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ブリザードが去ったあと

絶賛ブリザード月間突入中の昭和基地。
せめてブリとブリの間にはちょっとくらい好天を挟んでくれい!と文句を言いたくなる天気が続いてます。

こちら、先週(5/12-19)の気温・風速・気圧のグラフ。
ご丁寧にブリが3つもいらっしゃった。
ブリザード(猛吹雪)が「低気圧の接近(気圧の低下)」「海洋性の空気を持ち込んで気温上昇」のセットだってことが良くわかるかと。

ブリみたいな視界の悪い吹雪の間は“外出注意令”が発令され、外出はできるだけしないのが基本方針。
ただ、気象屋は天気が悪い時こそ働き時ってのは国内でも南極でも一緒。
食事や人員交代、ゾンデ放球などの必要最低限の移動をしつつ、いつもより人を増やして働いてます。

そんなわけでブリ中もちょいちょい移動するけど、ブリの間にどんどん景色が変わってくのを見るのもなかなか面白い。

13日、ブリ1が終わった夜遅く。
さっそく除雪に動いてくれた機械隊員の手により綺麗に除雪された気象棟の脇。
これで歩きやすくなった、ありがとー!

でもホッとする間もなく、14日夜から次のブリ2がスタート。
15日の昼にはもうこんもりとドリフト(吹き溜まり)が…

ブリ2とブリ3の間も15m/s前後の強風と吹雪でとても外で作業をする気にならない状況。
そうしてるうちに息の長いブリ3が襲来。
終わるころにはこんな立派な迫力あるドリフトに育ってました…

せっかく張り直した移動時の命綱、ライフロープもあちこちドリフトに埋没。
順番に15日、17日、18日の様子です。

こんなブリの後には再び重機を操る機械隊員が大活躍。
何といっても除雪で強いのはコイツ、PistenBully
ドイツの科学力は世界一ィイイイイ!!と叫ばずにはいられないカッコよさ。
通称ピステン、スキー場でお馴染みの頼れるヤツです。

他にも色々重機が動き回り、除雪中はさながら白い土木工事。

重機が入れない場所や細かいところ、そして各種観測機器のメンテはもちろん人の手で。

清浄大気観測小屋、通称ゾル小屋の風下にも立派なドリフト。
人と比べるとその大きさが分かるかと。

逆に、建物の風上には風が避けることで深い溝・ウィンドスクープが形成。
うっかり落ちると結構痛い目にあうレベルの段差ができるから歩くときには要注意です。

他には面白いものとして、こんな雪面も。

ポコポコと飛び出した雪の列。
実はこれ、人の足跡。

降り積もった雪の上を人が歩くと、ギュッと踏み固められて雪が硬くなる。
その後に強風が吹くと表面の雪が吹き飛ばされけど、硬くなった踏み後の雪だけはそのまま残ってこんなことになるって仕組みです。

悪天が続くとちょっと気分もどんよりしてくるけど、せっせと周りを見渡して面白りものを探す日々。

そして20日にはひっさびさの太陽を浴びてリフレッシュ。

ハッキリ分かるくらい日ごとに昼が短くなり、太陽のありがたさが心底身に沁みる。
あと1週間くらいでついに太陽が地平線から出てこなくなる極夜の始まり。

当たり前のことが、当たり前じゃなくなる。

そんな南極の真骨頂ともいえる極夜を過ごすとどんな気分になるのか。
なんとなくソワソワした期待と不安の中で越冬隊に冬が来ます。

雪にできる虹:雪面ハロ(仮名)

とある朝。
景色を眺めてて気が付いた。
あれ?海氷上の雪面が虹色に光ってないか?
しかも22°ハロ(暈)に繋がってるように見える・・・。

どう見ても気のせいじゃない。
空のハロが消えても、雪面の虹色はくっきりはっきり。

昼間になって、青空の下でも雪面の虹色は鮮やかなまま。
写真じゃちょっと分かりにくいけど。ちなみにこの写真は13時。
最近はほんっとに太陽高度が低いです。

よく周りを観察しながら歩いてみると、近くの雪面でも発見。
これまた綺麗に分光して虹色に見えてる。

どうやらこれ、積雪表面の雪結晶によってできたハロってことみたい。

普段空に見えるハロは、大気中に漂う細かな氷晶の六角柱構造によるプリズム効果で見える大気光学現象。
氷晶よりずっと粒が大きい降雪結晶も、六角柱構造を持っていれば光学的な特性は同じだとか。
参考文献:谷川朋範,2007:積雪の方向性反射率特性,69,p185-200を流し読み

ってことは、うまいこと積雪表面に六角柱構造の降雪結晶が積もってれば、空のハロと同じことが積雪表面にも起きる。…ってことでいいのかなぁ。

あいにく初めて見る&今まで知らなかった現象なんで、これを何て呼んでいいのかも分からない。
ハロはあくまで“大気”光学現象なんで、ハロではない。
とりあえず、ハロと同じメカニズムで雪面にできてるってことで“雪面ハロ(仮)”と呼ぶことにします(^^;

名前も分からないから適当なキーワードでググってたら同じよう46°の雪面ハロ(仮)を撮った人を発見。
雪面の 46°ハロ@WHITE ICE

でも、やっぱりちゃんとした現象名が分からないw

今回不思議に思ったんで軽く積雪表面も観察してたけど、仕事の時間が迫ってたこともあってごく簡単にしかできず。
分かったのは、晴れた穏やかな朝で軽く表面霜ができてたこと。
表面の積雪は角柱・砲弾っぽい結晶が混じったしまり雪だった、ってことくらい。
降雪結晶そのものなのか、表面霜ができたことで起きたのかが分からない・・・
あー、もやもやするっ!!方眼は1mm。

これからちゃんと注意して、また見つけたらしっかり観察してみようと思います。
積雪表面の写真の撮り方も調べとかなきゃな。

南極で目にする景色・現象を色々知りたい・理解したいけど、自分の知識がついていかない現状がなんとも歯痒い。
雪氷・地学系の基礎をもっとちゃんと学んどけばよかったなぁ。

“南極の氷”の楽しみ方

砕氷艦しらせ、11月の出発を前に毎年恒例の全国巡航&一般公開がスタート!

訓練として、10月頭にかけて横須賀→横浜→苫小牧→新潟→博多→高松→横須賀と日本をぐるっと一周。

各地の港に寄港したときは一般公開もされるのが定番。しらせを直接見れる&乗れる貴重な機会。文句なしに他に同じような船はないんで気になる人はぜひぜひ。
細かい日程は砕氷艦「しらせ」平成30年度総合訓練の実施について@海上自衛隊やGoogle先生に聞いてみてください。

こういった南極関連イベントでまず間違いなく展示されるのが“南極の氷”。
南極からはるばる持って帰ってきたってだけでもまずまずありがたい気がするけど、今回は南極の氷をどっぷり楽しむ6つのポイントをお伝えしようかと。

① 歴史を楽しむ

南極から持って帰ってきた氷の一番大事なポイント。それは“氷山の欠片”ってこと。

巨大な氷の塊(氷床)に覆われてる南極大陸。
寒い南極では降った雪は融けることなくただ降り積もるのみ。厚く積もった雪は自分の重みでゆっくりと圧縮され、しだいに氷に変わってきます。
その氷も自分の重さでゆっくりと海に向かって流れ下り(特に流れが速いとこが氷河)、海に向かってせり出し(棚氷)、バキッと割れて流れ出す(氷山)。棚氷@Wikipediaより
※日本語のいい図が見つからなかった…

南極からお土産に持って帰る氷はこうした長い行程の最後、氷山の欠片を切り出してきたもの。

最初の“降った雪”からどのくらい時間が経ってるかというと…ザッと数万年!

数万年前というと、最後の氷河期(氷期)の真っ只中。
はるか昔に降り積もり、氷河期を生き抜いた氷の末裔が目の前にあると思えばありがたさ倍増間違いなし。
途方もない時間の長さに想いを馳せてもらえればと。

② 見た目を楽しむ

南極の氷、塊だと結構白っぽい。
でも、小さな欠片を手にとって眺めるとこんな感じ。

氷そのものは透明だけど中に小さな気泡がいっぱい。このせいで塊として白っぽく見えてます。
この細かな気泡が“南極の氷”であることの何よりの証拠。

降り積もった雪からできた南極の氷。
雪はたっぷりと空気を含んでて、ムギュッと圧縮されて氷になるときに空気も一緒に圧縮される。
その空気が丸まって閉じこめられたのがこの気泡。
中には氷河期のウン万年前の空気が詰まったまま。
南極の氷は、昔の空気のタイムカプセルってことです。

降り積もる雪が氷になるから、深く掘れば深いほど古い氷が見つかる。この氷から色んなことがわかるんだけど、もうちょっと勉強したら改めて詳しく取り上げようかなと。

さて、本題に戻って南極の氷の楽しみ方の続き。

③ 感触を楽しむ

じっくり観察したとこで次はそっと触れてみる。
軽く手のひらで触れて、冷たいけどちょっと我慢。
すると、小さくパチッと、プチっと、小さく何かが弾ける感触が伝わるはず。

これは氷が融けて、気泡にギュッと詰まった昔の空気が弾け出る時の衝撃。

いま、その手には南極のウン万年前の空気がくっついた。

④ 音を楽しむ

音を楽しむのに便利な道具が使い捨てのプラコップ。

コップに南極の氷を入れて、ちょいと水を入れて氷が融けやすくする。
それからコップに耳を近づけると… パチパチっ、シュワシュワっ、そんな音が聞こえるはず。
太古の氷から太古の空気が飛び出すハーモニーをお楽しみあれ。

※塊の氷しか展示してないとこじゃ集中して耳を澄ませるしかないです。

⑤ 香りを楽しむ

④で音を楽しんだら、そのままこちらへ。
コップの中には太古の氷から弾けだした空気がいっぱい。
つまり、氷の中は太古の地球の大気そのもの。
コップの中の空気を吸う、それは氷河期の南極で息をしてるのと同じ。

で、どんな香りかって?

それは気分の問題かな…

⑥ 味を楽しむ

そして、最後の楽しみ方。
見て、触って、聞いて、嗅いだらあとは味が気になるところ。

ぜひ味わってもらいたいとこだけど…
残念ながらイベントでは食べるのは禁止!

雪を食べるようなもんで変な物は入ってないと思うけど、衛生管理も消毒してない物だからやめといてねってこと。

どーしても気になる人は、どこか身の回りで最近南極観測隊に参加した人を探すか、将来の観測隊を目指して頑張りましょう!

南極行くと、氷を掘るついでに流しそうめんしたり、カキ氷にしたり。詳しくは極地研究所のアイスオペレーション@昭和基地NOW!!をどうぞ。
“よりもい”でもキマリ達が参加&食べてたやつですな。

昭和基地NOW!!@極地研究所では、いま南極で観測隊がどんなことやってるかを随時更新中。
南極に興味のある人は時々覗いてみてくださいな。

2020年の春には60次隊がせっせと掘った南極の氷を日本にお届けします♪

めざせ!南極気象予報士(決定版)

先週6月22日に文部科学省から出たこちらの報道発表。
第60次南極地域観測隊員等の決定について@文部科学省

第152回南極地域観測統合推進本部総会で第60次南極地域観測隊員の大部分が決定。
その中にはぼくの名前も。

ってなわけで。

今年の11月から、約1年半。
第60次南極地域観測隊(越冬)の一人として南極に行ってきます!

4月に所属部署が変わったことで事実上の準備は始まってたけど、ついにこうして〝決定〟まで来たのは大きなひと区切り。
南極地域観測隊の候補者から正式隊員となる上での最大の障壁〝健康判定〟を無事にクリアしたってことになります。

今の立場はこんな段階↓第60次南極地域観測隊の行動予定@国立極地研究所(以下、極地研)より

わざわざ赤字で「身体検査の進捗により~」と書いてるあたり、いかに重要ポイントかが伝わるかと。
どんな検査をするかは健康判定の検査項目@極地研をどうぞ。

色々と人生初の検査があって面白くもあったけど、もちろん結果が出るまではドキドキ。
どうやら検査の時点で指摘された虫歯の対処でせっせと歯医者に通ったくらいで無事に終わったみたい。

夏期総合訓練(通称:なつくん)もすでに終わり、各隊員は自分の任務に必要な訓練、物資の調達&梱包と慌ただしい準備が本格化。
しらせが日本を出発する11月にかけて怒涛の数ヶ月になる、らしいです。

夏訓では南極地域観測隊が成り立つための仕事や任務について色々と教わったけど、文明圏から離れた場所で昭和基地というひとつの街を維持するだけでもホントに大変なんだなぁと。

南極がどんなとこで、どんなことをしてるのか。

何よりぼくの志望動機の柱である、どんな景色が広がり、どんな自然現象が起きるのか。

その辺をキャッチーでウィットでセンセーショナルに伝えてきます!

…とはいっても、南極に向けて出発するまでまだ5ヶ月くらいあるんで、それまでは日常の気象ネタと南極ネタが入り混じるごちゃごちゃした内容になりそうな予感。
ブレブレな軸のことは気にしないでください(^^;)