が朝に通過したあと、遅れて昼過ぎから下層寒気移流が本格化するって現象。

注意を呼びかけるべきは寒冷前線の通過そのものじゃなく、「寒冷前線の通過時は大したことないけど、少し遅れて本格的に天気悪化するから油断しないでね!」といったことでした。

素直な寒冷前線よりよっぽど性質が悪かった今回の現象。
予想天気図を見て、ずいぶん寒冷前線の通過早いなぁと感じた時点でちゃんと確認してれば気づいた話。
物事を単純化させすぎずに丁寧に見る&考えなきゃな、とつくづく反省です。

※一応補足しとくと、ぼくは確認が甘くなってたけど、予報の担当者はしっかり現象を理解した上で天気予報や注意報を判断してるはずなのでご安心を。

20161009-10鳳凰三山

予想通り前半はイマイチ&後半はそこそこだった3連休、後半の10月9日~10日で鳳凰三山に行ってきました。
初日は青木鉱泉からドンドコ沢で滝見→鳳凰小屋でテント設営→身軽になって地蔵岳
2日目は直接観音岳に上がって御来光→中道から下山、こんな行程。houou-map

南アルプスに登るたびにうんざりする森林限界の高さだけど、今回みたいに天気が悪いときはプラスに作用。
9日は寒冷前線の通過で午前中は雨&前線通過後は北風がちょっと強めに吹く予想だけど、午前中は樹林帯を登ってる最中だから多少軽減される環境。
沢沿いルートってことで土砂降りになるとちょっとした沢の増水が怖いけど、寒冷前線の雨は長続きしないのでどんなに悪くても多少足止め&雨宿りすれば済む話。
そして鳳凰小屋も稜線より東側に下った樹林帯の中だから風の心配もそんなにいらない。

このあたりを考えての鳳凰三山でした。まだ行ったことなかったし。

計画を練る上で肝になるのは雨の降るタイミング。
今回の雨の原因となった寒冷前線はメリハリがしっかりした現象で、予想しやすい(=予報の精度が高い)現象です。
こちら、上から順に10月9日の朝9時を2日前に予想した天気図と、1日前に予想した天気図と、当日の実況天気図。そして同時刻の衛星画像。
fsas48_20161009-09fsas24_20161009-09spas_20161009-09vis_20161009-0900

北海道の東にある低気圧&そこからのびる寒冷前線の位置は予想でも実況でもほとんど違いがなく、前線通過(=雨)の予想がぴったりだったことがわかります。
(※台湾の近くにある台風19号は強さの予報が大ハズレ。台風の強度予想は進路以上に難しいです・・・)

ただし、ここでいう「ぴったり」というのは天気図で見るような大きな天気の流れについてであって、雨の降る時間が10分や1時間の精度でピッタリ合ったというわけではないことにはご注意を。
今回の雨も思ったよりは降りだし&降り終わりが早かったかなといった感触で、1~数時間程度の時間的なズレはあって当たり前な誤差の範囲内です。
このため、あちこちで目にする“ピンポイント予報”という名前で垂れ流されてるコンピューターの計算結果だけを鵜呑みにした計画は絶対にオススメできません。

天気予報における天気図は、登山における地図と同じ。
あらかじめ広い目でおおまかな状況を把握しておかないと、少しでも道をそれた(予報が外れた)時にまったく応用が効きません。
最低限、予報とセットで実況天気図&予想天気図はチェックするのを強くオススメします。

そんなわけで、鳳凰小屋に着いた昼には雨はすっかり上がって天気は回復傾向。
後述の想定外な事態にちょっとやる気を削がれつつも地蔵岳&オベリスクへ。
登れそうだったら登りたいな~と狙ってたけど最後の岩だけはしっかりクライミングの領域。
ぼくのスキルじゃ頑張って登っても安全に降りるのは厳しかったので素直に撤収。
ちょっと残念だったけど、山で見る雲の多い空もなかなかいいもんです。houou08

そして、テントで夜を明かした翌日(10日)は予想どおりの好天。
満天の星空を仰ぎつつ出発し、雲海の中にたたずむ八ヶ岳や富士山、雲海から昇るご来光、朝日に染まる北岳、鋭くそびえる甲斐駒ケ岳、と周囲の山々を一望する贅沢な時間を過ごせました。
今回のルートだと稜線歩きが短いのがちょっと残念だったけど、天気がホントによかったのは朝だけだったからちょうどよかったのかも。
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ちなみに、この日の関東はそれなりに晴れ間もあるって予想だったけど実際にはどんより曇り空な1日。
9日に本州を通過した寒冷前線が南の海上で停滞前線として足を止める、という予想はあってたけど、思ってた以上に前線の雲域が北に広がる結果に。
8・9日がダメなら10日に、と順延になってた運動会も多かったようなので間違っても雨にならなかったことが幸いでした・・・。spas_20161010-12vis_20161010-1200

最後に、今回もっともハズれた予想といえば、鳳凰小屋テン場のシステム。
3連休とはいえ、前半が雨でつぶれての連休だったからそこまで酷い混雑にはならないだろうと踏んでました。
しかし!
鳳凰小屋のテン場は限られたスペースに最大限人が入れるよう、小屋番の方の指示に従い着いた人からギュウギュウに詰め込んでテントを張っていくシステム。
その結果どうなったかというと、ぼくを含め早めについた人はテン場の奥で前室も満足に張れないような寿司詰めっぷり。
そして夕方近くなってからきた人は手前の広々スペースを満喫という「なんだかなー」な状態に。
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連休の人気エリアとはいえ、もうちょっと不公平感を軽減する工夫が欲しかったというのが素直な感想。
奥から順番に張らせるにしても、ギュウギュウ状態にするのは手前のスペースが埋まってからでもよかったんじゃないかなと。
今回は友人と一緒だったからよかったけど、ソロでツェルト泊なんてしたらあまりのスペースの無さに地獄を見た可能性大でした。
鳳凰小屋でのテン泊を計画している人はご注意を。