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関東大雪のしくみ ~2018/1/22東京23cm~

1月22日の関東大雪からあっという間に10日近く。そろそろ書かなきゃ書きそびれそうなのでぼちぼちと…。
今回はちょいと長いんで時間のある時にゆっくりどうぞ。

関東で大雪になった理由、その背景に言及する記事もちらほら出ててコチラはなかなかいい内容。

関東「大雪の方程式」が成立 寒気、海流など条件合致@NIKKEI STYLE

『「大雪」=「ラニーニャ」+「北極振動(極渦)」+「黒潮大蛇行」+α 』
と解説してるんだけど、実際に天気予報やってる立場からすると「+α」のとこがとっても重要!

この記事に書いてるのはかなり広範囲&長期的な視野での話で、大雪イベントが起きる確率が上がる背景といった雰囲気。

じゃ、実際に大雪に至る「+α」は何なのかってのが今回のテーマです。

重要なのは「気温が低いまま、まとまった降水(※)が降る」をどう維持するかってこと。
そんなの当たり前とか言わないで…

※ここでの降水は雨も雪も含んだ降ってくる水分すべての意味

寒気が流れ込む冬型気圧配置じゃ山越えでカラカラになる関東で、この条件を満たすってのはなかなか大変なんです。

まず、〝低い気温〟を満たすには前日までの仕込みが重要。
こちら、大雪前日(21日)の天気図。
オホーツク海に低気圧が居座って冬型気圧配置が持続。
次々と大陸から寒気が流れ込み、日本付近は冷たい空気に覆われた状態。
そこに間をおかずに西から低気圧が接近、この冷たい空気をさらに南に引き込むってのが関東で雪が降る気温を実現する典型パターンです。

ところが…

低気圧は北側の寒気×南側の暖気って構造をしてるわけで、近すぎると暖気が入って雪にならない。
かといって遠すぎるとそもそも降らない。
そんなジレンマが南岸低気圧には常につきまとう。
見事ちょうどいいコースを通ったときだけ関東で雪が降ることになります。

ただし、これはあくまでも〝雪が降る〟だけの条件。
今回みたいに大雪となると、さらにもう少し追加条件が必要。

気温が低いといっても0℃前後が精一杯の関東で大雪(それなりに積もる)には〝しっかり降る〟ことが必須条件。

かといって低気圧本体がくると気温が上がっちゃう。
でも降ってほしい…。

そんなワガママを満たした大雪の時によく見られるのが、低気圧本体から少し北側に離れたとこに形成される〝潜在的な前線〟。
傾圧帯なんて呼ばれ方もします。

こちら22日9時の天気図と衛星画像@ひまわりリアルタイムWEB(NICT)
まだ低気圧は西日本。でも関東の南海上には低気圧本体と離れた雲の固まりがあって、午前中から降水が始まってました。

この雲の塊は夜にかけてずっとこの辺に停滞。
低気圧本体は八丈島の少し南側と比較的離れたコースだったけど、この潜在的な前線の降水域がしっかり北側に広がってまとまった降水に。
18時の天気図を見ると、この傾圧帯は低気圧本体から北東側に伸びる気圧の谷として描かれてたりもします。

紫線が傾圧帯。矢印は下層風のイメージ

さらにこの潜在的な前線、午前中から降水粒子の蒸発によって関東の空気をさらに冷やすって縁の下の仕事もしてたりします。

その様子はつくば(舘野)の高層観測からチェック。
22日朝と夜のエマグラムを比べると、朝はまだ下層ら乾燥&気温はプラス側。
それが夜になると気温が露点側に近づいてマイナス側になってます。sunnyspotさんから引用&加工
※エマグラムの詳しい見方は長くなるのでまた改めて

こうして準備万端で迎えた夕方から夜にかけての降水のピーク。
関東内陸はしっかり冷えた北西~北風、気温場がかなり低めまった今回は茨城~千葉の北風エリアも氷点下。直接海風が吹き込む東端の銚子周辺だけプラスの気温。
こうして銚子周辺を除いて真っ白な雪景色が仕上がったのが今回の大雪でした。衛星画像はMODIS@JAXAから

気温場が低めで、降水まとまるなら大雪っしょ!と予測シナリオを比較的固めやすかった今回の大雪イベント。
全体的にはまさに南岸低気圧による関東大雪の典型例といえる推移だった気がします。
だからといって「○センチ」の予測は簡単じゃないのが雪の難しいとこだけど…。

この辺の話は気象庁がまとめてる量的予報技術資料(予報技術研修テキスト)の『第19巻(平成25年度)第2章:実例に基づいた予報作業の例(南岸低気圧による関東地方の降雪時の気象特性)』にも載ってるんで、もう少し詳しく知りたい人は読んでみてください。

落ち着いて振り返る間もなくまた次のイベントか?なんて心配してたど、次は降水が少なくてオオゴトにはならないんじゃないかなぁ…って雰囲気。
予想が難しい南岸低気圧による関東の雪。
引き続き最新の予報&情報にご注意を。

秋の青空とエマグラム

更新をサボってるうちにすっかり秋の雰囲気。ちょっと暑い気はするけど。そして今日の午前中は秋らしく空が高く感じるステキな青空でした。

この青空を運んできてくれたのは、もちろん移動性高気圧。関東から見るとちょっと中心が北にズレてたけど、今日山に登ってた人は本当にステキな景色が見れたと思う。あぁうらやましい…。

低気圧は上昇流が卓越してるのと反対に、高気圧は下降気流が卓越。
特に勢力の強い移動性高気圧は下降気流が強く、上空の塵や水蒸気が少ない綺麗な澄んだ空気が地表付近まで下りてきてるから”いかにも秋!”な澄んだ空になるって仕組みです。

この澄んだ空を”見る”ことができる資料が、ラジオゾンデによる高層気象観測のデータを使ったエマグラム。

縦軸に高度&気圧、横軸に気温を描いて高度ごとの変化がとても分かりやすい資料で、説明は気象庁のサイト内にもあるけど・・なんと、エマグラムそのものは掲載されてないという悲しい状況だったりします。
≪ラジオゾンデによる高層気象観測@気象庁≫

そんな時にとってもありがたいのが気象会社のSunny Spot
「観測・情報」の中にエマグラムが掲載されてます。

そして今日(21日)朝の輪島のエマグラムがこちら。

縦軸が高度&気圧。横軸が温度で、赤線が気温、青線が露点温度になってます。

今日のエマグラムで注目すべきは700hPa、高度約3000mの赤矢印のとこ。
基本的に対流圏の中は高度が上がるにつれて気温は下がるので、エマグラムの気温線(赤線)は左斜め上にのびてるのが普通の姿。
でも700hPaのとこでは高度が上がると気温も上がる層があって、これが“逆転層”と呼ばれるところ。この逆転層を境にここより上空は露点温度(青線)がぐっと低くなり、非常に乾燥してることが分かります。

この700hPaにある逆転層は“沈降性”の逆転層で、高気圧の下降気流によって乾燥断熱昇温した上空の空気と、下層の空気の境目。
登山者目線でいくと、この境目より上が景色がスッキリクッキリな山の空気。この境目より下がモヤっとした下界の空気ってとこです。

しっかりした移動性高気圧がくる春と秋に起きやすいこの状態。
街中で今日は空綺麗だな~と見上げたり、山で今日は遠くまで見えて凄いな~と思った時、気が向いたら天気図と衛星画像、そしてエマグラムも眺めてみてください。

前に書いた≪春の高気圧その2≫の時もちょうどそんな雰囲気の時でした。エマグラム確認してなかったけど…。